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現代ダンジョン黎明期  作者: つくしー
第一部 どこにでもいる高校生
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第25話 遺跡攻略

 

 目的地は遠目で見た通り建物だった。


 ただし、まともな形を残しているとは言い難い。恐らく石を積み上げて造られた壁はところどころ崩れ、割れ目から太い根が入り込んでいる。苔と蔦に覆われた外壁は緑に染まり、注意して見なければ岩肌と見分けがつかないほど森に溶け込んでいた。


 屋根の大半は失われ、残った部分にも枝葉が降り積もっている。倒れた石柱には幾重にも蔦が巻きつき、その上から新しい木が根を張っていた。


 建物が森の中に残っているというより、樹海に呑み込まれながら、かろうじて形を保っているように見える。


「……遺跡でしょうか」


 雪村さんが小さく呟いた。

 遺跡。確かにその言葉が一番しっくりくる。少なくとも自然にできたものには見えない。

 誰かが石を切り出し、運び、積み上げて造った建物なのは、もう疑いようもなさそうだった。


「遺跡とはまた。一体誰が建てたのでしょうか。まさかダンジョンには過去に人が暮らしていて、文明があったとか言わないですよね」

「……さぁな。少なくとも今もまだ使われてるようには見えない」

「それは見ればわかりますよ」


 だから遺跡というのでしょう、と朱音は言った。


「面白いですね。偶然でしょうが、探索者とはよくいったものです。これは探検のしがいがありますよ」

「落ち着けよ。確かに過去に人が作ったものなら色々謎だけど、文明なら二層のゴブリンだってある意味文明だろ。俺はむしろ三層のモンスターが作った可能性の方が高いと思う」

「む。確かに。では三層には、これだけのものを作れる知能を持ったモンスターがいるということでしょうか。それはそれで厄介なことになりそうで嫌です」


 確かにそれは俺も嫌だが、自分で言っておいて可能性は低いと思う。

 作ったモンスターが今も生きているのなら、これだけ遺跡が朽ち果てているのはおかしい。


「私はこれも、自然の一部であると考えます」

「綾?」

「そもそもですが、ダンジョン自体が不思議の塊かと。一層然り、二層然り。この遺跡も、三層という環境の一部として最初から存在していた、と考えるべきではないでしょうか」

「つまり、この遺跡もダンジョンが用意したギミックの一つってこと?」

「はい。おっしゃる通りです」


 ……一番説得力のある説が最後に出てきたな。


 ただ、一番ロマンのない説でもある。ちょっとつまらないというか、夢がない。見れば朱音もつまらなそうに小石を蹴っていた。


「考えても仕方ないし、中に入ってみるか」


 どの説だろうが中を確かめてみれば大体分かるはずだし、分からなくてもそれはそれで構わない。安全さえ確認できれば、とりあえずはそれでいい。 


 ……実は超古代文明とかだったらめっちゃ上がるんだけどな。


 正面らしき場所には、半ば瓦礫に埋もれた大きな入口があった。左右に並ぶ石壁には何かが刻まれているようだが、苔と汚れに覆われていてそれが何かは判別できない。朱音が興味津々だったが、そういったのは後でやればいい。


 俺は入口にある瓦礫を手作業で全て取り除き、三人の道を作る。

 瓦礫の向こうから、冷えた空気が流れ出してきた。

 森の湿気とは違う。長い間閉ざされていた石室特有の、埃と土の混じった匂いだろうか。


 中も同様に瓦礫が邪魔していたので、俺は逐一脇にどけて進路を作っていく。


「それにしても、ステータスの上がった体は便利ですよね。先輩なんかまるで重機じゃないですか。そのうち建設現場に高給で呼ばれたりして」

「俺が? まぁなくはないだろうな。一期生なんかは災害時の救助活動とかで呼ぶこともあるそうだし」

「小回りに動けて重機並みの働きができるとなれば、そうなるのも自然ですよ。もっとも、私が言っているのは普通の建設現場の話ですけど」

「土木探索者ってか。数が圧倒的に足りないだろ」


 というか手伝えよ。雪村さんはともかく朱音は【力】の値がわりかし高いだろ。


 ……先頭は俺と決まってるし、別にいいけどさ。

 

