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第十話 神との対談

光殺し事件の協力者になってもいいのかという話を、使用人アヤメが記憶の神ニウムに直接訪ねることにした。同室にはアイカも待機しており、緊迫した雰囲気が漂っている。

 アヤメは水晶に触れて記憶の神ニウムに直接連絡を飛ばした。カチカチと壁に掛けられている時計の音が部屋の中に落ちていく。アヤメは慣れているのか緊張はしていない。だが、アイカは違った。


 自分が話すわけでも、連絡を取るわけでもない。だが、目を伏せていた。以前連絡をした際に、記憶の神ニウムが伝えてくれなかったことが理由だろうか。少しだけ心の中にぽっかりと穴が開いているようだった。


 数分後。淡い光が一段と光り、夜間のアヤメの部屋を照らす。連絡が取れたようだ。水晶の中から声が聞こえる。


「……アヤメか。何の用だ?」


 アヤメは小さくうなずくと、アイカの書いた紙を参考にして口を開いた。


「お久しぶりです。ニウム様。少し伺いしたいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」

 静かに彼女の声が漏れる。相手は少し黙った後いう。


「光殺し事件の件か?こちらも把握済みだ続けろ。」

「さすがでございます。ニウム様。」

「……ほめなくてよい。」


 記憶の神ニウムは、耳を傾けているようだ。アヤメはクスッと笑うと話を続けた。おかしな光景だ。神を相手にして平然とした態度を続けている。

 なんなら、神様にあきれられているようだ。水晶越しにため息の音が聞こえる。

 アヤメはアイカのメモを頼りに簡潔に伝えた。ミツバのギルドに協力してほしいということ。それから、その事件の続きがまもなく始まるかもしれないということ。すべて、聞いた情報を紡いでいく。

「……それで、私たちはその作戦に乗るべきだと考えた。理由はたった一つ。その事件が主殿の記憶喪失の原因の一つだからだ。ここ最近、主殿が記憶をぶり返して思い出している。」

 いつの間にか敬語が取れ、むき出しのアヤメがそこにいる。いつも、監視塔の上でみんなを見ることしかできなかった。

 睡眠中、悪夢にうなされているシオンの姿を何度見たことか。それを他の使用人に伝えるとき、どんな表情をしていただろうか。自分はただ観察して、報告して侵入者を追い払うことしかできない。それが役目だから。


 だからこそ、今回のリンからの提案は喉から手が出るほど魅力的だった。


 やっと主を自分の手で守れる。


 そんな代物だった。アヤメは最後につぶやいた。

「先代の主殿もそれが望みだったはずだ。……そうだろう?ニウム様。私たちに何も教えないのにもわけがあるはずだ。」

 先代の記憶の管理者。十六代目。本来なら次の主が決まった瞬間、受け渡し式があるはずだ。前の仕事はどうだったかとか、これから頑張ってほしいという声をかけたり。

 というか、そもそも。シオンがここに来る前に前任者がいれば主になることはなかったのだ。


 記憶を守るために記憶の管理者になったのだから。


 アヤメは静かに言う。

「ニウム様。私たちにも手伝わせてください。お願いします。もう、見るだけなんて嫌なんです。」

「……。」

 ニウムは黙った。




 同時刻。水晶の向こうでニウムは唇をかんでいる。淡い紫色、どちらかと言うと桃色の髪を垂らしながら白い瞳を細めていた。

「君たちには何度も、何度もつらい思いをさせてきた。まずは永遠という命を与えたことだ。」

 水晶には乗らないほどの小さな声でつぶやく。

「妾だって知らない。過去を見れても未来は見えぬ。正直このように対応したのかさえ、正しいかはわからぬ。そこまで万能だったらとっくに行っておる。」

 ニウムは深くため息を吐きながら、水晶を見つめた。千年前から一度たりとも顔を合わせていない。使用人たちは怒っているだろうか。覚えているだろうか。そもそも慕っているのだろうかと疑問が次々とあふれてくる。


 ニウムは深呼吸するとゆっくり水晶に向けて指示を出した。

「……わかった。ただし。シオン殿を失うようなことがあったら許さぬ。それだけは忘れるな。」

 水晶越しに「はい。」と即座に返事が聞こえた。ニウムはこくりとうなずき最後の言葉をかける。

「ではそのとおりに頼む。」

「はい。失礼します。また何かありましたら連絡しますね。」

 ぷつりと切れるように、すぅっと光が消えていく。ニウムは白い目をそちらに向けながら背もたれに寄りかかった。

「妾が迷ってどうする。これじゃあ、神失格だ。」

 小柄な神ニウムは目を手でふさぎ、天を仰ぐ。神ですら、この動きを把握しきれていないようだ。




 通信を終えたアヤメは深く椅子に座ると、小さく微笑んでアイカを見た。

「……まさか、許可なさってくれるとは思わなかったな。」

「ええ。そうですね。てっきり……断られると。」

 アヤメはゆっくり立ち上がると伸びをした。通信時間やく三十分。だが相手は神だ。平気そうに見えたのは気の所為だったのかもしれない。


 アイカはそんな姉の姿をじっと見て胸に手を当てた。自分はビクビクしてばかりだった。これは良くないとわかっている。だからこそ、もっと頑張らなければならないと実感した。

「アヤ姉さま。お疲れ様でした。今夜はごゆっくりお休みください。」

 彼女の言葉にアヤメは小さく頷いた。

「ああ。」

 彼らの次の目標が決まった。地道に、確かにシオンの記憶を、アスターの記憶を知る手がかりをつかみ始めている。


 今日も一日が終わった。

二度ほど告知していましたが、こちらの作品を一旦休止させていただきます。楽しみにしている方、申し訳ありません。その間に、貯めていた別の作品を見てくださると幸いです。明日の20時から投稿されるのでお楽しみに。

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