第八話 二度目のスカウト
今日も記憶の図書館は営業中だった。春のあたたかな陽ざしを受けながら、のんびりゆったり時間を過ごしている。そんな一日を過ごしていた。
しかし、今日は意外な来客が来た。
「よっ、久しぶり。」
玄関ホールに立っていたのは、以前館に潜入しいろいろ迷惑と情報をくれた男性。リンだった。にこにこと笑みを浮かべながら、もう一人背後に待機させている。
「……?」
玄関ホールにいたのは青髪のブルーが眉をひそめていた。
「ええと、そちらの方は?」
リンの後ろにいたのは、桃色の髪をした小さな少女だ。ぬいぐるみをぎゅっと手に持ちブルーを見つめている。片目が眼帯でおおわれていた。
「こいつが、シオンに会いたいんだと。会わせてくれないか?」
リンはぽんとその少女の肩に手を置く。ブルーはさらに眉をひそめた。
「関係者であっても、仕事中は会わせることはできません。」
「仕事”中”は?」
流石、ギルドを運営しているだけだ。言葉の隙を見つけるのがうまかった。ブルーは肩をすくめるとあっさり言う。
「わかりました。ですが、本人が許可しない場合とほかの使用人が許さない場合はご遠慮ください。それをご理解いただけない場合もご遠慮ください。」
「ああ。もちろんだ。」
リンはおとなしくその少女とともに待機室に移動した。ブルーはその背中を見つつ、シオンのもとへ向かう。一体何の用事なのかと考えながら。
数分後。営業が丁度終わり、客室に集まった。シオンとブルー、そしてマリーが顔を出す。
「んで、主様に何の用?」
マリーはにこにこと笑みを浮かべながら、リンを見つめた。隣にいる少女はじっとシオンを見つめていることにも気づいているだろう。
リンは姿勢を正すと静かに言った。
「シオン。少し、俺たちの仲間にならないか?」
「は?」
ブルーが目を丸くして、低い声を漏らした。マリーも言葉を失っている。前代未聞という言葉が似あうほど、それは突拍子もない話だった。
シオンもなぜそんな話になっているのかわからないという風に首をかしげる。
「一体どうしてですか?」
リンは隣にいる少女に指示を出した。するとバッと彼女は立ち上がる。そして静かに言う。
「はじめまして。ボタンはボタン。これでも十八歳の大人なの。よろしくね。どうしてかって言われたら、あの事件の続きが始まりそうなの。」
ボタンという名の少女はあっさり言い切った。
「あの事件、光属性魔法を扱う人が狙われるという事件ですね。」
「うん。正式名称は”光殺し事件”。おもに、魔族が起こした人間に対する反逆事件。今もなお、世界各地で起こってるの。理由は単純。魔族の王、魔王が五年前討伐されたからなんだって。」
客室に沈黙が落ちる。ボタンはあくまでも簡潔に説明していた。それがどれほど異常かを彼女は理解していない。
「ボタンは知ってるの。これを止めることができる人は限られてるって。そのひとりが、記憶の管理者であるあなた。それから、それを守る使用人さん。」
その言葉にマリーとブルーは顔を見合わせた。
「え、うちらも?」
それは全く予想していなかったことだった。そもそも、記憶の図書館では使用人は受付担当としか思われていないことが多い。だから、相手にされないことがほとんどなのだ。
「うん。ボタン知ってるの。一回も負けたことないって。」
ボタンの純粋な言葉を受けたマリーはぱあっと笑みをこぼす。ブルーの手を取りぴょんぴょんとはねている。
「ねーねー、聞いた?ルーくん!うちらもその人たちなんだね!」
「いや……俺たちはここを守らないといけない。その場合記憶の神ニウム様に許可を得ないと。」
どちらにしろ、この二人では判断できないようだ。それにシオンも記憶喪失だということが世間にバレかねない。
それに、自分自身も光属性使いだ。狙われる危険性は大いにある。本来ならばこういう危険な場所や作戦に乗ってはいけない。特例を除いては。
シオン含め記憶の図書館の従業員はみんなの言葉が詰まった。この答えをすぐに出せるものはこの場にいなかった。
数分後。ようやく口を開いたのはマリーだった。
「他にはどういう人がいるの?」
彼女の懸念点は一つ。その情報が本当なのかどうかだ。もし本当だったとして、記憶の管理者に対していい考えをしていなければあまり意味がない。本来ならば、姿を現してはならない存在だからだ。
だからこそ、まずは真偽を確かめるためその質問を投げかけた。
ボタンはしっかり把握していないというふうにリンを見つめる。リンは頭をガシガシとかいてからいった。
「警備隊とか、騎士とかいろいろだ。中には一般人も混ざっている。だけど、ここの使用人含めて戦力になるのは確かだ。勝手に調べて申し訳ないとは思っているが。」
警備隊という言葉に、マリーとシオンは反応した。あの話はまだ二人の仲でしか話していない。ただ、もしこの事件解決に助力したら何かしら手がかりをつかむことができるのかもしれない。
マリーは目を細めながら、リンに尋ねた。
「その人たちは、あなたの話を聞いて、了承したの?」
あたりに沈黙が落ちる。やっぱりそうかとマリーが次の言葉を言おうとしたとき、ボタンが言った。
「ほとんどの人は了承したの。みんな、光属性使いだから。危機感あったんじゃないかな。」
今年は、間違いなく大きな戦いが始まる。明日か、一週間後か、数か月後かはわからない。だが、いつまでも平行線を進んでいられる時間はなさそうだ。
桜の花びらが散り始めるこの頃。彼らは一つの大きな歴史的瞬間を記憶に刻むことになるだろう。
告知ではお知らせしていましたが、再度告知しておきます。
皆さん、いつも見てくださりありがとうございます!
そこで、一つだけ報告があります。記憶の管理者【2】の設定見直しをしようとおもっているので10話をもって一旦投稿を休止しようと思います。他作品の異世界物は続けます。
その代わりに前々から考えていた別作品の投稿をしていこうと思います!
同じ作品を続けていると矛盾が多くなってしまい、物語に一貫性がなくなるんですよね。
見直しつつ、もう一つの作品をスタートしていきたいと思います。
再開は先月同様五月から再開しようと思ってます。それまでは、新しい作品と異世界物を見てくださるとうれしいです。10話まではとりあえず通常通り20時投稿を進めていくのでよろしくお願いします!
五月になったら、記憶の管理者ともう一つの作品を交互に、異世界物はおなじく二日に一回投稿になると思いますが、まだ確定ではないのでごゆっくりお待ちください。
以上、お知らせでした!




