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第52話 形態変化!獣王!ワイルドポーラーベア!

「貴様…名をなんと申す」


「俺は王混 じゅんきだ」


「王混…か。では王混、私と、私の最高の部下達で決着をつけようではないか。…あと、貴様、何か歪な魔物を扱っていただろう?それを使うのもなしだぞ」


この場に居る王子の味方をするもの、ガタル、シストリエスを除いた者全員は呆れた目をした。


「お、王混の技能…ていうか…なんだ、職業か?それを使わせないとか…縛りプレイにも程があるだろ…そんなんで勝てんのかよ…あいつ」


勇者である天野がそう心配した声で言う。しかし、そんな心配は杞憂であったのだということを彼…彼らは知ることになる。


「いいだろう。出さないでやろう」


「それでは!いざ!…我が兵達よ!行け!」


王子の指示により、王子の目の前に居た3人の騎士達は一斉に剣を抜き、勇ましい掛け声と共にじゅんきに目掛けて一直線に来た。流石王子の選んだ騎士なだけある。素早い剣捌き、そして素晴らしいくらいまでの連携により、じゅんきの素早さで完全に避けるなんて芸当をこなせるわけもなく、傷を浅くするくらいしかできず、じゅんきの着ているおしゃれ(?)な怪盗っぽく見せたタキシードは恐竜に引っ掻かれたような感じで破れ、破れた先の皮膚からは赤い液体が少し吹き出したまんま、じゅんきは後方へと吹き飛ばされた。


「あいててて…久しぶりに傷できたな…このまんまじゃ少しめんどくさいぞぉ…」


「はーっはっは!どうした!もう終わりか!」


「…なにを。終わるのはお前らだ」


そう言いながら、にやりと不気味にじゅんきは笑った。


「このパーティに参加する前に苦労はそんなにしてないけど手に入れたこの素晴らしい力を見せてやるぜ」


「貴様の自慢の魔物でも出すのか?それはルール違反だぜ?」


「そんなことするもんかよ!形態変化(ライドオン)!獣王!ワイルドポーラーベア!」


じゅんきがそう叫ぶと共にじゅんきの体は光り、元の体よりも遥かに大きくなり、剣に斬られたことで少し破れた服はバキバキに大きくなったじゅんきの筋肉によって破れ、ムキムキの筋肉の丸見えとなった上半身、布切れでじゅんきの大切な部分はしっかりと隠されつつも、足のムキムキ具合はしっかりと見えるようになった足。そして白熊の名前の通り、元のじゅんきの綺麗な肌色の体には真っ白の部族のような紋章が全身に現れた。


先程まで痩せていたもやしのような体付きだった男とは想像もつかないような姿にじゅんきはなった。 


刹那、ガタル達獣人達は全員頭を下げ、謙るような姿勢になった。


「…な、なんだと!?」 


「お、おおおお王混君!?」 


「…へ?」


辺りの皆が獣人は謙り、もやしボディ男がガチムキ野郎になったことに驚きを隠さないでいた。


その混乱状態を取り、じゅんきは先程とは全く違う力によって地面を蹴り、地面を抉りながら速いスピードで兵士に接近する。


その事に対しての反応が遅れた兵士の1人が、じゅんきのなんて事ない普通のパンチを喰らってしまった。


そのせいで体は鎧なんて意味をなさないと言わんばかりの細さ…干し肉かと思うくらいにまで潰れ、すごい速度で壁に激突した。…そいつは勿論即死だろう。


「なっ…」


「なっ…ゴッサ!」


「貴様!な、ななんだその力は!?」


「何と言われても…獣王の力を受け継いだ事により使えるようになったものだがな!…俺自身に戦闘力はないと思っていたようだが、残念だな!」


そう自信満々に言い放つじゅんき。王子達は目の前の弱そうな男が急に強くなってしまったことに対してかなり絶望

していた。


「じ、獣王の力…だと?」


「ああ。デミズで過ごす間に手に入れたのさ」


「タイクーン様…これは…」


「流石に王の力持ちには勝てませんぜ…」


「…うるさい!奴がどんな力をもっていようと勝たなければいけないのだ!!!…王の力を持っている?なら勝って奪えばいい。だからやるぞ!やれ!お前ら!」


王の力を見せたことで王子は絶望するどころかやる気をさらに出した。…しかし、それは自らが身を賭けてまでじゅんきと戦う訳ではなく、連れている兵士に任せっきりである。じゅんきはその事に対してかなり呆れた。


「…無理っすよ。無理ですよ!タイクーン様!」


「そうですよ!ゴッサだってやられたんですよ!たった一発で!あいつにとってなんてなさそうな普通の拳で!」


そう思った矢先、王子の味方をしていた兵士達は力量の差を理解しているのか、戦うことを拒んだ。


「ど、どうしたんだよ!お前ら!」


「どうしたも何も、兵士として、負けのわかっている勝負事には手出しできません」


「流石にな」


そう言いながら、王子と共に…というより、王子の指示で戦っていた兵士達は戦うことを辞め、離れてゆく。引き際をわかっている兵士達は賢いとじゅんきは思った。


「さぁ、王子様?お前を守ってくれる兵士達は居ないぞ?どうする?」


「…ならば俺1人でもやってやるまでだ!」


…備考、王子はやはりバカらしい。やられていった(じゅんきがやった)兵士を見ても、賢く引いてゆく兵士を見ても、勝ちたいという意思が強すぎるのかなんなのかは知らないが、絶対に引かずに勝つという意思を王子は宿している。


