第9話 ドラゴン討伐
「はい、定位置についたら結界を張ってください」
二日間かけて、飛竜が巣を作っているというキーリスの町の近くまでやってきました。
私は第一部隊の魔導師たちに周りに被害が及ばないようにと、飛竜が逃げないための結界を張るように指示をだしました。
ここはゴツゴツとした岩場が広がり、身を隠すにはいいですが、戦闘となるといささか場が悪いのです。
もちろん飛竜はそれがわかって子育てをするために、ここで巣を作っているので、理にかなっていると言えます。
「リュクシオン。騎士、配置完了」
「私の背後に立つな、フェルアラン」
真後ろからフェルアランの声が聞こえ、フード越しに睨みつけるように振り返る。
普段ならいいのですが、このような仕事のときはフェルアランは気配を消して近づいてくるので、突然声をかけられて驚いてしまうのです。
騎士たちが配置についたからと言っても、まだ結界を張っていないので、号令はださないで欲しいです。
「1体足りない」
ん? ……飛竜が1体足りないのですか?
まぁ、こういうこともあるでしょう。
獲物を狩りに行っているのでしょうね。
「そっちは私が始末します。トラにゃんのために!」
「肉が食えれば、俺は誰が狩ったのでもいいのだが」
私の肩に張り付いたトラにゃんが、誰でもいいと言っていますが、私がトラにゃんに飛竜を狩ってあげるのです!
ウキウキと空間から身の丈ほどの、杖を取り出します。
その杖にまたがり、地面の上を少し浮いて飛んで移動します。
飛竜といえば空中戦。
楽しい楽しい、新しく作った魔法の試し打ちができるのです。
「で? 何故についてくるのです?」
私は隣を並走するフェルアランを見る。
「……」
無言! いやいや、騎士団団長として……いや、いてもコレだから……はぁ。
私はピタリと止まり、白銀の鎧に指をつきつけます。
「騎士団団長が、私についてきてどうするのです」
「……」
あ、質問の仕方を間違えました。
「部隊を率いる指揮官はいるのですか?」
「ああ」
「その者に任せていいと判断したのですか?」
「ああ」
『ああ』しか言わない白銀の鎧は、部下に飛竜討伐を任せるようです。
これぐらいであれば、団長が出るほどではないのは確かです。
「だから、私についてきているというのですか?」
「1体、他のと違うドラゴンという未確認情報がある。巣があるところにはいなかった。だから、共に向かう」
ん? そのような情報は私のところに来ていませんよ。
どこの情報ですか?
しかし、こういう情報で危険を回避したこともありましたから、詳しくは詮索しませんが。
「そうですか」
普段もこれぐらい話してくれると、コミュニケーションが取りやすいのですが。
「これは食いでがありそうだ!」
「トラにゃんが喜んでいる!」
私の瞳は、嬉しそうに尻尾をピンと立てたトラにゃんに釘付けです。
「やっぱり、生がいいよね。それとも香ばしく焼いたほうがいいのかな」
「肉は生だ生!」
生ということは、使う魔法も制限されるということですね!
「食べやすい大きさに切ったほうがいいかな?それとも素材そのまま齧り付く?」
「ガブリといきたいな」
「わかったよ!」
ふふふふふ……可愛い。トラにゃん可愛い。可愛い。可愛い。可愛い。可愛い。
……で、何故に白銀の鎧に見下されているのでしょう。
「何ですか?」
「かわいい」
「ですよね? トラにゃんは最強に可愛いですよね」
トラにゃんは世界で一番可愛いのです!
「で、お前らドラゴンを狩る気はあるのか?」
トラにゃんが前足で指し示したところには、赤い鱗に覆われたレッドドラゴンがお昼寝中です。
私たちは、遠目で視覚で捉えられるところから見下ろしています。
先程の岩場を下っている途中で、遠くのほうに赤い物体が草原で気持ちよさそうに寝ているのを発見。
そんなことより、トラにゃんがウキウキしているのに釘付けです。
しかし、そのドラゴンを所望しているのはトラにゃんなので、主としてサクッと狩ります。
「あれは私の獲物なので、手を出さないでください」
とフェルアランに言って、トラにゃんを預けました。
寝ているところを襲撃して、ご機嫌斜めな飛竜をどう空中戦にもっていきましょうか。
杖を跨いで浮遊します。
そして、その高度のまま飛竜の上空まで飛んでいきました。
真上まで来たところで、目覚めの一発として、風魔法を……ん?
飛竜の首がもたげ、口が開いた。
ブレスか!
そんな安易な攻撃を受けませんよ。
発せられたブレスを避けるために、軌道をかえ……ってブレスが何故に途中で消し飛んだのですか!
「手を出すな!」
剣を振り切っている白銀の鎧にに向かって叫ぶ。
ブレスが消えるとか理解不能です!
イラッとしたまま、風迅の魔法を使ってしまったので、下にいる飛竜の首を切り取ってしまいました。
脅して空に飛んでもらい、空中戦を楽しむつもりでしたのに!
*
「おい、文句を言われているぞ」
白銀の鎧の肩の上に乗ったキジトラ猫が呆れたように言っている。
「流石、リュクシオン。硬い鱗に覆われたレッドドラゴンを一撃とは……あと、怒っている声もいい」
「……聞いていないな」
独り言を言っている白銀の鎧に何を言っても無駄だと言わんばかりにキジトラ猫は呆れた声を出している。
鎧の肩を蹴って地面に降り立つ前に、キジトラ猫のその姿は空中で消え去ったのだった。
少し続けますが、更新は不定期ですm(_ _)m