 そうして軽い雑談交じりに歩を進めると、やけに綺麗な区画が出てきた。

 多少のひび割れこそあるものの、歩くのに困るほど崩れてはいない。天井も形を保っており、外から差し込む光が途絶えたせいで、通路の奥は薄暗く沈んでいた。

 

「……明らか人工的なエリアに出てきましたね。石が綺麗にカットされてますし、あれは?」


 朱音が眉を寄せると、リュックから懐中電灯を取り出した。


 俺達はレベルアップと同時に暗視性能も強化されているが、さすがに昼間と同じようには見えない。念のためにと持ってきた明かりを、朱音は壁を照らすのに使った。


 壁には、何らかの絵が画かれていた。


「壁画、というやつでしょうか。初めて見ました。何を意味しているかわかります?」

「分かるわけないだろ……」

「ですよね。冗談です」


 朱音の冗談はともかく、俺も壁画をまじまじと見てみた。


 壁画の中央には、一本の巨大な樹が描かれていた。その周囲には四角い建物のようなものが並び、無数の人影が列を作っている。人影は皆、箱とも棺ともつかない細長い物を抱え樹の根元へ向かっていた。


 空には大きな円が一つ。太陽を表しているようにも、こちらを見下ろす眼のようにも見える。


「お祭りでしょうか」

「にしてはそんな楽しそうには見えないな」

「興味が尽きませんね。かなり気になります。余裕があれば持ち帰りたいくらいですよ」

「こんな馬鹿でかい壁画持ち帰る余裕あるわけないだろ」


 誰が持つんだ。俺か? 探索中ずっと俺に持てってか。

 別にいいけど、鈍器として使っても怒るなよ。


「うーん、謎は深まるばかりですね」


 朱音が壁画を睨むように見て、ため息を吐いた。


「もういいです。こういうのは専門家にやってもらうのが一番ですよ。とりあえずここをマッピングしといて、そのうち自衛隊か一期生にでも回収してもらいましょう」

「持って帰りたいのは本当だったんだな……」


 何が朱音をそこまで駆り立てるのかは分からないが、ロマンを追い求める気持ちは俺も男なのでそこそこ分かる。


「そのためには、まず俺達が生きて帰らないといけないな」


 無粋なことを言うのはやめて、とりあえず今を認識しよう。

 

 綺麗な区画に出てからは撤去しなければならないような瓦礫は一つもなく、俺達は順調に遺跡の奥へと進み続けた。画一的な道を歩いていると、まるでダンジョンの中に入っているように思える。ダンジョンの中でダンジョンとか、意味不明だろ。


 そう一人で呆れていたら、途中で分岐点が現れた。

 通路が左右へ分かれているだけでなく、その手前だけ小部屋のように広くなっている。床も平らで、荷物を下ろすにはちょうどよさそうだった。


「……少し休むか。どこから進むか決めないといけないしな」

「そうですね。ここまで歩きっぱなしですし、そろそろお昼にしたいです」


 俺達は荷物を置いて壁に寄り掛かると、一息吐いた。

 雪村さんがリュックから食糧を取り出すのを横目で眺める。


「それにしても、ここは結構良い環境ですね。雨風も凌げますし、三層の拠点にぴったりではないでしょうか」

「それを判断するにはまだ早いな。個人的には水場が近くにあってほしいし、いざという時に逃げ道を用意したい。最低でも入口が二つは欲しいな」

「ほう、なるほど。経験則というやつですか」

「経験則というやつだよ。とりあえずどの分岐路から調べるか決めようか。俺は無難に、某理論に従って右から攻めるべきだと思う」 


 そう言ってから、そういえばモンスターの有無も拠点には重要であることに思い至った。遺跡にきてから一度もモンスターと遭遇していないせいで存在を忘れていたのかもしれない。

