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第十五話 古き友人

 やってきた男性はふらりと姿勢を低くする。侵入者はナイフを構えた。


「なんだ。やる気か?」

「いいや。そうじゃない。主を助けるんだ。」


 使用人でもないはずのその男性はシオンが閉じ込められている闇の塊をぎろりと睨む。次の瞬間。


 どこから取り出したかもわからない赤い槍を振りかざした。侵入者は特に警戒していなかった。闇属性魔法は物理は効かない。あざ笑う準備をしていたが、それは即座に裏切られる結果となった。


 パリン。ガラスが割れるような音ともに、闇属性魔法で作られたその塊からシオンが転がり落ちてきた。


 男性はそれを受け止め後ずさる。シオンは意識を手放しているが無事だった。


 侵入者は目を丸く、口をあんぐりと空けている。


「は?いや、闇属性は物理攻撃意味ないはずだろ。どういう手品だ!?」


 ノロは静かにシオンを抱えながら起き上がると静かに言う。


「は。闇属性使いが俺の正体に気づかないなんて、間抜けだな。とりあえず、主はもう返してもらった。お前は用なしだ。帰れ。」


 冷たく言い放つ。その目はきらりと光っていた。侵入者は馬鹿にされていると気づいたのか、怒りに任せてナイフを振り上げる。


 守るものがあると人は弱くなる。まあ、相手が人間だとは確信していないのだが。


 男性はシオンを守りながら槍でそのナイフを軽く突き返す。力のかけ方は丁寧で、隙がない。相当戦場慣れをしている。


「三度目はない。立ち去れ。」


 低く、どす黒い声を漏らす。流石に侵入者はたじろいだ。一人では分が悪いと思ったのだろう。「覚えてろ!」という捨て台詞を吐きながら立ち去った。その男性はふっと笑う。


「これだから人間は……。おい、主?大丈夫?」


 まだ、シオンは眉間にしわを寄せながらうなされているようだ。男性はクスッと笑う。


「使用人さんが来るまでは俺が守るよ。主。遅くなってごめん。」


 その男性の正体は、もうお分かりだろう。シオンの夢の中で懸命に主を守るために同族に猛威を振るった悪魔。”ノロ”本人である。




 一方そのころ。外は地獄だった。絶え間なく降り注ぐ火の矢を青髪の使用人ブルーが必死に魔法で消している。その指先は冷たく凍えているようで、水色に包まれていた。


「さっきは大群だったってのに、今度は矢か。」


 ブルーの近くにいたアヤメは静かに言う。

「何か別の狙いがあるかもしれない。気を付けよう。」

 走って戻ってきた赤髪の使用人アイカが言う。

「シオン様の様子を見てまいります。館内に数名、もぐりこんだ可能性がありますので。」


 アイカが手短に伝えると、ブルーとアヤメはこくりとうなずいた。


「ああ、頼む。」

「頼んだぞ。わが妹。」


 アイカはこくりとうなずくと、言葉を交わさずに走り出す。ブルーたちはその背中をチラ見しながら、再度攻撃を防ぐ。


「アヤメさん、そろそろでかいのお願いします。」

「了解、ブルー殿。」


 すると、背中に背負っていた大きなハンマーを構えた。ブルーはそれを横目で確認すると、手の内に魔法を込め始める。周囲の温度がニ・三度、いやそれ以上下がった気がした。


 ブルーの手のひら数倍のサイズの氷玉がそっとアヤメの目の前に流れ着く。アヤメはハンマーを遠心力を使いながら使いこなして、氷玉を打った。容赦のかけらもない、攻撃である。数秒後にうわあ、という声が聞こえた気がした。


「ナイスショット。」

「ブルー殿もさすがの氷捌きだ。」

 そんな連携プレイをしながら、侵入者をどんどんと撃退していく。少人数だが、それなりに耐えている。主が何かに巻き込まれていたとは露知らず。




 館内に戻ったアイカは残党を片付けながら、シオンのいる部屋にたどり着く。コンコンと二度ノックをした。


「開けます。シオン様。」


 ガチャリと扉を開けると、直ぐ異変に気付くだろう。わずかな闇属性魔法の残骸。知らぬ誰かの身に横たわっている主の姿。そして、その知らないものは両手を上げて危害を加えないということを示している。


 アイカはごくりと息をのんだ。


「シオン様を助けてくださったんですか?」

「……え。俺の正体から聞くんじゃないんですか?」


 アイカはまだだれかは知らぬが、ノロはアイカの言葉をかみしめながら困惑していた。ふつうなら”誰だ?”とか”何をしたんだ?”と怒りに震えあがるだろう。


 だが、目の前の使用人は冷静だった。


「……見ればわかります。私たちの目の届かぬ場所でなにか起きたのでしょう?そして今、行動で示してくださっている。それを信じます。助けてくださりありがとうございました。」


 戦場だということも忘れ、アイカは土下座をする勢いで顔を下げる。主がもしかしたら奪われる可能性があったかも知れないと本能が理解していた。


 目の前にいるのは、シオンにとっても不老不死で生きがいをあまり感じない彼らにとっても命の恩人なのだ。


 ノロは慌てて首を振る。


「頭を上げてください!俺は、そんな感謝されるような人……いや、悪魔じゃあ……。」


 アイカは瞬きした。”悪魔”それを聞き逃すわけにはいかない。


「……もしかして、”ノロ”という悪魔ですか?」

「え?はい、そうだが。」


 アイカはなるほどといわんばかりにうなずき、再度頭を下げる。


「ノロ様。あと数分後に警備隊がまいります。それまで、シオン様のそばにいてくださりませんか?私たちは、一般客を手一杯でした。貴方様なら信頼に値します。むしろ、あなたでなければシオン様を守り抜けない、そう判断します。」


