表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぺんぎん  作者: kikuna
PR
43/61

第六章 探究者04

火が弾ける音で私は目を覚ましていた。


 ぼんやりとした視界に、大柄な男性の背中が入る。

 躰に強い衝撃を受け、私は気を失った。そこまでに記憶はある。しかしその先も前もほぼ真っ白で、何も思い出せずにいた。

 霧が晴れるように、視界がはっきりしていた私は、見たことがない部屋の様相に、私は慌てて飛び上る。

 レンガ作りの部屋。

 「あの」

 無造作に振り向いた男に睨まれ、私は目を見開く。

 全然別人に思えたのだが、どこをどう見間違えてしまったのだろう……。

 口元を少しだけ上げた笑みを浮かべた松浦だった。

 「松浦さん、どうして、ここはどこなんです」

 私の質問に、松浦は首をすくめて見せる。

 瞳が炎を吸い取ったかのように赤く燃えて見えてしまうのは、気の性なのだろうか。

 私は後ずさり、その場から逃げ出そうとするが、恐怖のあまり、ピクリとも動こうとしてくれなかった。

 松浦がじわじわと近づいて来ていた。


 「ユウさん、私だけを信じてくれますよね」

 「あなたは誰?」

 「私はあなたの思い人ですよ」

 「違う、私が愛しているのは」

 私は言葉を詰まらせてしまう。

 「さあどちらです?」

 空を物憂げに見上げる茶々丸が振り返り、微笑む。

 桜の花びらが舞い散り、ショウが得意げにハーモニカを吹く。


 「君は待っていればいい。鍵は必ず君を見つけ出す」

 不意に友暉の声が割り込み、辺りを照らしていた白い光は無くなり、闇が覆い尽くす。


 自分の身に、何が起こっているのかさっぱりわからなかった。


 やたら長い、悪い夢でも見ているのだろう。なら、早く目覚めさせて。

 私はこの恐怖から逃れたい一心で、強く願う。

 

 胸に抱いていたぺんぎんがはじけ飛び、四方八方へ破片を飛ばす。

 光が乱反射し、天へ延びて行く。

 ぽっかり空が割れ、大きな穴がそこにはあった。


 「愚かな娘よ。もう二度と愛する者は戻らないであろう」

 地響きをも感じさせる湧きあがった声だった。


 ぽっかり空いた穴が塞がれ、一面の青空を仰ぐように、私は目を覚ます。


 公園のベンチで、私はいつの間にか眠ってしまったらしい。

 カバンの中で携帯が鳴り出す。

 上司からの電話だった。


 電話を取り出した時、一枚の紙片が落ちる。

 時計の修理預かり書だった。

 今日の仕上がりになっていることに気が付き、私は駅に向かってノロノロと歩き出す。

 人の群れにまぎれ、流されていく私に、もう茶々丸と過ごした記憶はなかった。


ダメだ。復旧しようとすればするほど崩壊していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=615037994&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