 

「雪村さん、分岐路の先からモンスターの気配は――」


 雪村さんの全身が……壁に沈んでいた。

 いや、違う。

 両腕も脚も取り込まれ、声すら上げられないまま、透明な膜の向こうでもがいていた。


「雪村さんッ!」


 飛び跳ね、辛うじて取り込まれていなかった袖を掴む。まるで粘つく水の中から人間一人を引きずり出すような抵抗を感じるが、それらを無視して一気に引っ張り出した。

 

「ゲホ、っ」


 雪村さんの鼻や口から正体不明の液体が溢れてくる。俺はそのまま雪村さんを抱え、横に飛び退った。

 瞬間、朱音の矢が雨のように壁へ撃ち込まれる。矢が刺さった端からびちゃびちゃと謎の液体が飛び散っていく。


 そのうちの一本が、偶然にも何か重要なものに当たったらしい。カツンという硬い音と共に、壁一面を覆っていた半透明の肉がドロリと崩れ落ちた。


 ……石……魔石だと?


 俺はそこで、モンスターの正体を確信した。


「スライム!?」


 まずい。擬態するスライムとか完全に想像の外だ。


 警戒が一気に上がる。俺はともかく雪村さんも襲われるまで気付かなかった。その隠密性は普通じゃない。こちらの油断を突いただけの蜘蛛とは厄介さの桁が違う。


 ……まさか、これまでも?


 雪村さんが朱音に助け起こされているのが横目に見える。何か俺に言っているようだが耳に入ってこない。細かい音は全て自分の心臓の音にかき消されていった。


 朱音たちがゆっくり、ゆっくりと荷物を背負う。

 元来た道へと後ずさった瞬間――壁一面が大きく波打った。


「――ッ!」


 大斧を全力で壁に叩き付ける。だが返ってきた感触は明らかに石のそれではなかった。

 飛び散った液体。衝撃で飛散した隙間を埋めるように蠢く影。奥には本物と思わしき壁が見えている。

 その周囲には、こちらを覗くようにいくつもの魔石が連なっていた。


「逃げろ!」


 叫ぶと同時、俺は大斧の刃を食い込ませ、そのまま横薙ぎに壁を引き裂いた。ドロリと溶けるスライムと共にいくつもの魔石が床に転がり落ちる。


 それを引き金にしたように、壁も床も天井も一斉に波打ち、擬態を解いた大量のスライムが姿を現した。


「スライムは雑魚じゃなかったんですかっ!」

「そりゃゲームの話だろ!」


 狭いエリアで全方位から襲ってくる擬態したスライムなど、強敵以外の何物でもない。呑み込まれたが最後、さっきの雪村さんのように窒息しておしまいだ。


「いいから逃げることだけ考えろ! 無駄口を叩くなよ!」

「ああ、もう!」


 朱音が矢を放って風穴を開けると、復帰した雪村さんが的確に魔石を砕いていく。進行方向に壁のようにそびえるスライムは、俺が前に出てスキルの『正拳突き』で飛散させた。


 基本は殿を俺として、ただひたすらに出口へと走る。

 そうして遺跡の外まで逃げ切った途端、俺達は揃ってその場に倒れ込んだ。


「――は、っは、はぁ……っ」

「……っ」


 朱音は肩で大きく息を吸い、大の字になって倒れたまま。

 雪村さんはすぐに立ち上がろうとしたが、若干ふらついたのか片膝を立てて体を支えていた。俺は立って両膝に手を付いている。


 疲れていても、誰も壁に寄りかかろうとはしていない。

 俺ももちろん、そんな気は起きなかった。


「なんです、ここ。遺跡というよりスライムの巣じゃないですか」

「全くだ……こんなところ拠点にはできないな」


 いつ襲ってくるか、どこにいるかも分からない擬態スライムの巣など、全く拠点に相応しくない。そんなところで寝れば次の朝日は間違いなく拝めないだろう。寝てる間に窒息死待ったなしだ。


