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第五話 休日の作業

 今日は記憶の図書館は休日だった。春の温かい日差しがあたりを照らしている。


「あったかいね~。」


 キュラがのんびり中庭で何やら作業をしていた。その隣に緊張しながら座るシオンもいる。

「は、はい。あったかいです。」

「うんうん。あったかーい。」

 その作業というのは、彼の趣味の一環である武器づくりだ。近くにはシオンが見たことがない部品や道具が散らばっていた。全くもって何をしているかわからない。


「シオン様にね、武器を作ってあげたいんだ。光属性使いは狙われちゃうからね。」

「ありがとうございます……使えるかどうかはわかりませんが。」

「いいのいいの。僕が教えるから。」

 キュラはのんびり言いながら、ぶつぶつと独り言をつぶやいている。

 中庭に生えている桜の大樹をシオンはぼんやり見る。桃色の花々が風で揺られて踊っているようだ。キュラがふと、シオンに尋ねた。

「シオン様は最近、記憶を思い出してるけど怖くない?」

「怖い……ですか?」

 武器の柄を削りながらキュラは静かにいう。


「記憶を失ったあとの人って"怖い"ってよく言うんだ。今の記憶がない状態の記憶がなくなることもあるから。」

「……。」

 シオンは目を伏せた。そうなんだと、実感しながらもまだ思い出したいという思いがつよい。……それは果たしていいものなのだろうか。

「キュラさんは、以前どんな方の記憶喪失を治したんですか?」

「……小さな子供だったよ。親のことも忘れて、自分のことも曖昧で空っぽ。シオン様みたいだった。それでもがむしゃらに覚えて、覚えて、記憶に刻んでその日を生きていた。」

 風が彼らの間をすり抜けていく。だんだんと、緊張感を募らせていくように、あるいは緊張を解くように。


 しばらく沈黙が流れた後、シオンは答える。

「わからない……が正しいです。これまでも記憶もなんだか別の人の話のようで実感がわかないのです。」

「そうだよね、わからないよね。」

 それ以上はキュラは何も言わなかった。ただ静かに作業の続きをしている。シオンは考えるように、目をつぶった。


 それから、数分後。キュラはさっそく一つの武器を作ったようだ。「はい」という声をかけてシオンに手渡した。それは、弓だ。白い持ち手に金色のツタのようなデザインが施されている。しかし、気になるのが一つ。”矢”がない。

「あの、キュラさん。矢はどちらに?」

 キュラはシオンの手の持ち方を無言で直しつつ、首を傾げた。

「矢はシオン様が作るんだよ?」

「……私が?」

 キュラはこくりとうなずく。そして満足したように立ち上がった。

「よし、試しに行こうか。訓練所を使おう。」

「はい。」

 不安だらけではあるが、自分だけの武器を渡されたシオン。心なしか足は軽かった。




 訓練所は、記憶の図書館から少し歩いた先の洞窟の中にあった。かなり使い古され、あまり管理されていないのか扉が壊れている。ひしゃげており、中から何かを放たれたような、そんなゆがみ加減だった。キュラがそれをじーっと見て言う。

「この扉壊したの誰だと思う?」

「……え、壊した方がいるんですか?」

「うん。」

 シオンは目を丸くして考え込む。持ち武器に関しては、以前雪かきをする際に見た。

 マリーが鎌。キュラが銃。アイカが短剣。ブルーは盾だった。

「……威力的にキュラさんでしょうか?マリーさんやアイカさんは手加減されていた気がします。」


 シオンの回答に、キュラは顎に手を当ててにこっと答える。

「残念。違うんだなこれが。」

「おお……ではどなたですか?」

 キュラがのんびりと扉をあけながら言う。

「イラついて盾を投げたルーくん。」

 この扉を壊したのはブルーだったようだ。シオンは意外だといわんばかりに言葉を失う。

「昔のルーくんキレっぽい性格だったからね。今も時々そうだけどまるくなったなあ。」

「そうだったんですね……。」

 また知らない使用人の一面を知ったなと思いつつ、ついていった。

 中はもっと悲惨だった。焦げた後のあるマネキン。壁中に引っかかれたような斬れた後。室内だというのに、隙間から苔が生えている。ここには本来記憶の管理者であるシオンが来るべき場所ではないだろう。そんな雰囲気を醸し出していた。


「ここに主様を連れてきたの二回目なんだ。最初とシオン様だけ。他の主様は戦闘を好まない傾向にあってね。だから、僕シオン様が”ともに戦いたい”って言ってくれたのすごくうれしかった。」


 キュラはそういうと、目を細めてシオンを見る。

「だから、その期待にこたえられるように頑張るよ。たとえどんなに時間がかかっても、一緒に思い出そうね。」

 薄暗い洞窟の中でも彼の銀髪がきらりと輝いているような気がした。シオンはそれを見てひどく美しいと思った。

「はい。よろしくお願いします。」


 シオンはそういうと、ためらうことなく扉をくぐって中に入った。弓を使うことになるのか、はたまた別の武器を使うのか。それはシオンの身体に合わせて大きく変わるだろう。

遅れてすみません!外出してました!

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