第59話 驚きしか出てこない地獄旅part2〜ヌメッと沼地とメラッと灼熱地獄の旅〜
「次の階層ですぜ」
「ほぉ。次の階層は沼地なんだな」
カブトクラブの守っていた大きな穴を抜けた先には、浅くぬまっとした水の多い沼地だった。
「それじゃいきましょうか」
「ちょっと待ってくれ」
先程の戦い…とゆうより狩りのことが軽くトラウマになっているタトマが沼地を進もうとした矢先、じゅんきに止められた。
「どうしたんですかい?」
「こんなにもぬちゃっとしてる所…歩きたくはないな」
「…はぁ。でもここを通らないと進めませんよ?」
「そうなんだよなぁ」
そう言いながらじゅんきは指でつんつんと沼地をつつく。
「…どうするんですか?諦めて歩くしかないですよ?」
沼地の沼をつんつんと、指についた沼の泥などを手を振って払いのけた後、近くにあった木の棒で奥の方をつつく。そして、何かを閃いたかのような顔でタトマのある方を振り返った。
「…ふっふっふ。我に策あり秘策あり」
「…そうなんですね」
自信満々に木の棒で沼をつつきながら言う側から見れば幼稚園生のようなじゅんきと、じゅんきのよくわからない行動やさっきまでの光景から、もう何が何だかわからなくなってきて全てを投げやりにしかけているタトマ。投げやりになりかけているタトマのことなんて気にも止めていないじゅんきはすっと自分の収納魔法からとあるものを取り出した。
「…こ、これは…なに」
「これはPRVと言う俺が造った車ってやつさ!俺の造ったものさ!これで沼地を超えるぜ。さぁ!乗れ!」
「…あっ…うん」
見たことない歪な魔物、見たことない変な形をした鉄の塊、それらを従えているかつ、王の力を継承していて、自身よりもはるかに強い男、そんな男の行動一つ一つを見てもタトマはもう驚かなくなった。驚いたら負けと言わんばかりに。
そんな男が満面の笑みで乗り込んだ鉄の塊に、タトマも乗り込む。乗り込み、ドアが閉まると、じゅんきはPRVはエンジンをかけ、走り出す。PRVはぬちゃっとしている沼地をなんともないように進み出したのだった。
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「この車ってやつ、中々に快適ですね」
「そうだろ?こいつは汚れちまうが…自身はよっぽどのことがない限り汚れないし、サクサクと進める素晴らしいものだ!」
じゅんきの予想していた通り、沼地はやはりぬちゃっとした池でできており、PRVのタイヤが偶に「ギュルン!」と言いながら空転している時があるものの、さくさくとじゅんきたちは汚れることなく進んでいっている。
…はずだった。
「…あれ」
「…王…混さん?進んでませんよ」
じゅんきがPRVの素晴らしさを自慢しまくっていた最中、突然として、PRVは全く進まなくなってしまった。「ゴゴゴゴ」というタイヤ音を立てながらエンジンのアクセルを入れている時の音を響かせているので、エンジン等の不調ではない。
…そうなると、車が動かなくなった原因は一つだけである。
じゅんきは恐る恐るとドアを開けた。…案の定と言うべきか、タイヤが半分以上沼に浸かっていた。
「…スタックしてもうた」
「すたっ…なんですか?」
何がなんだかよくわかっていないタトマと、今起きていることを理解しているから凄くめんどくさいことになっているとため息をつくじゅんき。
そんな二人が共に思っていることがあった。
「「この状況。まずくないか?」」
刹那、お決まりの展開のように、沼地の水がゆらゆらと不気味に動いたと思った瞬間。「ドン!」という音と共に強い衝撃がじゅんきたちを襲ったと思えば、ぐるぐると自分たちが見ている光景が回り出した。
じゅんきは自身の見ているものがぐるぐると回転している光景を見て急いで開けていたドアを閉めた。
車のドアを閉めた直後、「ドッシャーン!」というもの凄い音と共に、二人は強い衝撃を感じた。見ていた世界が回っておらず、先程まで自分たちがいた場所を見ていた。
そして、その先程までいた場所からうにょうにょと気持ち悪い物体が蠢いているかと思えば、その場所の沼が山になるかのように蠢き出し、そこからなにかが出てきた。
突然の車大回転衝撃フィーバーを乗り越えたタトマは出てきたよくわからないものを見ながら大慌てで車を降りた。
「…王混さんも速く!速く降りて!!」
「…え?でもここ」
「沼地ですけど我慢して降りてきてください!」
