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第十一話 彼らの作戦会議

記憶の神ニウムに許可をもらったギルドとの連携。使用人たちで集い、今後のことについて話し合うことにした。

 次の日。営業を終えた使用人たちは、会議室に集っていた。本来ならば記憶の管理者であるシオンも来るべきなのだが、今日に限って使用人たちだけで集っている。


 青髪の使用人ブルーの入れた紅茶が湯気を立てて静かにたたずむ中、ほかは資料作りしていた。

「年間計画って、どこにあるっけ?」

 金髪の使用人マリーが尋ねると、銀髪の使用人キュラがぺらぺらと紙を揺らした。


「これかな?」

「そうそうそれ!ありがとキュラ君!」


 会議室の机に置くなり、また何かを取りにマリーは廊下に駆け出した。みんなせわしなく動いている。

 しばらく席に座っていたアヤメがすっと立ち上がった。


「私は夜間警備のほうに行くよ。一応水晶で話は聞いているからよろしくね。」

 アイカが不安そうに言う。

「ちゃんと休んでくださいね、アヤ姉さま。」

「ああ。もちろん。朝には休むよ。」


 ぽんとアイカの頭に手を置いてから去っていく。昨晩神と対話したとは思えないほどあっさりしていた。


 アイカはそれを見送りつつ、残りのメンバーに目線を送った。

「二十時になりましたら、開始しましょう。」

『はい。』

 みんな資料や、軽食を持ち合わせて席に着く。四人がここに集った。見慣れた光景だ。アヤメだけがこの場にいないのもいつものことだ。



 カチカチと時計の針が回りようやく短い針が八の数字を指した。緊張の空気があたりに流れている。カチカチという時計の音とみんなの呼吸音、それだけが聞こえるだろう。

 その沈黙を破るように、アイカが口を開いた。


「会議を始めます。」


 みんなの背筋が若干伸びた気がする。アイカ自身も緊張からかまつげが震えていた。


「まずは、ミツバとの合同活動について話し合いましょう。賛成か、反対か。記憶の神ニウム様より許可は得ております。」

 その言葉を受けて、ブルーが手を上げた。

「質問がある。」

「はい。何でしょうか?」

 ブルーは資料をめくりながら静かに尋ねる。


「俺たちも参加するということだが、この館の警備は何人やるんだ?」

「確かにそうだね。」


 マリーも頬杖をつきながら、のんびり相槌をした。使用人は全員で五人。全員が出てしまうと、逆にこの館が危険になる。それを指摘したのだろう。アイカは資料をめくりながら静かに言った。

「私たちは、特に守らなくてはいけないものは館もそうですが、シオン様本人です。アスター様も護衛が必要となるとおもわれます。よって三人がシオン様に、二人がアスター様の護衛に動くことになると思います。」

「なるほど……。」

 ブルーは顎に手を当てて考える。主人に対して三人。残りアスターを守るのに二人。明らかに人数不利だ。みんなその言葉を飲み込むように、再度沈黙に包まれる。もともと少人数での経営だ。ふと、キュラが手を上げて言う。


「ねー。これ、アスター様の護衛三人のほうがいいと思う。」


 予想外の発言に、みんなの視線が彼に刺さった。キュラはのんびり机に伏せながら前髪をいじり始める。それからぽつりぽつりと言葉を紡いだ。


「だって、シオン様にはほかの光属性の仲間がついてるんでしょ?それにシオン様も戦えるし。もしもの時はルーくんの転移魔法で館に戻せばいいじゃん。」

「まてまて。そんな簡単なものじゃないぞ。」


 ブルーが首をふって否定する。確かにブルーは”転移魔法”を扱えるらしい。だが、そんな特定の人物を一瞬の判断で転移できるとは限らないのだ。それに、転移した先が安全とは限らない。


「まあ、一理あるが現実的に厳しいぞ。」

「ふーん、そっか。」


 キュラはあきらめたようにこくりとうなずく。みんな安堵していた。だが、そういう戦略も可能性として含められるだろう。


 そこから、何分も話し合いが進んだ。


「……ということで、賛成か反対か投票しましょう。もちろん互いの意見を尊重して、どちらになっても後悔しないようにしてください。」

 アイカはみんなに目配せをしながら静かに言い放つ。みんな理解したというようにこくりとなずいた。答えはすでに決まっている。


「それじゃあ、まず、この作戦に反対の人。手を上げてください。」

 彼女は周囲を見渡した。たった四人という少人数だから一目でわかる。誰も上げていなかった。


 呼吸を整えてもう一度尋ねる。

「では、賛成の人。」

 スッと布が切れる音が聞こえながら、みんなの手が同時に上がった。手のひらがアイカに向けられているようだ。

 アイカは小さく息を吐いてうなずく。


「多数決の結果、この作戦に加入することが決定しました。ご協力ありがとうございます。」


 深々とお辞儀をすると、パチパチと乾いた拍手の音が聞こえた。少人数でも心は一つなのかもしれない。ただ、決まったという事実がこの会議室に溶けていった。




 そこからはスケジュールを組んでいく。黒板に今まで組んでいた日程表を書き込んでいた。書記はキュラのようだ。アイカは、ちょうど六月あたりに指をさしながら、みんなに声をかける。


「予定に組まれていたのは、帰還祭とそれから外部出張でしたが、帰還祭はこのまま実行。出張に関しては延期可能とあったので、この期間に作戦にかかわる方々との顔合わせをしたいと思います。何か意見がある人はいますか?」

「特にないでーす!」


 マリーが元気いっぱいに返事をした。キュラはそれを聞いて”マリー、特にない”と丁寧に文字を刻む。そこまでしなくてもいいのだろうけど。アイカはそれを横目で見ながらうなずいた。


「あとは、一か月前になったら具体的な話し合いをしましょう。今日の会議はここまでにします。夜も遅いですし。」


 時刻を見るとすでに二時間が経過していた。時計の針は十時を指している。お菓子やら飲み物やら、資料の片づけをしながら彼らは覚悟をひそかに決めていた。


 必ず主をお守りすると。

 そして、必ずこの戦いを完遂させると。

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