 だが、入口付近にはスライムが出てこなかった。綺麗な区画を通り過ぎたら急に数が減ってきたような気がする。あるいは入口を拠点にするのはありかもしれない。


 ……いやないな。擬態が怖すぎる。


 今はいなくても俺達がいれば来るかもしれない。いつの間にか忍び寄ってくるスライムに怯えるくらいなら、俺は素直に野宿を選ぶ。


「……ですが、先ほどの戦闘で私のレベルが一つ上がりました。拠点には向かなくとも、レベル上げには向くのではないでしょうか」

「雪村さん……」


 あの、さっき窒息させられそうになってませんでしたか。


 ……強いなおい。


「私もレベルが上がりましたよ。それはともかく、私も遺跡は調べたいです。攻略だけはしませんか?」

「攻略、か」

「今のところはですが、手足の痺れや毒のような症状は起きていません。窒息させてくるだけなら、正体さえ暴いてしまえばそう危険度は高くないかと」


 実際にスライムに呑み込まれた雪村さんが言うのなら、そうかもしれない。というか毒スライム、いやポイズンスライムだったら即座に拒否だ。


 レベルが上がってから一度も体調を崩さないほどには頑丈になっているが、モンスターが殺しにくるような毒を防げるとはとても思えない。


「……確かに正体さえ暴けば倒せると思う。だけど、それが一番難しいだろ」

「それを全員で考えましょう。仲間なんですから」


 ……仲間か。


 まぁそうだな。


「とりあえず、今日はもう野営の準備をしよう。まずは水場を探すところからだな」


 幸いにして、探し始めてからものの数分で水場は見つかった。湖と呼ぶには狭いが、泉と呼ぶには広い湖畔のような水辺である。

 やはり建物の近くに水場があるといった考えは正しかったらしい。水も透き通っていて飲み水にも使えそうだ。


 しばらくは、ここを拠点として活動してもいいだろう。






 次の日から、朱音の希望通り遺跡の攻略に乗り出すことにした。

 まずはスライムの攻略法を確立しなければならない。

 

「棒でつついて確かめながら行けばいいのでは」


 全く単純な方法だが、何事も試してみなければ分からない。

 俺達は朱音の言う通り枝を持って全方位を確かめながら歩き、すぐに引き返した。


 ……時間掛かり過ぎるだろこれ。


 確実な方法には違いないが、最初の分岐路に行くまでに日が暮れる。ボツだ。


「失敗ですね。では小石を投げてみるのはどうでしょう」


 次に雪村さんの案を試してみる。壁や床に向かって小石を投げた。

 スライムに当たれば、僅かに表面が揺れる。確かに見分けることはできた。 

 だが小石一つで確認できるのは、小石一つ分の範囲だけだった。


 ……棒よりはマシだが、穴だらけだな。


 一見成功したように思えたが、点でしか判別できず投げていない所から襲われる危険が残る。これもボツだ。

 

 次に懐中電灯を斜めから当ててみることにした。

 透明、半透明なら光沢や影に違いが出ると思ったのだ。


 だが、結論から言ってこれもボツ。

 光の角度が変わるだけで見えなくなり、床の水気や磨かれた石まで同じように光った。暗い遺跡内では多少使えるが、誤認が多い。電池にも限りがある。 


 今度は水を撒いてみたが、これもボツだ。全く変わらない。


「火で炙ればいいんじゃないですかね」


 水ときたら火と連想でもしたのか、朱音が軽い調子で提案した。

 この時点でもう二日目に突入している。半ばヤケクソだったのは否めない。


 火を近づけるとスライムは明らかに身を縮めた。

 見破るだけなら優秀だった。

 ただし、苔や蔦まで燃え、遺跡の中に煙が充満するという欠点さえなければ、だが。


「これは駄目ですね」

「言われなくても分かる」


 酸欠や視界不良、遺跡焼失の危険で即ボツだ。

 もういっそスライムごと遺跡を全焼させてしまえばいいと思ったのは、朱音には黙っておこう。


 ……だが、こうなるとどうするかな。


 他に手はあるかと頭を捻るが、いい案は中々思いつかない。時間を浪費しても仕方がないし、一番手応えを感じた小石で攻略を進めてしまおうか。


 点でしか気付けないけど、沢山投げれば済む話だし。

 いや、待てよ。点を面にすればいいだけじゃないか?