 アイカは、恥など名誉などいらない。いるとすれば必勝のみ。使えるものは使う。それは他の使用人も同様だった。


 ノロはその期待のまなざしと、それから悪魔にお願いするということの重要性を彼らが理解しているのかといったことを考えながら笑みをこぼした。


 シオンを、いや主を守れるなら自分だって何でもする。その覚悟でここにいる。


「分かった。俺に任せろ。」

「ありがとうございます。」


 こうして、記憶の管理者再度に一人の悪魔が加わった。それが何を意味するかはもう誰もがわかっているだろう。

今日、5月6日は記憶の管理者投稿記念日2か月目です。いつも、見てくださり、本当にありがとうございます!前回告知していたアヤメの設定の前に、この作品を作るきっかけになった内容を少しだけご紹介します。別に見なくてもシナリオに何の影響もないのでご安心ください。


作ったきっかけは、自分自身がかなりの飽き性だったというところから始まります。すでに三つの作品を掛け持ちしながら活動をしているのでもうお分かりの人もいるかもしれません。数年前までキャラクターと設定を決めては、新しいものを作り続けていました。そこで、今までの創作キャラを一つの作品にまとめたら、いい作品が作れるのではと考えたわけです。その結果、この作品は一度爆発的にキャラクターが増えてしまい、2・3度シナリオを変えて現在の設定に落ち着きました。

 

だから何だといわれたらどう言い返すこともできませんが、満足しています。おかげで、設定を凝ることの大切さを知ることができたと思います。



それでは、今度こそ昨日誕生日だったアヤメの軽い設定をお披露目します。キュラの時も言いましたが、シナリオにあまり関係しないかもしれません。それから、自分で考えたい方、若干のネタバレがあるかもしれないのでそれが苦手な方はスルーしてください。それでは、ご覧ください。











いつもの監視塔の上で、謎のケーキを模した帽子をかぶりながら大好物のガトーショコラを頬張っている。


「うん。いつもながらブルー殿の作るケーキはおいしいな。」


そういいながら監視を続けているのは、誕生日のアヤメ・ネリネだ。不老不死になる前は、人間の中で最年長。そして一番責任感のある女性である。


一番気になるであろう、右目のやけどの跡。それには訳がある。

数千年前。まだ、彼女らが成人していない幼いころの話。家が燃えた。アヤメはわからなかった。何が原因で火事になったのか。そしてなぜ誰も助けに来ないのか。まだ、言葉もあまり話せないアイカをかばいながら外へ出る。長年過ごした彼女らの家は燃え朽ちた。


「そんな……。」


アヤメがそう言葉を漏らしたとき、火の粉が飛んできた。アイカめがけて。それをかばってできたのだ。いや、そもそも出てくるときにかすっていたのかもしれない。おかげでアイカは無傷。アヤメだけが痛い思いをした。


それでよかったはずだった。


アヤメは孤児院に行ったとき、ひどく残酷なことを言われた。自分の両親は地元の中でも類を見ないほど有名な研究員。彼らが死んだのに、何もない子供らだけ生き残って、今度は引き取れと?


どうやら、両親は孤児院に多額の金額を支給していたらしい。その支給元が潰れたと同義なら入れる気はないといったのだ。アヤメは絶望した。自分はまだしも、妹のアイカはまだ言葉も話せない赤ん坊。それを全財産を燃やしたアヤメがどうにかできる話ではなかった。


悔しさを胸に、彼女は冒険をしながら生き残った。人はもう信じるものかと思いながら。


そして数年後。すっかり大人になった彼女らに、初代記憶の管理者は声をかけた。

「僕と一緒に働いてくれないかな。君たちはまだ若い。その身で冒険し続けていたらいつか、体がもたなくなるよ。」

それは確かにその通りだった。お金は一日の食事代で消えてしまう。アイカも言葉や人間として生きるための基礎知識を学んだが、普通の生活を知らない。覚えていない。このまま二人ならともに朽ち果てる運命だ。


「いいのか?何もできないかもしれない。」


アヤメは静かに尋ねる。人は信用ならない。希望を見せてつぶす気だろう。そう本気で思っていた。でも、なぜだがその言葉を信じたいと思う自分がいた。アイカはにこっと微笑んでアヤメに言う。


「試すぐらいなら、いいのでは?」

「だが……」


初代記憶の管理者はこくりとうなずく。

「うん。試すのももちろんいいよ。一週間?一か月?それで合わなかったら、言ってくれ。僕は平気だ。別の人を探すよ。まあ、でも僕の見立てだと君たちはきらりと輝く宝石のようで手放したくないけど。」

その言葉を信じたのか、あるいはアイカの言葉に諭されたのかは定かではない。でも、知ることになる。この選択が正しかったと。


そして現在は、あまり人と関わらない監視塔で館内の安全を守っている。そして主や関係者、同業者には声を駆けれるぐらいには回復していた。まだ、初対面は緊張するらしいが。


シオンに対しては、どこか同情の目線を向けている。何もわからない人間はさぞ辛いだろうとアイカを見ていた自分が知っている。何度聞かれても両親のことを話したことはなかった。そしてこれからも話す気はない。


アヤメはシオンにとって、人を信じる頼ることの大切さを知るきっかけになるかもしれない。まあ、シオンはもう理解しているかもしれないが。








いかがだったでしょうか。次に近い誕生日がアイカです。その日になりましたらまたこうして書きますのでお楽しみに!長文失礼しました。

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