第57話 深淵地獄へ
「兄貴…これは…」
朝となり、旅のため、再び物資を集め、王の力探しの旅を再開させる為に、じゅんきとシストリエス、ガタルの3人と、ライガ達は集まった。ライガ達は昨日のこともあってか、かなりびくびくしていた。
両手に花。一見すればそれはそれは羨ましい光景なのだろうが、その花の中心の男であるじゅんきは今にも寝そうな感じであり、所々には私たちの物であるといわんばかりにつけられた噛み跡やキスマークなど。そして2人の美人な女の人達の美しく、ピチピチとした肌を見れば、昨日のあの事件後、3人がどう言った行動を宿でしていたのかは、ライガ達…なんなら周辺の人皆は察しただろう。
ライガ達はそんな姿になった兄貴を見て更に申し訳なさそうな顔をしつつも、買い出しはスタートしたのだった。
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「冒険者、王混 じゅんきだな?」
「あ?そうだが…なんだ」
「貴様はこの街で淫らな行為をした罪がかかっている。そこの2人の女と共に連行させてもらう」
買い出しの途中。昨日の夜の疲れがだんだんと回復してきたじゅんきは、ライガ達と一旦別れ、シストリエス、ガタルと共に次の王の力のある場所の確認だったり、そこへいくための道のりを待ちの人に聞き回っていた中、じゅんきの元いた日本で昔に存在していた武士と呼ばれた人たちのような姿をした人たちに突然話しかけられ、口にはタオルを、手は後ろに回され鉄製のような手錠にかけられた。
反撃の有無を言わずに捕えられたので、なにがなんだかわかららないまま、3人は武士のような人たちに連れられるのだった。
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「将軍様、連れてきました」
「よくやった。褒めて遣わすぞ。女の方は丁寧に扱え。男は地面に伏せさせろ」
城の天守閣まで連れてこられたじゅんき達は将軍様といういかにもこの街の最高某のお偉いさんといった人の元まで来させられたかと思えば、じゅんきは勢いよく地面に叩きつけられ、そのまま押さえ込まれた。
将軍の見た目は強そうで豪華な甲冑に身を包み、強そうな雰囲気、がっちりとした体型の男だった。辺りには昨日ライガ達に連れられた店で働く女性よりも際どい服装をした美人な女性を何人も侍らせており、完全なる悪役って奴が目の前に居た。
「王混 じゅんき。調べはついているぞ。駆け出しから堕チシ呪イノ魔術師を倒したと思えば、その実績からSランクになったと思えば、天命王、獣王の力を受け継いだ者だということも知ってるぞ?」
キモい。はっきりと言ってキモい。なんでこんなにも的確に物事を知ってるんだよこいつはとそのあまりのキモさからじゅんきは引いた。
「そんな経歴を持つお前だが、最近、この国では外の者がこの国で盛ることを禁じたのだが…貴様達はそれを破ってしまった。これは大変に重い罪である。しかし、お前達、そこの美しい貴女達には俺の嫁になってもらうことで罪をなかったことにしてやろう。勿論、これは決定事項だ」
「もがもが…ふっざけんじゃないわよ!誰があんたみたいなクソ男に屈するもんですか!」
「そうにゃ!そんなこと知らないにゃよ!」
「…ま、そう簡単には俺に堕ちないか…まぁいい。時間を掛ければいいからな…そして、今度はお前。王混 じゅんきは、本来ならば、一生牢に入ることになるのだが…貴様には王の力を2つも継承している。俺はその力が欲しい!王の力を手に入れる為には、王を認めさせ、その力を継承するか、もしくはその力を持っている奴を殺して手に入れるしかない。本当なら、今ここで殺したいが…二つも王の力を、持つ者はなにをするかわかったものではない。だからこそ…」
そう言い、将軍は立ち上がり、じゅんきに近づいだと思えば、剣を抜き、じゅんきの腕を少し切った。
「これでいい。この剣は継承の剣。この剣で切りつけた相手が命を落とした時、そいつの持っていた王の力を全て自分に引き継がせることができるのだよ!この剣が折れてしまったらその効果は無くなるが…まぁどうせもうそろそろでお前は死ぬんだ。そんなことは関係ないさ」
「ど、どういうことにゃ!」
