第2話 なぜに告白をされたのでしょう?
「如何されましたか?フェルアラン騎士団団長殿」
私の背後にはフルフェイスを取り、黒髪の青年が立っていた。
ただ無表情で何を考えているのかわかりません。
さて? 何か予定でもあったでしょうか?
しかし、いつも話しかけても、『うむ』『わかった』『いや』ぐらいしか聞いたことがないのに、フェルアラン騎士団団長殿から話しかけれるなんて、明日は雹でも降ってくるかもしれません。
「……」
無言。用があったのではないのですか?
「はぁ。お腹が空きましたので夕食を取りながらでもいいですか?」
「ああ」
「それでは一時間後にハイツ亭で」
私はそう言って、踵を返し後ろ手で手を振って立ち去る。
背後からも立ち去る足音が聞こえたので、急ぎの用ではなかったということか。
「団長。よくあの無言で話ができますよね?」
部下が無言と会話できていると言ってきたけど、全く以てできていないからね。
「入団以来の腐れ縁というものだね」
実は、フェルアランとは同期で騎士団と魔導師団に入団したのです。
与する組織が違うのに腐れ縁とは如何にという感じですが、これには組織の隊員の育て方に由来するのです。
近距離攻撃が得意な騎士と遠距離攻撃が得意な魔導師が組まされるのです。
それも同じ力量の者同士。なので、私はフェルアランと組むことが多かったというだけです。
さて、いったい何を言われるのでしょうかね。
一時間後、私は人々が行き交う王都の大通りから外れた、人気がない路地を歩いています。
魔導師特有のフードつきのダボッとした外套をまとっているので、男か女かもわからない感じです。
薄暗い路地の突き当りには、ハイツ亭と看板が石畳の上に置かれた店があるのみ。
目的のお店ですね。
扉を開けると、閑散とした路地とは打って変わって、人々の賑わう声が耳に入ってきました。
店の中はほぼ満席のようです。
テーブル席はほぼ埋まっています。私は店の奥まで行き、カウンター席に座りました。
「先に食べていてよかったのですよ?」
騎士団の団長の白い隊服を身に着けている隣の席の人物に声をかけます。
「……」
無言。ただ私のほうに青い瞳を向けたのみ。
私は気にせずに、カウンターを挟んだ奥にいる店のマスターに声をかけました。
「日替わりとエールで」
「今日はお疲れさんでしたなぁ。これはわしのおごりな」
私の前にジョッキでエールがドンと置かれました。
マスターのおごりとは嬉しいですね。
「ありがとうございます」
今日のパフォーマンスを頑張ったかいもあったというものです。
ジョッキを手にとり、なみなみと注がれたエールを喉に流し込みます。
くぅぅぅぅ!今日はこのためにあったという感じです。
「で? 何の用ですか?」
満腹になった私はタバコを取り出して、一服吸う。
そう、今まで無言だったのです。
因みに格好で騎士団団長と魔導師団団長がカウンター席にいるのがバレバレなので、近くにはカウンターの奥に店のマスターしかいません。
それに周りがうるさいので、聞き耳を立てる者がいても聞こえることはないでしょう。
「婚約をすることになった」
「そうですか、良かったですね」
……これは婚約者と何を話せばいいのかという相談でしょうか?
しかし、フェルアランも二十五歳なので、そのような話が今まで出なかったことのほうがおかしいのです。
というか、私にそれを言ってどうするのです。
「良いことなのか?」
「さぁ? 私は興味がないことなので、普通は良いことなのでは?」
「はぁ~」
珍しくフェルアランからため息が聞こえてきました。どうしたのでしょうか?
もしかしてお相手の方が気に入らないとか?
「この一週間色々考えてみたのだ」
「そうですか。マスター、エールのおかわりを」
私は興味無く返事をする。
空のジョッキと入れ替わるようになみなみと注がれたエールがカウンターに置かれた。
タバコを灰皿に押し付け、ジョッキを手に取る。
「何度考えても、リュクシオンのことが好きだと」
「ぶふっ!」
思わずエールを吹き出してしまいました。
え? 今おかしな言葉が聞こえましたが気の所為ですよね?
「いや、おかしいのはわかっている」
空耳ではなかったのですか!
え? 性別がバレているわけではないですよね?
体格がわかる服装など着たことありませんし、というか成長が途中で止まってしまったかのようにスレンダーなので、女性とわからないはずです。
そこ! 絶壁とか言わない!
「リュクシオンが可愛くて、ドキドキするのだ」
「いや、ちょっとまて。私の性別は何だと思っているのか確認していいか?」




