第五章 便利屋02
私は手渡された名刺をじっと見ていた。
人当たりの良い笑顔。頭にはタオルを巻き、寺田純也は積み上げられたゴミを一なめさせてから、その視線を私に戻していた。
「凄い山ですね。ざっと見て、トラック八台分くらいですかね~」
「おいくらになりますか」
率直な質問に、寺田は苦笑で答える。
「外壁周りだけでも4、50万はかかってしまいそうな勢いですね~。中はどうか見てみないと分かりませんが」
ゴミを片づけることを、私はまだ茶々丸に話してはいない。気持ちが変わらない内にと、美和子は躊躇する私の腕を掴み、その足でアパートへやって来ていた。
寺田純也が生業としている便利屋に連絡を取ったのも、その道中だった。以前、会社の引っ越しの際、お願いした業者だから、安心できるという話だが、私はそこにいるであろう茶々丸を思いながら、アルミのドアを見上げる。
「使っている部屋は、あの一部屋だけになりますかね」
寺田の質問に答えたのは美和子の方だった。
雲を引き詰めた空が視界の端に映り、私の中に意味もなく罪悪感が生まれ始めていた。ゴミを片してあげる。素晴らしいと褒められることのはずなのに、どんよりとしたものが胸の内に広がり、居ても立っても居られない気持ちに駆られる。
「やっぱり今回は」
上ずった口調で言い出す私に、美和子は口を尖らせ呆れてみせる。
「ユウ甘い。ここは心を鬼にして、彼の為なのよ。このままだと病気になってしまうわよ。良いの? 大切な人が重病にかかってしまうかもなのよ」
「でも私、そんなお金」
「それなら私が何とかできると思う」
驚きを顕わにした私を見て、美和子が少し照れたように笑ってみせる。
信じがたい話だった。人にポンとこんな大金を貸せるほど、美和子は裕福ではないはず。
そんな私の表情を読み取った美和子が、ばれたかと舌を出す。
「スポンサーがいるんだよね」
「スポンサー?」
訝る私に目もくれず、美和子はどこかへ電話をかけ始める。
手短な会話の末、嬉しそうに私にOKサインをしてみせた。
あたりの良い笑顔の寺田がその横に並ぶ。
「これだと二日、三日下さいと言いたいところですが、一日で何とか片付けちゃいましょう。お値段もご紹介という事で、まけて、20万で如何でしょう」
「大丈夫です。ね、お願いしちゃいましょうよ」
目を輝かせて言う美和子に、押し切られるように業者の人たちがやって来て、その間、何とか茶々丸と話そうと、私は階段を上って行く。その後ろを美和子が続こうとして、それを私は拒んだ。




