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社畜の郵便配達員は異世界でも休まない  作者: 太幽


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第二十二話「魔王との対話」

第二十二話「魔王との対話」


魔王城の門は、三人が近づくと同時に、音もなく開いた。


城内に一歩踏み入れた瞬間、ひんやりとした玄武岩の冷気が三人の肌を包む。外の乾いた風とは打って変わり、空気は澄んで静かだった。壁には無数の松明が灯り、その炎が石の壁に揺れる影を落としている。どこかで水滴が落ちる音が、規則正しく反響していた。


「すごいでしょ!外から見るより中はずっと広いんだよ!」


リーンが得意気に自慢した。


「はい。外観から想定される容積より、三割は広いかと」


「真さん、そういう分析はいいから」


二人の後ろで、女神は無言で城内を見渡していた。

この城はかつて神界が「討つべき敵の本拠地」と呼んだ場所だ。

しかし今、自分は招かれてここに立っている。

そのことの重みを、松明の灯りが照らし出す石壁の一筋の亀裂に見るような気がした。


広間の扉が開く。


そこに立っていたのは、魔王だった。


鎧はつけておらず、深紅の外套をまとった姿。

その目は鋭く、しかしどこか穏やかな光をたたえている。

彼の背後には、無数の書物が並ぶ棚と、古びた長机。

その机の上には、すでに三つの椅子が用意されていた。


「よく来た、勇者。そして女神。──リーン、よく戻った」


「ただいま、父上」


魔王はリーンの頭にそっと手を置き、それから真と女神に向き直った。


「まずは礼を言う。娘を救ってくれたこと、感謝する」


「業務ですので」


真の即答に、魔王は一瞬だけ目を細め、それから小さく笑った。


「そうか。では、その『業務』の一環として、今日は話をしよう。掛けてくれ」


三人が椅子に着く。

松明の灯りだけが揺れる静かな広間で、魔王が口を開いた。


「まず聞きたい。勇者、お前はなぜ魔族を助ける」


「困っている人がいたからです」


「それだけか」


「はい」


魔王はしばらく真の目を見つめ、それからゆっくりと息を吐いた。


「かつて私が戦った勇者は、正義を振りかざし、魔族を悪と断じて斬った。降伏した若い兵士すら、『魔族に情けは無用』と。お前は、それとは違うというのか」


「私は、敵か味方かで相手を選びません。明らかに道徳から反した者は見捨てますが、多勢に無勢で理由もなく襲われてたら助けます。信用を得られれば顧客になってくれますし。」


