第3話 使い魔にメロメロ
「おとこ」
そう返されてホッとしている自分と、これフェルアランって男色なのかと引く自分がいます。
ヤバいですね。
「男が好きなわけではなく、リュクシオンといると凄くドキドキする」
あ、男色を否定してきました。
って、これを私に言ってきて、どうしろというのですか。
「フェルアラン。言っておくが、私は異性にも同性にも興味はない」
「わかっている。リュクシオンの最愛は使い魔ということぐらい」
「……言い方が悪いですね。魔法にしか興味がないと言ってほしいものです」
確かに私の使い魔はとてもとてもかわいいので、否定はしません。が、使い魔好きの変態みたいに言われている感じがするので、言い直して欲しいです。
「しかし、使い魔にベタベタして嫌がられているのに、それを気にしないリュクシオンがかわいい」
「は? あれはただのツンデレです」
「それに、私と会話が成り立つのはリュクシオンぐらいだ」
「はぁ、ほぼ五年も組まされていると、剣と剣術に関しては饒舌になるぐらいわかっていますよ」
あと、普段は言葉としてまとめるのに時間がかかっているので、無口になっているだけです。
是か非かという選択だけなら、直ぐに返答しますからね。
要は質問の仕方です。
ん? さっきから言葉数が多いですね。
単語の会話は通常運行ですのに。
「明日、その婚約者と初めて会う。だから、己の心と折り合いをつけようと思ったのだが……駄目だった」
「……」
これを聞かされた私にどうしろと?
さっきからマスターが、聞き耳立てているのが丸わかりなのですけど?
「リュクシオンが好きなんだ。だから今までの婚約話は断っていたのだが、今回は王命なので流石に断れないのだ」
「今までの婚約? ……いや、ディロメルデ公爵家の嫡男だろう? 本当なら結婚していてもおかしくないよな?」
あまりにもの衝撃的な言葉に、フェルアランと組まされていたときの雑な言葉遣いで突っ込んでしまいました。
すると、何故かふわりとした笑みを浮かべるフェルアラン。
普段から無表情ではなくて、そういう笑みを浮かべればいいと思います。
「ああ……やっぱりリュクシオンが好きだ」
「はぁぁぁぁぁぁ。私にそれを言ってどうするのです」
「そういうところ、私は救われてきた。公爵家の嫡男というしがらみを取り払ってくれるからだ」
「は? 何を言っているのです?」
「王命だが、婚約破棄すると決めた」
「いや、王命に逆らうなよ」
本当に何を言っているのです?
それに私の何が関係するのですか!
何故にクツクツと笑い出すのです。
おかしなことを言っているのはフェルアランのほうですよ。
店が閉まるまで、つきあわされた私は翌日、父の使い魔にたたき起こされました。
「メラにゃんどうしたにゃー?」
ベッドの上で大きな白い豹に前足で頭を押さえつけられていますが、そんなこともご褒美です。
『主が至急戻ってくるようにとある』
枕の上に手紙を置かれましたが、そんなことよりも……
「メラにゃん。ごはんたべる? それともあそぶ?」
と言いつつもふもふに抱きつく。
朝からなんというご褒美。
『戻るようにと……』
「戻っている間、ずっとメラにゃんをグリグリ撫でていいのなら戻るよ」
『主にリュメリアは忙しいと申しておく』
そう言って父の使い魔の白豹が消えてしまいました。
私のもふもふが!
「ぐふっ! 久しぶりのメラにゃん、かわゆい。流石私のお婿さん」
私はふとんを抱きかかえニヤニヤと笑みを浮かべます。
「使い魔とは結婚できないぞ」
冷たい声が私に降ってきました。視線を上げるとキジトラの御猫様が私を見下ろしています。
「ふふふ。小さい頃、私のお婿さんになってくれると言ってくれたもん!」
「いや、それ主の妄想だろう?」
私のことを主と呼ぶキジトラ猫は、私の使い魔です。
もうメロメロにかわゆいです。
「トラにゃんは私の使い魔だけど、メラにゃんは私の使い魔じゃないから、お婿さんなの」
「よくわからない理屈を並べていないで、手紙を受け取れよ」
いったいお父様は何を私にいいたいのでしょうか。暇ではないのですけどね。
メラにゃんが置いていった手紙を手に取ると……巨大魔法陣が展開って!
これはまさか! 強制転移!
「ナジュヴァル!」
私は普段呼ばない使い魔の名を呼んで、強制転移に巻き込んだのだった。




