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第二十六話 灯火

シオンが、光属性魔法を使おうと頑張っている最中。勇者ルドアが代わりに教師を務めてくれることとなった。そこでまず、基礎を学ぶこととなった。

 シオンは向き合う形で、ルドアに教えてもらうことになった。まだ、互いに知らない。あるいは、知っていてだまっている関係ではあるが、ひとまず、シオンは安堵していた。


 いつも、教えてもらってばかりだったから、急に一人でやれと言われてもパッとしない。だからこそ、教えてもらえるということに安堵していた。


「それじゃあ、まず君ができる魔法を、見せてくれますか?」


 ルドアは柔らかな笑みを浮かべて、手を差し伸べる。シオンはこくりとうなずくと手を差し出した。


 一番理解していることは、おそらく”光の矢”。昨年度のドラゴンを癒す力とは違い、常時できるようになるまで銀髪の使用人キュラにお世話になった。


 その記憶は、シオンの魂に深く刻まれているだろう。


 手を差し出したまま、魔力をこめた。体内にめぐりまわる魔力を指先に込めていく。ジワリと暖かく、そして熱くなっていく。


 こうして、目の前に一本の光の矢が出現した。


 ルドアはそれを受け取ると、訓練所のライトにあてるように掲げた。まだまだ不完全ではあるが、シオンの作る光の矢は照明に当てられ、キラキラと透き通っている。


「うん。とてもいいです。ここまでできれば、基礎をつければこんなこともできるようになると思います。」


 そういうと、ルドアは同じ光の矢を作り出す。シオンとはほとんど似ているが、光の反射が異常だった。神秘的だった。


 目をつぶりたくなるほど、光り輝いている。


「これは、君の魔法を少し”借りた”ものです。光属性の一つの特徴。それは何でも受け入れられる万能性があります。他の属性は例えば火であれば、燃やすことしかできません。それを否定することではありませんが、光は様々なことができるんです。」


 ルドアは自信満々に、そういうと光の矢の形を変えだした。一つの球となり、輪郭があいまいになっていく。すると、じわりじわりと、揺れ始めた。


 それは光の矢ではなく、一つの小さな炎に変わったのだ。


「炎……?」

「うん。……実際に、触ってみてもいいよ。大丈夫、火傷はしないと思うから。」

「は、はい。失礼します。」


 不安を胸に、シオンはその光の炎に手を伸ばした。


 先ほどの魔法よりも温かい。いや、熱い?思わず、シオンは手を離した。


「すごい……こんなことができるんですね。」

「うん。」


 ルドアはほんのり困った様に微笑んだ。そっと、その炎を消すと、ルドアは天井を見上げて言う。


「でも、そのせいで世界が困ってる。基本、被害のないものだけど、魔族や闇魔法には大きく関与しているんだ。」


 それを聞いたシオンは首を傾げた。


「あの。魔族には、大きく関与するということはよく理解しているんですが……闇魔法には勝てないんじゃ?」

「……ああ、そうでした。一般的ではそうですね。そこについても改めて説明しましょう。」


 ルドアはそういうと、ようやく壁際によりかかるリンとノロを見つめた。


「黒板を持ってきてくださりませんか?」


 急に振られた二人は困った様に互いに目線を合わせる。そして、即座に行動を始めた。


「持ってきます!」

「……俺も付いていく。」

「うん、よろしくお願いします。」


 二人は即座に取りに行った。彼らも聞く気満々なようだ。




 戻ってきた二人が、黒板を設置すると、ミニ講習が始まった。講師は勇者ルドア。生徒はシオン、リン、ノロである。おそらくだが、ノロは知っている内容である。……おそらくだが。


「それではまず、光属性のできることをまとめますね。」


 ルドアは白いチョークを走らせながら、話を振った。先ほどリンが言っていた、話せない状況とは思えないほど流暢なチョーク捌きだ。


「できることは以下の通りです。」


 しっかりとした丸い字でこう書かれている。


 ・治癒

 ・明かり

 ・バフ

 ・攻撃


「シンプルで言うと、こういう感じです。この中でもよく使われるのは、治癒だったり明かり。バフは、どちらかというと特殊すぎて無属性のほうが効率がいいみたいです。」


「なるほど……それで、攻撃方法は?」


「僕は主に剣にバフ代わりに光属性魔法を使っています。対魔物用として。ただ、それは限定的なのでおすすめしません。やはり、シオンさんが作る光の矢であったり、そもそも武器を作るなんて方もいます。魔導書にも記載があったはずです。」


 それに身に覚えがあるのか、シオンはこくりとうなずいた。リンも納得しているような反応を見せる。光属性魔法はかなり汎用性が高いようだ。


「それで、今回の光殺し事件の首謀は主に魔物。そして、時々人間も混ざり、拡大化が進んでいます。なので、シオンさんと、光属性魔法をつかえる人は主に武器にバフをつけたり、そもそも武器を作る方に回っていただければ。そして夜間になりましたら、こちら側の不利にならないよう明かりをともしてほしいです。」


 メモを取りながら、シオンは聞いていた。光属性を扱えるものはかなり少ない。それも一種類や二種類程度しか使えない人がほとんどらしい。その一人に自分がいる。自分もこれから起きる戦いの一員。歴史に名を刻むかもしれない。


 自覚はないが、覚悟はある。


 それでも、まだまだ足りないものがある。それは実践だ。

 シオンは顔を上げて、ルドアに尋ねた。


「その、バフや武器を作ること。私にもできるものでしょうか?それともやらなければいけないことでしょうか。」


 ルドアはじっとシオンを見つめた。当たりは相変わらず防音で静けさを放っている。ルドアは静かに瞬きを挟むと、あっさりと宣言した。


「あくまでも目標ラインがそこです。僕も、自分への付与しかやったことがないので。なのでともに、学んでいきましょう。そうすれば、あなたの中にある記憶の糸もつかめると思うので。」


 ルドアはそういうと、手を差し伸べた。白い手袋をした、頑丈な手のひらを。


「大丈夫。光はいつも僕らを照らしてくれます。」


 その言葉は、勇者としての使命だけでなく、光属性魔法を使う一員としてのアドバイスかもしれない。シオンは数秒見つめたのち、手を再度伸ばした。


 彼の中にともる、一つの思い。小さく、小さく燃えるように光っていた。

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