第十六話 終わる戦い
シオンはノロによって救出され、残りの敵を倒しに向かう記憶の管理者使用人一同。ノロは一人、シオンを守っている。まもなく、戦いが終わる。
外は、すでに敵の数が減ってきており静けさが出始めている。ようやく、警備隊の援軍が来たようだ。
それを見ていたマリーはむっとしながらぼやく。
「もー!ほんと遅い。」
だが、ここからは攻めれるという合図でもある。マリーは深くため息をつくと鎌を持ち上げた。
残りの敵はざっと見て数百。基本的に殺しこそしないものの、魔物は何体かは倒しているだろう。金髪の髪をなびかせ
ながらマリーは見据えた。
「とっとと、終わらせて甘いお菓子が食べたいよ。」
そんなふうにぼやきながら走り出した。早く終わらせるために、それより被害を減らすために。
先ほどまでほぼ同じ勢力だったはずが、一気に記憶の管理者側が優勢になっていった。
「ねえ。マリーちゃん。これ使ってもいい?」
「ん?なーにキュラく……。もー、また新しいの作ったの?最初に出してよその得物。」
「倉庫に取りに行ってた。第二群が引いたときに。」
そういってマリーに見せたのは、ミニガンのような魔銃だ。だが、殺傷能力はなく、魔法の球を大量に打つように魔改造されている。
「いいよ。重症にならない程度に手加減しなよ?」
「はーい。」
その場にひざまずいてミニガンを構えた。マリーは走るのをやめて、近くに寄り添う。固定型の銃は狙われやすいというのをしっかり把握しているのだろう。
「キュラ君。何魔法打つの?」
マリーが尋ねていると、遠くからブルーが走ってきた。彼女は眉を顰める。
キュラはのんびりしながらいう。
「今ルーくん呼んだ~。」
「もー。ルーくんの魔法、特別だから見せたくないんだけど。」
特別というのはきっと氷属性魔法のことだろうか。むっと不機嫌そうにしている間に、ブルーがやってきた。
「なんだ、キュラ。こっち来てって……あ?」
キュラはにこっと微笑み、トントンとミニガンをたたく。
「ここに、ルーくんの魔法込めてくれない?」
「はあ?お前も使えるだろ、氷魔法。」
「ルーくんの性能いいから。」
ブルーはため息をつく。先ほど、アヤメにも氷の球を生成してぶん投げさせたというのに、今度は見たこともない銃に使わなきゃいけないのかと。
「……ポーションくれ。」
「もちろん。」
キュラは一杯分の魔力量を回復するポーションをブルーに手を渡した。ポンというかわいらしい音を出しながら、栓を開ける。
ごくごくと、ポーションを飲むブルーを二人は見守っていた。
「……甘いな、相変わらず。」
文句を垂れながら、手袋を外しキュラの武器に手をかざす。すると、キラキラと氷の粒が装填され始めた。
「ポーションってシロップみたいでおいしいよね。」
「おい、そんなこと話している暇はない。アイカから聞いたろ?シオン様に接触した敵がいる以上、油断ならないんだ。」
「はいはーい。」
まるで反省していないようにも見えるが、実際彼らは知っている。連れ去られたらそこで終了。自分たちは失格印をぶら下げながら生活しなくてはいけない。むろん、取り返してからも続く。
だから、別に深く気にしない。気にしすぎればつらくなるから。そしてそのために連れ去られないように努力する。この不老不死という体を使って。
「じゃあ、うつよー!」
キュラがそう合図すると、二人はこくりとうなずいた。残り数百名の敵を一掃するらしい。
そして次の瞬間。
激しい音とともに、数先発の氷の球が発射された。流れ星のような挙動で、薙ぎ払うように左右に流れていく。遠くからも、近くからでもその光景はすさまじいことがわかるだろう。
何百といた勢力が、氷のたまに打たれて戦闘不能に陥っている。その証拠に、みるみる敵軍が沈んでいくのがわかるだろう。そんな状況に陥らせていた、三人は言葉を失っていた。こんな威力があるとは思わなかったのだろう。
「わお。」
「作った本人が驚くな。」
ごもっともの話である。
数分後。敵軍の動きが止まり、ようやく襲撃が終わった。警備隊が襲撃者の拘束、客の安全確保をしてくれたようだ。記憶の管理者を支える使用人たちはみんな主人のもとに帰っていく。
「シオン様!!」
皆が声をそろえて秘密部屋にやってくると、ようやく目を覚ましたシオンがそこにいた。だが、光属性の体である彼に闇属性はかなり応えたのかぐったりしていた。
「皆様……よくぞ、ご無事で。」
「よかった……主様。」
ノロはやや気まずそうにそこにいる。みんなの雰囲気にまだついていけないようだ。
使用人らがノロに深々と頭を下げる。
「ノロ様。記憶の管理者をお守りしてくださり、ありがとうございました。」
「いや、その……はい。」
お礼を言われる筋合いもないという感じだが、さすがに受け止めたようだ。眉をひそめて、そっぽを向いている。
「それで、ノロ殿。ここに来たということはシオン殿に何か用事だったかな?」
「ええ、はい。ただ、襲撃されているとは知らず、救えてよかったです。」
ノロも、もとはといえばシオンの使い魔だった。今はどうかは本人にしかわからないが同じ主人に仕える身としてこの悪魔との関係をつなぐのは大事だろう。
何はともあれ、シオンはこうしてここにいる。無事とは言えないが、最小限の被害にとどまらせることができた。話はそれからである。