「簡単だよ!こいつは今から深淵地獄に落ちてもらうのさ!」
周りの兵士、そして、近くに居る女性陣全員が全てを察したかのような顔をした。
「連れて行け。お前らは気をつけて行けよ」
将軍の命令により、じゅんきは立ち上がらされ、そのまま天守閣を後にした。じゅんきを運ぶ兵士の手が震えていたことから、いまからいく場所が超絶過酷な場所なのかを思い知った。だが、口が封じられていて呼出も形態変化もなにもできないので、大人しくしておいてさっさと深淵地獄から出ようと思ったじゅんきなのだった。
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「…お前も災難だったな…」
馬車というじゅんきにとっては遅すぎる乗り物に乗せられ、深淵地獄のあるとされている場所へと向かっている中、兵士の1人が憐れんだ顔でじゅんきに喋ってきた。じゅんきは街から離れたことで口を覆われていたタオルを外され、呼出も、形態変化もできる状態となったものの、なんとなくやらずに、そのまま一回落ちた方が自分にプラスになるだろうという意味のわからないことに自分の心はいっぱいとなったので、抵抗もせず、かと言って諦めた顔もせず、ただただその時がくるのを待っていた。
「そうだよな…あんた…噂のブルテナ帝国の王子の結婚式を破壊して、獣人国デミズを救った人だろ?」
「そこまで知られているのか?」
「まぁ、結構でっかいことやってるからね…まったく、あの将軍ときたら…自分の気に入った女を無理に妻にさせるクズっぷりも見せるわ、悪政策を沢山生み出すわ、俺たちの給金は下げるわで最低最悪な野郎だぜ。いっそあの時あんたが将軍様を倒してくれたらよかったのによぉ」
「やめておけ!どこで誰が聞いてるかわからんぞ!」
部下にこんなことを言われるということはよっぽとなのだろう。…まぁ、見ていればわかる話か。
「…あんた、なんであの2人を助け出そうとしなかったんだ?あんたなら出来ただろう?」
「…ん〜。なんでだろうな。最初は思っていたんだが、深淵地獄の名を聞いた瞬間、なぜだか知らんが一回そこにいくべきだと思ってな…」
「変わった野郎だぜ…だからこそ、デミズとかを救えたのだろうな」
「そうこうしてるうちに、着いたぜ…」
馬車に揺られ、太陽が上に来ているお昼時、じゅんきは兵士達と共にすごく頑丈そうな扉の前にきた。扉前には10数人の魔術師がおり、扉の先がすごい場所なのだとじゅんきは肌で感じた。
着いて下されると同時に魔術師達は詠唱を始めた。ゴゴゴゴというもの凄い物音と共に扉は開いた。
「…こんなことをしてるからには、同罪で、俺たち何かをいう権利なんてないのはわかっていますが…どうかお気をつけてください」
「…あぁ。ありがとうな」
無理矢理従わされて可哀想にと兵士のことを心で気遣いつつ、じゅんきは口に出して気遣ってくれた兵士にお辞儀をして、禍々しい赤や黒色に光る扉の中へと入っていった。じゅんきが入った後に、扉は魔術師達によって勢いよく、そして硬く閉ざされるのだった。
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「…わーお」
扉を抜けた先に待っていたのは、真っ暗な空間でも牢獄でもなく、暗い雰囲気に包まれた森の中だった。木は大きく太く、日の光などを入れてやらないと言わんばかりの葉っぱの生い茂り具合。地獄と何名にあったので、火が燃え盛り、辺りからは落ちてきた人たちの悲鳴などが響くような絵面が広がっているのだろうと思っていたじゅんきからすれば、「なんだこんなもんか」というような感じであり、か自分の彼女達を取り戻す為にも、この地獄から出たいじゅんきは、取り敢えず前に歩き出すのだった。
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「うーむ。出口がない」
暗い森の中をひたすらに真っ直ぐと進んでどのくらい経過しただろう。日も落ちる気配がなく、景色も一切変わらないので、進んでいるのかもいないのかも、どうなのかが全く分からない。凸凹しており、木々の間も狭いここではじゅんきの車達で移動することもできない。早く恋人を取り返したい。それらの事柄、思いが重なったことで、じゅんきのイライラは加速していった。
