第二十二話 新たな出会い
ようやく、前から話に出ていた、光属性魔法を使う方々との顔合わせと訓練が始まることとなった。彼らは一体、どういう人なのだろうか。
彼らは目の前にそびえ立つ白い壁の中を、何の案内もなく進んでいく。そこはとても殺風景で、施設という表現がふさわしいほど静けさをたが漂っていた。
ブルーを戦闘に、シオン、ノロ、アヤメと列に並んで進み目的地へと足を運んでいる。
「広いですね。」
ポツリとブルーの口からそんな言葉がこぼれ落ちた。それを聞いたシオンはこくりと頷く。
「ここは、ギルド本部……なんですよね?なんだか、静かすぎて実感が湧きません。」
「ええそうですね。」
そんな事を話しているうちに、ようやく人が見え始めた。賑やかなまるで、お祭りのような人混みだが実際は違う。
誰かを守るために。
誰かの悔いを晴らすために。
この争いをとめるために。
みんな、何かしら目的があってここにいる。
しばらくその場にとどまっていると、手を振りながら見たことがある人物が走ってきた。
「おーい!!来たのか!ってはあ!?」
朝から騒がしい男、ギルド長のリンである。ノロをわなわな指をさし、困惑しているようだった。騒ぎは瞬く間に周囲に広がり、人だかりが彼らを囲むように移動する。
「なんだなんだ。」
「あれが、記憶の管理者と……ん?あれは悪魔か。」
がやがやと騒がしくなっていく。ブルーとアヤメは無言で、シオンを隠した。もちろん、ノロも。
「ちょっと、リン様。騒がしくしないでください。何ですか?」
ブルーが若干不機嫌そうに眉を顰めると、リンはぶんぶんと手を振った。
「お、おーい、みんな。この人は見世物じゃないから離れてくれ~。確かに記憶の管理者だが、今はその肩書じゃない~。」
しぶしぶという感じで人気は去ったが、いまだこちらを見る目線が多い。シオンは大丈夫だといわんばかりに、首を振るもさすがに居心地が悪かった。
すると、カツカツと足音が聞こえる。その音を聞いた周囲の人たちは道を開けるように左右に散っていった。まるで、彼らのために歩く場所を開けたように。目線も先ほどよりは減り、ブルー、アヤメ、シオン、ノロのみんながそちらを見た。
そこには一人の女性が立っている。
金髪、淡い紫色、長いエルフ族の耳。白いドレスに身を包み、静かにこちらを見ていた。そして、その瞳がそっとリンに向くと数歩彼に近づく。すると、ポンッと軽く頭をたたいた。
「いてっ!」
「いてっじゃないよ。みんなびくびくしてる。リーダーさん、いっつも管理甘いんだから。」
むっとしながら注意する彼女に、あたりの空気もさっと暖かくなっていく。かわいらしく、それでいてちゃんとした彼女。かなりの権力者か、有名な人なのだろうか。
シオンたちがぼんやり眺めていると、彼女はこちらにようやく向き合った。
「リーダーさんがごめんなさいね。この子ったら、いっつも大声で人様に迷惑かけて、おまけにあなたたちの館に無断侵入したんでしょう?私が後で叱っておきます。どうか許してくださいね。」
「いえいえ。本人からも謝っていただきましたので問題ありません。こちらこそ、騒ぎを和らげてくださり、ありがとうございます。」
ブルーが胸に手を当ててぺこりとお辞儀をすると、祖の女性は小さく手を振った。
「謝らないで。悪いのはぜーんぶ、このリーダーさんなんだから。……さて、改めてはじめまして、私はシラ。警備隊第二部所属、この訓練所の副指揮官を務めています。どうぞ、お見知りおきを。」
シラ。それが、彼女の名前らしい。みんなほぼ同時に「よろしくお願いします。」と返事を返した。シラは非常に温和で、笑顔がふわりと花が咲き誇るような自然なものだった。
ふと、シラはノロを見つめて流れるようにシオンを見る。何かを考えるように見つめた。
「……ええと、だから騒いでいたのね?」
リンが何に対して驚いたのかに、今気づいたらしい。困惑するように口元に手を当てて、リンを見た。リンは痛くもない頭をさすりながら言う。
「そうだよ!四人来るって聞いてたけど、この悪魔が来るなんて聞いてなかったよ!!」
「だから、声を抑えて?」
「あ……はい。」
よし、と小さくシラは返事をすると、目線を合わせるようにかがんだ。シラのほうがシオンよりも身長が高い。それを示すかのような行動だった。
「初めまして、あなたがシオンね。話は聞いているよ。光属性使い何だってね。私よりすごいって噂。期待しているよ。」
「はい、初めまして……よろしくお願いします。」
「ふふ、よろしくね。」
にこっと微笑んだ後、次にノロに向き合う。
「お久しぶり、ノロくん。ようやく、主を見つけられたんだね。よかったよ。」
「い、いえ……お久しぶりっす……。」
近くにいたアヤメが目を丸くしてノロを見つめた。
「ノロ殿。シラ殿と知り合いなのか?」
「あ、はい……そうっす。」
意外と世間は狭いようだ。とシオンとブルーは思っていた。
「ふふ、長い付き合いよ。とはいっても、私と彼より私とノロくんの主人との付き合いのほうが深いかもね。」
その瞬間、シオンはハッとした。
一年前にリンが来た時に見たあの夢。確か、どこかの路地で赤髪の男性と、金髪の女性はいなかったか?と。もし、この人がその女性なのであれば。
自分の姿を、ようやく見ることができるのではないだろうか。
シオンはそんな期待に胸を躍らせて、同時にこれからの話し合いに参加することを誓う。
彼はまだ知らない。自分がみんなにどう思われているのかを。




