第十七話 主のいない悪魔の話
主人の無事を確認できた彼らは、館内の復旧作業を行った。てきぱきと、スムーズにそして時間がたった。
数時間後。ある程度の復旧作業を終え、食堂に集っていた。ブルーが食事を作っている間に、ノロが来た理由を聞くことになったらしい。みんな緊張している。
なぜなら、目の前にいるのは悪魔の中でもトップクラスの実力者だからだ。
「ええっと、まずは挨拶から。俺はノロ・ロベリア。見ての通り悪魔で、シオンの元使い魔だ。」
「初めましてだ、ノロ殿。」
アヤメが代表してあいさつを交わした。しかし、数秒後眉を顰める。
「まて、”元”使い魔なのか?記憶喪失だけならば、まだ使い魔ではないのか?」
ノロはバツが悪そうに頭の後ろをかく。よくわかっていないシオンは首を傾げた。そう、悪魔契約は詳しい人しか詳細を知らない。キュラもわからないといわんばかりに首を振っている。
そんな様子をキョロキョロ見ていたマリーが代わりに説明した。
「悪魔契約って二パターンあるんだよね?ノロ様、説明してほしいな~?」
「ああ、わかった。説明しよう。」
腕を組みながら、みんなにもわかるように考えをまとめる。
「えと、一つ目を教える。一つ目は悪魔が主人に従うパターンだ。それは、様々な理由がある。その人間があまりにも魅力的で恋をしたり、強くて憧れたり。シンプルにそばにいたいとかそういう系統の。まあ、どちらかというとあんたらみたいな関係だ。」
主従関係。悪魔は人に忠実に従い、何の大小もなく己の欲のために動く。たとえそれが誰かに理解されなくとも。それが一つ目の契約方法だ。
「二つ目。その逆、人間が悪魔に何かを頼んだり、憧れたりするパターンだ。この場合、死んだら魂は奪われ二度と息ができない。この世でもあの世でも。だから普通の人間はまず選ばない。」
人間が悪魔のために動く。頼む内容は様々だ。
復讐をするため?
禁忌を犯すため?
それは契約した人間しか知らない。まあ、悪魔が話してくれるかもしれないが。
それが二つ目の選択肢だ。
そしてノロは言う。
「んで、前者が俺の契約法だ。この場合、主人が俺を認識しなくなった時点で契約破棄。つまり、今は野良だ。てなわけで自己紹介は以上。本題に戻る。」
ノロはシオンを見据えて言った。
「さっき、というかあの軍は光殺し事件に関与している教団のほんの一部に過ぎない。その宗教は”魔王こそ神”と語っている。それはまだいい、だが、ここ数年で勢いを増している。」
しかし、ノロは口を紡ぎもう一度言う。
「いや、言い方を変えよう。”悪い方向に走り出している”。」
ノロは事細かに話した。なぜこんな大ごとになったのか。なぜこんなに勢力が広まっているのか。そして、なぜ光属性使いを殺すようになったのか。
事の始まりは、みんなの予想通り”魔王が討伐された”ことから始まる。
勇者は”ルドア”という名の青年。光属性使いのまっすぐな青年だったようだ。魔王を討伐してから姿をぱったり消して、今は平和に過ごしているそうな。
「それで、魔物はまず復讐を果たすために世界中に進行した。それが約五年前。」
ギルドでは、依頼が殺到。一気に需要が高まり冒険者が増加した。もちろん、サポート系の職業も同じく増加傾向に移る。
だが、魔物も魔族も同じだった。
「さがしても、さがしても、見つからない勇者。ついに、八つ当たりで一つの村を壊した。そしたらどうだ?勇者が出てきたではないか。」
そしたら火が付いた。
【そうか。騒ぎが大きくなれば勇者を倒すチャンスが生まれる。】
そう思い、魔族は知恵を用いて何度も何度も人里を襲った。だが、それはまだよかった。避難さえすれば人は無事。被害は村の中だけで収まるのだから。
「で、勇者だけじゃあ手が回らず各地域の光属性使いが派遣された。」
するとどうだ。強い幹部たちが次々と倒されていくではないか。知恵として各地に散らばったがいいが、強者が倒されればそれまで。
そこで、さらに考えた。勇者を孤立させるにはどうするか。
【光属性使いを倒せばいい。】
「それが、四年前から始まった。それで、主もその一人。狙われた。何度も何度も。それが妙に戦略高くて、調べてみたらどうだ。バックに悪魔がいるじゃないか。」
光属性使いを倒すのは、魔物にとっては骨が折れる。みんながみんな、闇属性使いではないからだ。
だから、契約をした。
「勇者を倒せるまで、ともに戦ってくれ。その代わり、倒せたら、魔王にしてやると。で、それを噂で聞いた人間が、”神が復活する”と謳い動き出す。魔物は守れ、勇者を殺せ。それが現状。」
ノロはゆっくり息を吸う。
「で、明らかに戦力差がある。あの悪魔は俺が対応する。だが、まだ幹部は何人か残っている。人間も加わっているから取り返しがつかなくなった。最悪、千年前の戦争の繰り返しだ。」
その言葉を聞いた、使用人の手が止まる。千年前はちょうど彼らも体験したことがあるのだろう。シオンだけが知らない。争いとは、戦いとはいったい何を求めて何を差し出し、行われるのかを。