「見かけない顔だな。新入りか?」
「あぁ?」
探しても探しても出口がないのでイライラとしていたじゅん木は目の前に突如として現れたライガ達ムキムキ3人組にも劣らないくらいの素晴らしい筋肉に、線の刺青というじゅんきの元いた世界日本で昔あった罪人に入れるようなものが入った大男が木の上からもの凄い音を立てて現れた。
「…どいてくれ」
「おいおい。ちょっと待てや兄ちゃん?」
そう言って肩をぐっと掴まれた。一刻も早くここから出たいじゅんきのイライラゲージはぐいっと上がった。
「…なんだよ。こちとらここを早く出たいんだよ」
「…ここから出る事は出来ない」
そういうと大男はじゅんきの肩に置いていた片手をすっと上げ、悲しそうな顔をした。
「はっ?出られないってどういうことだよ」
「深淵地獄は俺たちのような悪い奴らを封じ込める為の場所。一度入ったらほぼほぼ出られない。そして、ここの世界ではな!」
そう言いながら、大男は片手を拳の形に変えて、振り下ろしてきた。
拳の速度は遅く、元の形態では移動速度の遅いじゅんきでも簡単に避けれたが、避けた所の地面は拳が当たった瞬間に砕け散った。
「あああもう!なんでこの世界こんなにも血の気が多い奴が多いんだよ!!呼出!ダイナオーツインク!頼んだぜ!」
またまたかなり久しぶりの登場。ダイナオーツインクである。現在じゅんきに従っているリスフォースの中で1番パワーがある。ツインクは雄叫びを上げながら大男に向かっていった。
「ぐぉお!なんだこいつ!つ、強ぇえ!」
ツインクの拳を受け止めた大男はきつそうな声で言った。しかし、大男も負けておらず、互いに一歩も引かない状態だった。ダイナツインと、オークという素のパワーならかなり強い部類に入る奴らの魔法石から作られているやつとパワーで一歩も譲り合わないと言う状況を作り出せているあいつはやれるなとじゅんきは思った。
が、しかし、そんな大男も拳を振るった相手が悪かった。
「呼出!アマミチュラアス!」
無限ダンジョンのボスだった毒攻撃を得意とするムゲンチュラと、デュ○マに出てくるアケル○ルのような奴の上部分だけとなってしまった遠距離攻撃を得意とするアマミリアスが、アラクネのような感じで合体したアマミチュラアスが出てきた。じゅんきの指示により、チュラアスはエンジェル族には似つかわしくない毒の混じった光属性魔法とうよく分からない攻撃を溜めて、打つ。
「…や、やべぇ!…この!離せ!…あっ!やばい!うわぁあぁあぁ!」
大男の情けない声が辺りに響いた。アマミチュラアスのことを察知したツインクの粋な計らいによって、チュラアスの攻撃は大男にクリーンヒットした。…こんな風な意志を持たせた覚えはないが…まぁいいだろう。
大男は苦しそうな声で体が溶けそうになっていたので、じゅんきは慌ててカースも呼び、大男を助けたのだった。
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「に、にぃちゃん…すげぇな」
大男は、目の前にいる歪な魔物達を見て言った。チュラアスには体を溶かされそうになったことで軽くトラウマとなっているのか、チュラアスを見て「ヒッ」と言いながら頭を下げた。
「まぁな。…それよりも、ここから出る方法を教えてくれ」
「…ここから出ることは出来ない」
「はっ?」
「ここは俺たちのようなどうしようもない罪人や魔物達がうじゃうじゃと居る場所だ。お前も人間なら見ただろ?あの大きな扉。厳重に閉ざされ、凄腕の魔術師達数十人で解放する姿をな。俺も何度も何度もここから出ようとしたさ。だが、無理だったってわけさ」
「…まぁじかよ。俺は早く出たいのにぃ」
ここから出られない。そんなことを聞いたじゅんきはとても悲しくなった。今にも泣きそうになった。
「ま、まじかでそんなに出たいのかよ」
「勿論だぜ!俺を待ってくれている女がいるんだぜ!」
「…成程な…俺を倒せるそんな強い魔物を連れているお前なら…うん。なぁ、にいちゃんよ」
「???」
「…一つだけ、たった一つだけだが、ここから出られる方法がある」
そういう大男の顔はどこか気まずそうであり、かつ覚悟を決めた様な顔で大男はじゅんきに言ったのだった。ここから出る方法を。