タトマの焦り具合から只事ではないと感じ、じゅんきも急いで車から降りた。
…ぬちゃっと言いながら自分の履いている靴、着ている綺麗な服が一部が汚れたので、じゅんきの気分は最悪になった。
速く帰りたいと言う気持ちに包まれたじゅんきの目の前に、沼がゆっくりと落ちていったことで姿をあらわにした。
「うげぇ…」
「あれはスワンプスネーク。沼地の奥底に居て上を通った奴らを沼に引きずり込む凶悪な魔物です。ちなみにあいつは触れると痺れて動けなくなる強力な毒を吐きます」
何本もの顔に尻尾を持つヤマタノオロチのような怪物が現れた。当然だが、ヤマタノオロチのようなかっこよさ?的なものはなくヌメッとしていてうにょうにょと動く尻尾となを見てると単にきもいとしか言いようがない。
そんな中、尻尾の一つがじゅんきたちを捉え、まっすぐと向かってきた。沼地なので、いかんせん動き辛い。そうこうしている間にも尻尾は迫ってきて、そのまま…
じゅんき達の少し前にあったPRVを掴んだ。そしてそのままPRVはひょいっと持ち上げられ、投げ捨てられ、先程の時と同様に、くるくると回転して、そのままスワンプスネークの居る場所の近くに「ガッシャーン!」というもの凄い音を立てて落ちた。
沼地なので、先程同様、結構頑丈なPRVは凹んだりはしていないが、この行動が良くなかった。
「…愛車が…俺の愛車が…こっんのクソ蛇が!すり潰す!!呼出!ファストファフカース!開け!天精門!」
綺麗な鐘の音が鳴り響き、綺麗な門が現れ、扉が開かれる。天使の降臨かとも思える光景だが、中から出てきたのはエンジェル族の種族を持った化け物。タトマは固まった!
そして!じゅんき愛用の技呼出によって出てきた最初にして最強の合体獣カース。真ん中にカース、左右にアマミチュラアスとラグナオーガスがどしんと構える。すごく歪な光景が目の前で起きていることに慣れていたと思っていたタトマは、自分がこの歪な光景にまだまだ見慣れていないことを痛感した。
「お前ら!処刑執行!!やっちまいな!」
じゅんきの指示により、合体獣達は各々の戦法でスワンプスネークの討伐を開始した。
カースはご自慢の魔法を炸裂。あらゆる属性の魔法がスワンプスネークを襲う。魔法使いらしいですね。
魔法を潜ったりして避けようとしているスワンプスネークを潜らせないと持っている剣で尻尾などを刺し、そのまま怪力で空高くに投げ出させる。…エンジェル族らしくないですね。
高く投げ出されたことを逆手に取り、スワンプスネークは毒を吐く。
それをチュラアスが喰らい、逆に毒をお見舞いする。…エンジェル族とは思えません。
自身よりも遥かに強力な毒を浴びたこと、そしてその毒が自身にとって猛毒だったのか、スワンプスネークは叫び声をあげながら暴れ回る。
当たった部位は溶けていた。その部位を狙い、カースは火魔法を炸裂させる。溶けた部位から火が体の内部へと侵食したのか、毒ではなく火を吐きながら、止まらない火魔法にやられ、スワンプスネークは動かなくなった。
「あば…あばばばば」
タトマはそんなただの拷問でしかない光景を見て、自身のSAN値は完全にマイナスの域を達した。目の前の化け物達そして、その化け物を使役するじゅんきのことがすごく恐ろしく感じたタトマであった。
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「…熱っ!?…戻れ戻れ!」
真っ赤な灼熱。地獄らしい地獄へと辿り着いたじゅんき達。スワンプスネークを倒した後、魔法石の回収、そして、PRVの状態を確認し、PRVに大きな凹みもなにもなく、頑丈に作ったことを喜んだじゅんきだが、沼地の沼などが付着したことで、洗車は必須となった。3層へと行くところには奇跡的に近かった為、そのままPRVを収納した後に、今いる場所へとたどり着いたのである。
先程のぬちゃっとした沼でさえも蒸発するくらいの熱さだったので、じゅんきたちは急いで沼地とこの灼熱の間を結んでいる道に戻ってきていた。
「あの場所熱すぎないか?」
「あの場所は灼熱地獄。名前の通り熱い場所なんですが…」
キラキラとした目でタトマはじゅんきを見た。
「車!車出してくださいな!あの快適さなら楽々といけますぜ!」
「…無理だな」
じゅんきの一言に、タトマは絶句した。
「な、なんで!今こそ出番でしょ!」
「…この場所だからこそ使えない」
「…なんで」
