第16話 王の従者の秘密
「御者殿。お伺いしたいことがあるのです」
王妃様が宿泊する王家の離宮に到着した。
普通であれば、休憩をそれなりに挟んで二日間の行程で向かうアレグレッサの離宮です。
それが、今回休憩を挟まずに一気にここまで駆け抜けたのです。
いくら頑丈な亜竜種の馬竜でも、かなり無茶な行程だと言えます。
因みに私は途中から召喚獣に乗り換えましたからね。
あと、今は護衛が二人しかいませんので、フェルアランに王妃様の護衛についてもらっています。
「何でございましょうか。魔導師団長殿」
「取り敢えず、その容姿をやめませんか? イラッとします」
私は従兄妹殿を模した姿を辞めるように言う。ここでは影武者など必要ないのですから。
「そうでございますか? とは言ってもあまり変わりませんよ」
御者役のカインディールは自分の顔に手を当てて、魔法を解いた。
「あー」
魔法を解いた姿を見た私は、星が輝く空を見上げる。
あの従兄妹殿にしてやられたと。
「まさか死人に会うことになるとは、思っていませんでしたよ。ライオネル殿下」
そうあまり容姿は変わっていません。強いて言うのであれば、瞳の色が金色から赤色に変わったぐらいですか。
従兄妹殿が王位に付く前、第二王子派と王太子派で王家が二分されていたのです。
いわゆる派閥争い。
当人同士は母親が違っても、仲のいい兄弟でした。いいえ、どちらかと言えば、ライオネル殿下が従兄妹殿を慕っていたという感じです。
まぁ、どちらも私の従兄妹にあたるのは同じですけど。ややこしいですね。
そんなこんなで、派閥争いに担ぎ上げられたライオネル殿下は、従兄妹殿に殺されたというのが、一般的な見解です。
「さて、今は平民上がりの従者カインディールですよ」
そういって、金色の瞳に戻しました。
そうですね。容姿はあまり変わりませんでしたね。
しかし、この魔力。不快ですね。
9歳のライオネル殿下にしか会ったことがありませんでしたが、このようなドロリとした魔力ではなかったはずです。……まさか!
「そうですか。平民上がりのカインディール。貴方は何と契約をしたのですか?」
すると、今まで無表情だった容姿に、ニヤリという悪どい笑みが浮かび上がりました。
「とある女性がですね。どうしても王妃になりたいと言いましてね。子供をニエに捧げたのですよ」
それ第二側妃様の話ですよね。
元宰相の娘で、第二王子を王位につけようと色々周りを焚き付けた張本人です。
が、王妃になりたかっただと少々話が違ってきますね。
「しかし、悪魔というモノは、人如きではおしはかれるようなものではなく、ニエの子供と契約をしたのですよ。なので、答えとしては悪魔でしょうか?」
なぜにそこを言い切らずに疑問形になったのですか!
悪魔ではないと言いたいのですか?
「そうですか。まぁ、国王陛下が存じているのであれば、それに関して私が言うことはありません。今回の詳しい話を御者殿にお聞きしたいと、声をかけさせてもらったのです」
従兄妹殿が知っているのなら、悪魔使いだろうが別にいいです。
私としては、今回の無駄に思える巡礼の話のほうが重要です。
「驚かれないのですね。もしかして知っていたとか?」
「十分驚いていますよ。それよりも、私の魔法の研究より、優先させられた護衛のほうが問題です」
「ぷっ! まさか、そこまで重要ではないと言われるとは思ってもいませんでした。私と契約している悪魔が恐ろしくないと?」
これは脅されている?
しかし何を恐れることがあるのでしょう?
「契約に縛られている悪魔を恐れる理由が無いですね」
契約に縛られているのは、カインディールも悪魔も同じです。
カインディールの魔力の濁り具合から見るに、かなり悪魔の力を酷使したと思います。
悪魔との契約は魂の契約です。
対価として寿命が求められて、最終的に魂が悪魔に食われるというものです。
そして今の状態をみる限り、悪魔の力を使い過ぎて、魂の大半を悪魔に握られているという感じでしょう。
悪魔に侵食されているために、魔力が淀んでいるようです。
まぁそんな他人の話などどうでもいいのです。
今重要なことは……
「ぶっちゃけ、簒奪を考えているヤツをぶちのめせば、いいのではないのですか?」
そうすれば私はこのような無駄な時間を過ごさなくていいのです。
「私のことを確認されたということは、私をぶちのめす宣言と捉えられるのですが?」
……いや、本人がそれを本気で口にしていて、国王が従者として側に置いているなら、本当に従兄妹殿を無能扱いしますよ。
「ライオネル殿下は国王自ら手を下し、王家から名を消されました。そもそも王位には立てません。そんなことはどうでもいいのです。私の時間を奪っているクソヤロウを吐けと言っているのです」
従兄妹殿が王妃様を遠ざけて何かをしようとしているのなら、犯人の目星はついているということです。
だったら、従者を名乗っているカインディールも知っているでしょう。
「そうですね……」
「のらりくらりと話をそらそうとすると、契約した悪魔との再会が早まることになりますよ」
私は親指を立てて自分の首に向かって横に引く動作をする。
まぁ従兄妹殿がカインディールを遠ざけた理由は、これ以上悪魔の力を使わせないようにという配慮があると推察されます。
が! そんな配慮など、私の時間の前では無意味! さっさと吐いていただきましょう。




