第58話 驚きしかでてこない地獄旅part1
「たった一つだけ、ここから出る方法がある」
「ど、どんな方法だぁ!」
森を歩きながら、タトマからここから出られる方法があると聞き、じゅんきの目は輝きに満ちた。
「…この深淵地獄の先にいるボスを倒すことだ」
異世界恒例のダンジョン。前の無限ダンジョンみたいだなとじゅんきは思った。
「…噂で聞いただけだが、ここのボスは滅茶苦茶に強いって言われている。噂では十二の王たちと同等とかそれ以上の難しさだとな」
「…それなら平気だな!」
「…それってどういう」
「こういうことさ!形態変化!天命王ホナークル!」
先程まで何の変哲もない人間だったじゅんきの体からは翼が生えたりした。じゅんきのオリジナル技にして最強の技、王達の力を自身の体に同化させ、ステータスなどが向上したり、その王の使っていた技を全て使える様になるなどの誰でも(技はじゅんきのオリジナルなので、実質的にはじゅんきだけしか使えない)簡単最強なりきりセットみたいなものである。
「に、にぃちゃん!?これは…天命王か!?」
「そうだぜ」
「…たまげたなぁ!まさか生きている内に王の力の継承者に出会えるとはな!しかも力をこんなにも使いこなす奴にな!…これなら、いけるかとしれないな!」
ぱぁっと大男の表情が明るくなった。
「…俺!タトマ・ビグマっていうんだ!にぃちゃん!名前は?」
「俺は王混 じゅんきと言う」
「王混 じゅんき…変わった名前だが、いい名前だ!今から俺がここのボスまでの道のりを案内してやるぜ!俺はここから出ようとした時にここを色々と冒険したからな!」
「…頼もしいな。助かるよ」
「よっしゃ!着いてこい!」
大男、タトマに連れられ、じゅんきは森を進むのだった。
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「そういえば、じゅんきは何故ここに来たんだ?見た感じ、罪人って感じじゃないが」
「俺?なんか、俺の恋人達とホテルで一泊したら捕まってここに来た」
「…は?何かの冗談か?」
「いや?」
「聞いたことないぞ、恋人とホテルで一泊しただけでここにくるとか」
「…そうだろうな。…おそらくだが、俺は獣王と、天命王の力を受け継いでいるんだ。なんか将軍に継承の剣?とかそんなもんで切りつけられてここにこさせられたな。俺には多分意味ないのに」
「成程な…その力を狙ってってことか」
「あと多分俺の大切な恋人達も狙ってた。許すまじ」
「あっ…あぁ〜」
全てを察した。そんな表情をタトマはした。
「今の将軍はあいつか…どうりで俺のように罪人の紋章を刻まれてないわけだな…」
「…罪人の紋章が入ってるって…お前は何をしたんだよ」
「…俺か?俺は人○しだ」
しっかりと重罪でした。…まぁ、結構紋章がはっきりとしていたからしっかりとした罪を犯したのだなとは思っていたが、まさか…ねとじゅんきは思った。
「…俺の家は適正職業が格闘家とかの拳を主体に戦う人たちを教える道場だったんだ。そこそこ有名な場所で国内外問わず沢山の人が通っていたんだ。俺の親父もお袋も、兄弟も全員優しくてな、いつも道場には元気と活力に満ちた明るい場所だった。だがある日な、そんな俺たちの道場わ気に入らない奴ら…別の道場の奴らが襲ってきた。しかも深夜、門下生もいなくて、俺たちしかいないタイミングでだ!俺たちは勿論抵抗したさ。だが、無理だった。多勢に無勢。俺以外全員死んだ。俺は瀕死だったが、なんとか生きていた」
そう言うタトマは手を拳の形に変えてブルブルと震えさせていた。
「俺もあの時本当は死ねていたら、なんて考えを持った。だけど現実は非情でな、かつては俺たちを慕ってくれていた門下生も1人、また1人と、俺たちを襲ったカス達の所に行くんだ!!その光景を見て俺はどうでもよくなった。失うものなんてないのだから、と考えた俺は1人でその道場をぶち壊した。失うものがない、その心が俺を覚醒かなんかさせていたのかは知らんが俺はかつての門下生達も、俺たちを襲った奴らも関係なしに〇した。悪運だけ強いのかなんなのかは知らんが、俺はまたしても生き延びた。俺は捕まって、罪人の紋章を刻まれつつ、ここに放り込まれたってわけさ」