「あの場所で動かし続けていたら、車の方が駄目になる。車内は車が動ける間なら丁度いい温度に保てるだろうが…車を動かしている物が死んだら終わりだ。一瞬で車の中は灼熱地獄よりも熱い空間へと変貌するぞ?」
「…なんと…」
じゅんきの旅を支えてくれている相棒の車達。ガソリンでも電気でもなく、運転者の魔力で動いているという環境になんとも優しい車なのだが、ガソリン車と同様に、エンジン内は当然魔力を車を動かすエネルギーに変換し続けている為、結構な熱を持つ。普段であればなんてことはないのだが、こういった熱すぎる空間で走らせていると、エンジンが完全にオーバーヒートしてしまい、最悪爆発してしまう恐れがあるのだ。
「てゆうかお前はどうやってここを切り抜けたんだよ…」
「前はこんなにも熱くなかったんです。前も熱かったですが、こんなにも立ち入らなくなるくらいの熱さではなかったんですよ」
「なにかしらの異常事態ってわけかぁ…旅を再開させたいのに、これは困るな」
なにかここを渡るためのいい方法はないかを探していると、とあることをじゅんきは思いついた。
「呼出!ファストファフカース!」
何かを思いついたかのような顔でカースを呼び出した。本日2度目の登場である。
「カース!水魔法だ!ありったけ冷たくしろ!」
カースはうむと頷くや否や、水を展開した。滴る水滴がめちゃくちゃに冷たい。
「強引に突っ切るぞ」
「な、なんとも強引な」
どういった感じでこんなに冷たい水を作り出しているのかは二人はわからないが、とりあえずなんとかなりそうなので、このままこの灼熱地獄を乗り切ることにしたのだった。
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「さっきよりかは遥かにましだが…それでも熱いですね」
「まぁ、仕方ないさ」
青い狸(猫)が出てくるじゅんきの世界での有名な某国民的アニメに出てきた雨が降る傘のような感じのような水魔法で作られた水の下を歩くじゅんきたち。
森の時からそうだったが、ダンジョン…ではないが、こういう所でのお決まりの雑魚敵というのに遭遇していないことに、じゅんきは気づいた。
「なぁ、ここってなんでボスっぽい魔物以外何もいないんだよ」
「…多くの魔物や、ここに落とされた奴らのほとんどが死ぬからですね」
タトマは語り始めた。じゅんきがボコボコにしていた魔物達もオーライの世界では凶悪で手がつけられない魔物達ばかり。そんな魔物達の生息する中に送り込まれるのだから、大抵の魔物やここに来させられた言葉を話せる奴らの殆どはその魔物に殺されるか、何処かで隠れ住み、自分のいつ来るかもわからない死を待つのみである。
この空間では何故か腹が減らず、水分を取る必要性もわかないという不思議な空間である。流石は深淵地獄と言われるだけのことはある。全てが未知で興味深い。じゅんきはそう思った。
タトマはそんな中でも必死に生き、ここを出るための方法を探しているという中で、じゅんきと出会ったのだと、語った。
「…すごくわかりやすい説明と出会いの経路をありがとう。早速で悪いけどあれはなに?」
「いいってこと…で…ふぅ」
タトマは顔が青ざめ、腰が砕けたようにへなっと熱い地面に座り込み、一瞬で飛び上がるというわけのわからない行動をとった。
「あれは!あれは!この階層の最強の魔物!マグマフロッグです!」
「ほへぇ。カース?やってまいなさい」
マグマフロッグはけたたましい鳴き声をあげるとともに、下をびよーんとこちらに向かって伸ばしてきた。おそらく食べるつもりなのだろう。
カースがじゅんきたちの頭上に設置していた水を取っ払い、ありったけの力を込めて一発、どでかい水を勢いよくマグマフロッグの口に向かって一直線に飛ばした。
その水を勢いよく口にしたフロッグは驚きの余り口を閉じて飲み込む。
すると、フロッグは声にならない叫びをあげながらジュワーっと言わせながら、爆発四散した。酷かったし、蒸気がすごく熱かった。
「………終わった?終わったな!楽勝だったなたと…ま?」
「…あ、あが、あががが」
「…あっ」
さっきまでの地獄のような熱さはなくなったものの、フロッグが蒸発した蒸気などをモロに喰らったタトマは勿論熱い空気に耐性なんてないので、皮膚が「見せられないよ!」状態になっていた。じゅんきは大慌てでカースに治療するように指示したのだった。
まだまだ波乱の深淵地獄の旅はつづく。