そんなおバカで自分に非があることを認めない頑固者にはやはり鉄拳制裁が一番だと思い、じゅんきはまたも突進をした。


獣王のパワーで先程と変わらない位の速度で王子に向かって綺麗な床を再び抉りつつ王子の元へと急接近し、今のじゅんきにとってなんてことのない普通のパンチを…王子の目の前ギリギリで止めるように…ようは寸止めするようにしてパンチを繰り出した。


獣王のもの凄い馬鹿力が自身にも反映されてるせいで、寸止めといえども、繰り出されるパンチの風圧によって王子の体はいとも簡単に吹き飛び、そのままの勢いで柱に激突した。


柱の素材である石達がバラバラと音を立てて崩れ、王子も共に地面へと落ちる。


王子は壁に激突したからか、血を流しながら気絶した。


「…さてと、俺の勝利だな」


じゅんきのその宣言と共に、会場は静寂に包まれながら、戦闘は終了を迎えた。


「まさか王の力を継承しているとはな…驚いたぞ!王混よ!」


「お、おう」


「やったわね!じゅんきー!」


「流石は獣王様も認める最強の男にゃー!」


王様が誇らしげに近づき、シストリエス、ガタルは嬉しそうに近づいた。


「…あのさ。申し訳ないけど、シストリエスのくれた服先着て来ていいか?…俺の用意した服…破けたから」


「…あっ…どうぞにゃ」


「…そうだな」


「そのまま解除すればよくないかしら?」


「…今解除したらきっと全裸だ!それはただのど変態になるだろうがよ」


クラス、そして来賓(主に女性)が頬を赤ながら顔を隠したり、悲鳴をあげた。


「私はいいわよ?」


「むっつり野郎が、お前が裸になったとして、それを俺以外の男に見られたいか?」


「…うげ」


「…な?だから着替えてくる」


そう言って、じゅんきは乗ってきた車を持ち上げて、そのまま会場出口へと向かったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「それじゃあ勝負で賭けた代償を払ってもらうぞ」


本来は明るく、歓喜の声に包まれているはずの結婚式場は静寂に包まれ、綺麗だった会場は無惨にもボロボロとなっていた。


そんな会場にシストリエスのくれた服に着替えたじゅんきが、一通りの手当てをされて意識の回復した王子が、兵に捕えられる形で勝負で賭けた己の身…これから自分がどうなるかの判決待ちをしていた。


全てを諦め、これから自分は酷い仕打ちをされてしまうのだと王子は悟っているのか、抵抗など、何もせずに静かにじゅんきが語り出すのを待っていた。


「王子…タイクーンと言ったか?お前はここの王を継ぐためにしっかりと父親の背中を見て、2度とこんな愚策で民の命をむだにしないようにしろ」


王子…のみならず、この場にいた全員が驚きの声をあげた。


「ぼ、ぼぼボス!こいつは!」


「こいつは私たちの故郷を侵略を画策した張本人にゃ!なんでにゃ!」


「王混…どういうつもりかね」


「どうもこうもない。俺は確かにデミズを救い、帝国がデミズの支配をしない為にこいつと戦った。が!しかし!戦いの場でも言われた通り、俺はデミズの民でもないし、帝国人でもない!俺はあくまでもこの不当な結婚式を止め、デミズを救うために協力しただけ。王子をどうこうする権利はないが、勝負では一応俺は勝ったからな。ならば下手に殺すよりも失敗から学ばせ、国のため、国民の為にと残して生かしておいたほうがいいって思ったのさ」


そのじゅんきの言葉に王子は涙を流した。


「いいだろ?王様?」


「…ははは。本当に不思議な男だな貴殿は。余たちはそれでいい」


王様は安堵した様子で頷いた。やはりこんな失敗を犯した奴でもここまで手塩にかけて育てた息子だからか、やはり目の前で死ぬ光景も、酷い仕打ちとなる様子も見たくないのは当然である。


「お前らもいいな!」


「はぁ…まぁ、ボスが決めたことですしね」


「ほんと、王混様は…まぁ、そこがいいところだと思うにゃ」


「どの面で言うている。この泥棒猫…でも、私もそう思うわ」


「お、王混様…いや!マイロード!貴方に生涯の忠誠を誓いますぅ!!」


「おい!やめろ抱きつくのは!」


「…ライバル発見。すぐに処す!」


「ライバルじゃにゃいから落ち着くにゃ〜!」


そんなこんなで、結婚式は取りやめとなり、ブルテナ帝国、デミズ国は後日会談で被害などの補償をどうするのか、法律などの諸々を決めることにすることを両者は約束し、お開きになったのだった。


「俺たちも帰ろうぜ〜」


「お、王混君!」


「…先生か。俺をそのクラスに戻したいってのかよ?」


「やはり、冒険をさせてあげたいとは思いますが、それでもやはり私は貴方の先生なんです。だから、やっぱり戻ってきてほしいと思いますよ。先程の貴方の力は凄く強いですし、私たちの大きな力になってくれるのは目に見えているんです。それに…貴方のことを心配する人も多いので」


「主には愛川か…だが、それは無理だ」


「やはりですか」


「ああ。俺だってやること全然達成できていないしな。それに、新しく大切な人だってできた。だから俺は戻らない」


「あの紫髪の女性ですか?」


「ああ。俺の超絶大切な人だ」


「そうですか…そこまで言うなら、先生だって止めません。ですが、私は諦めるつもりはないです。気が変わったら、いつでも言ってくださいね」


「…ああ」


「…じゅんきー?」


「トリエスが呼んでる。俺はそろそろ行くわ。…またな、先生」


「…生きて、次回会うときまで元気でいて下さいね」


「当然」


そう言って、じゅんきは木本先生と別れを告げ、めちゃくちゃにした結婚式場を去るのだった。

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