「先輩、なにしてるんですか?」

「まぁ見てろ」


 小石は当たった場所しか分からない。

 なら一度に広く撒けばいい。

 俺は足元の瓦礫を拾い、大斧の腹で砕いた。

 さらに拳で潰し、砂より少し粗い程度まで細かくする。


 それを壁に向かって、散弾のように投げつけた。


「おお!」


 石の粉は本物の壁には乾いた音を立てて跳ね返り、スライムに触れたものだけが湿った表面へ張りついた。俺はそれを確かめると同時に駆け出し、無防備なスライムに大斧を振り被る。


 魔石が一つ、床に落ちた。


「いいですね今の! これでいきましょうよ!」

「はい。とても効率的だと思います」

「いや、雪村さんの案が元になっているので、そう褒められても。朱音の案は特に良いことなかったけどな」

「綾の手柄は私の手柄と同義です。ね、綾?」

「おっしゃる通りです、お嬢様」


 ……それでいいのか雪村さん。


 本人が満足しているのならそれでいいのだろう。元々は朱音が遺跡を攻略したいと言ったのが発端だし、そう言う意味では朱音の手柄と言えなくもない。いや違うか。


 とりあえず、これで本格的に攻略開始だ。





 その日から、自然と役割分担ができていった。


 俺が石を砕いて投げる。位置が判明したスライムを俺と朱音が倒していき、俺達で気付けなかった討ち漏らしを雪村さんが仕留めていった。


 この方法を取ってからその日の内に最初の分岐路までたどり着き、二日目にはその最奥にまで到達することができた。スライムを山のように倒したおかげでレベルもいくつか上がっている。


 もっと早く気付けていれば余計な時間を使わずに済んだけど、まぁいい。結果良ければ全てよしだ。


 最奥は部屋になっているらしく、結構広い。

 俺は部屋へ一歩踏み込もうとして、止まった。


 ここ数日擬態スライムを見続けてきたせいか、妙に敏感になっている気がする。なんというか違和感がある。見れば朱音と雪村さんも足を止めていた。


「……なんかいるな」

「ええ、いますね」


 俺達は全員で頷き合うと、朱音がおもむろに弓を構えた。

 狙いを定め、引き絞る。


「もうちょい上じゃないか。いや、いき過ぎだ」

「そうですか。私はここだと思いますけど」

「いいえお嬢様、あと五ミリほど左にずらして……そこです」


 朱音の指が、完全に静止した。

 そして、


「――『ズドン』」


 大砲のような発射音が部屋中に響き渡り、矢が一直線に空間を貫いた。


 一見すれば何もない場所を通り抜けたように見えたが、その先端は途中で不自然に止まり、中空へ深々と突き刺さる。

 次の瞬間、矢の刺さった一点を中心に、部屋全体へひび割れのような歪みが走った。

 壁が揺れ、天井が垂れ下がる。床までもが大きく波打ち、整然としていた石室の形が音もなく崩れていく。


「どうやら、部屋全体が一匹の巨大なスライムだったみたいだな」

「ええ、気付けなければ一瞬で呑み込まれて終わりでしたよ」


 魔石を砕かれた巨体は形を保てない。

 壁も天井も大量の粘液となって一斉に落ち、そして溶けるように跡形もなく消え去っていった。


「先輩、あれ見てください」


 俺は朱音の指差す先へ視線を向ける。

 その先には、場違いなほど整然と、いくつもの天幕らしきものが並んでいた。


 



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― 新着の感想 ―
最新話まであっという間でした! 面白い設定と、芯のある登場人物達、そして納得感のあるストーリー展開、どれも好みで楽しく読めました! とても面白かったです!ありがとうございます! これからも応援して…
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