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王命の婚約者〜この婚約は絶対に潰します〜  作者: 白雲八鈴


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第10話 ボイコットを三回してみたら…

 その後、トラにゃんに赤いだけの飛竜を捧げた。そして何事もなく日々が過ぎていきました。


 そう! 何事もなく!


「魔導師団長様。主様より伝言がございます」

「ふわ! うさぴょん!」


 私の執務室にピンクの大きなうさぴょんが現れたのです!

 そう、転移で現れたのです。


「うわ! デカいうさぎが!」

「あれは使い魔だから気にするな」


 突然、現れたうさぴょんに驚いた書記官。あれ? うさぴょんに会うのは初めてだったかな?


 トラにゃんが使い魔と言った時点で書記官の目が死にました。

 何ですか? その目は?


「主様が、『ボイコットするとはどういうことなのですか? 約束の日に休むように言っていたはずです。今回で4回目ですよ』と申しております」


 そう、フェルアランとの会う約束を3回ボイコットしました。

 婚約者のリュメリア・カサランドラとしてです。


「うさぴょん。どんな牧草が食べたいかな?シャキシャキの歯ごたえがある生草?それとも味わい深い乾燥草?」


 私は二種類の牧草をうさぴょんに献上する。そんな、フェルアランと会うなんてどうでもいいことです。


「どうして、団長への大事な要件に使い魔を送ってくるのです。誰ですか、そんな馬鹿は」


 書記官の呆れた言葉が耳を通り抜けますが、その馬鹿は弟です。


「あれは伝言じゃなくて、強制連行だ。足止めには完璧だろう」

「トラ殿、言われてみれば、ほいほいと付いて行きそうです」


 うん。うん。トラにゃんの言葉に納得してくれる書記官はいい人だよね。

 使い魔の言葉なんてと無下にする(やから)は天誅です。


「主様のお父上様のご命令です。『強制転移』」


 うさぴょんのもふもふのお手々がピタリと私の額に当てられました。

 肉球がないもふもふのお手々も最高です!




「おかえりなさいませ、お嬢様」


 気がつけば、実家に戻って来ていました。

 そして、私はガタガタと震えてきます。


「ととととととととトラにゃんを置いてきてしまいました! この世の終わりです!」


 床に倒れ込みました。

 トラにゃんがいないなんて、世界の崩壊です。


「お嬢様、トラ様は使い魔ですよ。何、馬鹿なことおっしゃっているのです」


 侍女長に、うなだれている私は連行されてしまいました。




「いいですか。リュメリア」


 いつの間にか戻ってきていたトラにゃんを、使い魔質にしている母が言ってきました。


「三回もボイコットしたことを謝罪すること、会話を成立させること、庭を散歩することが今回の課題です。あと時間は前回と同じ1時間ですよ。これが出来なければ、トラは一晩預かります」

「トラにゃん質! お母様酷いです! トラにゃんがいない夜なんて耐えられません!」


 課題の多さに文句をいいます。

 フェルアランと庭を散歩とかありえません。何が楽しいのですか!


 くっ! 何度か国王に接触しようとしたのに、うさぴょんの可愛さに、見とれてしまうのです。

 あの可愛さは国宝級です。


 うさぴょんのつぶらな瞳。両腕を広げて抱きついても動じないどっしり感。そして細くて柔らかいもふもふの毛並み!


 これが国宝級でなくてなんと言うのです!


 なので、従兄妹殿の国王に接触ができないのです。


「リュメリア、婚約者殿に謝罪して、お話をして、庭を散歩するだけです。別にドラゴンを倒せと、言っているのではありませんよ」


 母よ。ドラゴン討伐のほうがとても簡単なのです。

 そもそも会話が成り立たないのです。


『ああ』とか『了解』とか『いや』ぐらいの返答しかない物体と意志の疎通など、知り合って十年ぐらいですが、未だに困難を極めるのです。


 それに散歩! なにですか? 散歩って?

 薬草採取に行ったほうが百倍ましです。


「わかりましたね!」


 そう言って馬車に押し込められ、誰もいない馬車の中でうなだれます。

 何故に誰も付いてきてくれないのですか。

 一人ぐらい付いてきて、私の愚痴に付き合ってくれていいと思うのです。



 グチグチと考えていると、到着してしまいました。

 ディロメルデ公爵邸。


 一応、身なりは整えます。


 私がリュクシオンとバレるのは問題ですからね。しかし、今回も寒色の青い色のドレス。


 まぁ、空色の髪の私に赤いドレスだと、ドレスが浮いてしまって、ドレスに着られてしまっているようになるので、だいたい同じような寒色になってしまうのです。

 仕方がないことですね。


 外から馬車の扉が開けられ、大きくため息をはいてから立ち上がります。


 差し出された手を取って馬車を降りようと視線を上げれば……は? フェルアラン?


 思ってもいない人物の出迎えに、思わず馬車を降りる足を踏み外してしまいました。


 やばいと、いつもの感覚で魔法を使います。が、魔力阻害の腕輪のせいで魔法が発動しません。


 余計に焦り、バランスを崩してしまいました。


 そして、何かにおでこがドンとぶつかる衝撃。


 う……これはフェルアランに頭突きをかましてしまいましたか。


「足を踏み外してしまい、失礼しました」


 が、何故か捕獲されるように抱えられています。

 青い瞳にガン見されている私。


 だから謝ったではないですか。


「カサランドラ伯爵令嬢の可愛らしさに見惚れていた私の落ち度です。すみません」


 ……え? フェルアランは何を言っているのです? 視力は大丈夫ですか?

 あと長文!!


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