そう語るタトマは険しい表情をしていた。当然だが、好きだった家族が目の前で死んでいくのは悲しいだろう。じゅんきにその気持ちはそこまでわからないが、自分の親や慕っていた姉のことをじゅんきは思い出し、なんだか少し寂しい気持ちになった。
「お前はまだ大切なものを失っていないのだろう?それならまだチャンスはある。俺のような未来を若いお前が経験してほしくないからな!お前の十分に強い力を確認したから、俺はお前に協力するのさ」
「…ありがとうな」
根はすごくいいやつなんだろうなとタトマの話を聞いていて思ったじゅんきは一刻も早く自分の大切な存在を取り戻すためにタトマと共にさらに森の奥地へと入るのだった。
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「あれだ。あれがこの階層のボス。カブトクラブだ。…今回は最悪な場所で待機してやがるぜ…」
戦国武将の被っていそうな感じのゴツゴツ感、そして、ド派手な金色の大きなハサミが特徴的なこの森の雰囲気とは似つかない奴がじゅんきたちの目線の先で階層間の通り道を守るかのように居た。
このダンジョン…というより、地獄は、5層に分かれて構成されており、各階層にはその階層の中で最も強い奴らがボスとなり、何処かしらに潜んでいる。階層間を移動するための連絡通路付近に居座る奴もいれば、そうでないものもいる。何とも強い奴らにとっては自由な場所であるなとじゅんきは思った。
「…迂回しよう。あいつは強すぎる」
「はっ?迂回とかめんどくさいだろうが。あいつ倒してここから行った方が近いじゃねぇかよ」
「…いや俺の話聞いてたか?…天命王様の力は強いのはわかっているが、あいつはこの階層のボスに過ぎない。他の階層ボスも、なんなら…っておい!聞けよぉ!」
じゅんきはそんなことお構いなしって感じの表情で隠れていた場所から離れ、カブトクラブの前に立った。
カブトクラブはカニの目でじゅんきをギラリと睨みつけた。タトマも一応はじゅんきの隣にいることにした。
カブトクラブはけたたましい咆哮をあげる。タトマはその咆哮を聞いた泣くプラス失禁しそうになっていた。…いい年なのに情けない。
「さぁて、やりますかな!…こいつがな!呼出!ダイナオーツインク!」
最近出番が多い、じゅんきの持つ合体獣の中では一番に基礎パワーの強い、ツインクが出てきた。
「な、なななんだこの歪な化け物!?こんなの、見たことない…」
「そりゃそうだろうよ。なんせ俺のオリジナルだからな!行け!ツインクー!」
ツインクも負けないカブトクラブに負けないくらいの大きさの雄叫びを上げながら、獲物を見つけたかのような勢いでカブトクラブに向かって一直線に走った。
カブトクラブはその突進に真正面から立ち向かう選択肢を取ったのか、自慢のハサミをチョキチョキと動かしながら迫り来るツインクを待ち構えていた。
…カブトクラブは慢心した…とゆうより、じゅんきの傑作、合体獣リスフォースの力を侮っていた。
製作者であり主である王混 じゅんきの命令を忠実にこなし、じゅんきの見つけた魔物達の弱点達をケアできる魔物達の魔法石から成るリスフォースには、無策で突っ込むと当然だが負ける、本能のままに動く魔物達を刈り取る一種の殺戮マシーンのようになっている。
それは当然、どんなに強くても、凶暴だったとしても関係ない。それを示すかのように、ツインクはカブトクラブの硬そうな殻をガラスのように簡単に砕き、中から出てきた身を乱雑に貪る。
殻の破片や殻の中の肉片が辺りに無惨に飛び散る。カブトクラブは悲鳴とも呼べる雄叫びをあげている。その光景はまさしく残虐をあらわしたかのような光景であり、R-18に指定されてもおかしくないくらいだった。
「…カニ…食べてぇな」
「…えっ」
タトマは今まで経験したことのない恐怖を感じた。自分が倒せないと悟り、避けてきた化け物を自分の隣にいる男が自身の従えている魔物使っていとも簡単に倒したこと…というより捕食しているだけだが、その光景を見て隣の男が舌なめずりをしながら魔物を食べたそうにしていることを。この男に下手に逆らってはいけない。そんな声がタトマの中でこだまするのだった。