「顧客?……」魔王が初めて聞く言葉に眉をひそめる。リーンがすかさず補足した。


「真さんのお抱え取引先みたいな感じ!相手が誰でも関係なく、真さんだから仕事をお願いしたいって人が増えるのよ。」


「……なるほど。それで、娘にも『お客様』だと」


「はい。今は業務上のパートナーです」


魔王はリーンをちらりと見た。

リーンは耳の先をほんの少し赤らめて俯く。

魔王はその様子を見てかすかに口元を緩め、それから真に向き直った。


「して、お前たちは既にパーティを組んでいると調査報告で上がっている。勇者と魔族の姫がパーティを。どういう了見だ」


真は背筋を伸ばし、手帳を取り出した。

ページを開き、一枚の紙を丁寧に取り出す。

ギルドの印が押された、リーンのサインが入ったパーティ申請書と証明書だった。


「はい。婚姻届の本提出はまだですが、パーティ登録という形で仮申請が受理されています」


「…………は?」


魔王の手から、持っていた杯が滑り落ちそうになる。


女神が息を呑み、それから口元を押さえた。


広間に一瞬、重い沈黙が落ちる。松明の火が、かすかに爆ぜた。


「婚姻届?」魔王が絞り出すように言う。


「はい。パーティ登録とは、婚姻の仮申請にあたると認識していますが、間違いでしたか?ギルドでは登録者が男女で、その後一緒に暮らしている方ばかりですが。」


魔王はゆっくりとリーンを見た。

リーンは口をパクパクさせている。

顔がみるみる真っ赤になっていく。


「ち、ちが、違う!パーティは婚姻じゃない!真さん、それ本気で言ってる!?」


「本気ですが」


「どこをどうしたらそうなるの!私はただ、一緒に依頼を受けたいからサインしただけで!」


「……では、婚姻には興味がないと」


「そうじゃなくて!順番!問題は順番なの!」


真はしばらく考え込み、それから手帳に何かを書き込んだ。


「承知しました。では順番を経て、正式な婚姻へと進むべき、と」


「そう!……え、あ、いや、ちが」


「違うんですか」


「違わない、けど!今それをここで言わなくていいの!」


魔王はしばらく黙って二人のやりとりを見つめ、それから大きなため息をついた。


深く、深く、まるで二十年分の疲れを吐き出すようなため息だった。


「……この男、本気でわかっていないのか」


「本気です」


魔王は天を仰ぎ、それから声を上げて笑った。

笑い声が広間に響き、壁の松明がそれに呼応するように揺れる。


その笑顔は、もはや敵対者のそれではなかった。


「わかった。では改めて、娘との婚姻を許可する」


「承知しました。手続きを進めます」


「私の意見は!?父上も止めてよ!」


「お前が選んだ男だ。私から言うことは何もない」


「言うことは何もないじゃなくて!」


「リーン、よかったわね。この展開は予想してなかったわ」


「女神様!?」


女神は口元を押さえているが、肩が小刻みに震えている。笑いをかみ殺しているのを、リーンは見逃さなかった。すると魔王は咳払いを一つし、居住まいを正した。


「一つ、気になることがある。お前を『大黒』と呼ぶのは、この女神だけのようだな」


「はい。以前は『勇者』と呼ばれる事もありましたが、リーンが気にしてギルドに来れなくなってからは『大黒』と呼ぶ事が多くなりました。」


リーンはその話を聞いてピクりとした。


「勇者、お前の名は『真』か」


「はい」


「……『真』。娘を頼むぞ」


「承知しました」


魔王は真の目をまっすぐに見つめ、それから静かに頷いた。

娘を託すに足る相手か。この短い問答で、彼はすでに判断を終えていた。


女神が咳払いをしてかは静かに声を上げた。


「では、私からも一つ、提案があるのだけれど…この流れの後なら私の提案も薄れるわけだけど…」


全員の視線が女神に集まる。彼女は背筋を伸ばし、魔王の目をまっすぐに見据えて言った。


「私と、あなたが婚姻を結ぶというのはどうかしら」


魔王が固まる。

「…ん?」


リーンがカップを落としそうになり、両手で慌てて抱え直す。


魔王はゆっくりと杯を机に置いた。その手が、かすかに震えている。彼は咳払いを一つし、深く息を吸い込んでから、絞り出すように言った。


「……待て。私は今、娘の婚姻の話を聞いていたはずだ。それがなぜ、私自身の婚姻の話になっている」


「順番に協議しましょう。まずはリーンさんの婚姻から——」


「大黒、お前は少し黙っていなさい」


「承知しました」


真が素直に口を閉じるのを見て、魔王はもう一度深く息を吸った。それから女神に向き直る。その顔は、先ほどまで真と杯を交わしていた魔王の顔ではない。かといって、かつて広間で見せていた戦士の顔でもない。ただの——困惑した中年男の顔だった。


「女神、私はお前と長年敵対してきた。神界と魔族の確執は、一朝一夕に解けるものではない」


「ええ、知っているわ」


「にもかかわらず、婚姻だと?」


「だからこそ、意味があるのではなくて?」


魔王は言葉に詰まった。反論しようとして、できない。そんな自分に気づいて、彼はこめかみを指で揉んだ。先ほどまで真の「婚姻届の仮申請」に大笑いしていた男の姿は、もうどこにもない。


「お前は、本気で言っているのか」


「本気よ」


「私には、亡き妻がいる」


「知っているわ。それでも——いえ、だからこそ、あなたはもう一人で戦わなくていいの」


魔王は窓の外を見た。夜空には無数の星が瞬いている。その星を見つめながら、彼はぽつりと呟いた。


「……私は、妻以外の者と共に生きるなど、考えたこともなかった」


「今、考えなさい」


魔王はゆっくりと女神に向き直った。その顔には、困惑と、かすかな照れと、そして——ほんの少しの期待が混ざっている。彼はそれを隠そうともせず、ただ深いため息をついた。


「お前はいつもこうなのか」


「神界で何千年も書類仕事をしてきたのよ。交渉には慣れているわ」


「交渉……これを交渉と呼ぶのか」


魔王はしばらく黙り込み、それから深いため息をついた。今日だけで何度目かの深いため息だった。


「つまり、私は…すまん、状況が整理つかん、女神と?婚姻を結ぶことになるのか?」


真が手帳から顔を上げて言う。


「整理しましょう。リーン婚姻と、あなた自身の婚姻です。混同されると事務処理が煩雑になるので、議題を分けて協議したいのですが」


「ここでそれ言う!?父上も止めてよ!」


魔王は頭を抱えながらゆっくり深呼吸をした。


「いや、実に建設的だ。久しぶりに頭が痛くなるような話だ」


魔王は笑いをかみ殺しながら言った。

その顔は、もはや敵対者のそれではなかった。


それからしばらく、広間では真を交えた「婚姻手続きに関する実務協議」が続いた。


婚姻届の正式な書式、必要書類の一覧、スケジュール感、神界への通知方法。

真はそれらを手帳に書き留めながら、淡々と質問を重ねる。


「神界への婚姻報告は、女神様の既存の報告書に追記する形で問題ないでしょうか」


「ええ。特記事項欄に『魔王との婚姻を締結』と書いておくわ。どうせ誰も読んでいないし、いつものように認可の判子が押されるだけよ。」


「承知しました。その報告書のコピーは必ず保管してください。では次に、婚姻後の拠点について。ギルドへの通勤距離を考慮すると——」


「真さん、そういうの、今じゃなくていいから!」


ひとしきりリーンが叫び、魔王が笑い、女神が口元を押さえる。


松明の灯りがいつの間にか数本増やされ、広間は少しずつ温かくなっていた。


「では、突然だが宴にしよう。もともと食事はそれなりに用意をしていたのだが、まさかこんな形で宴になるとはな。」


魔王が立ち上がり、手を叩く。


扉が開き、給仕の魔族たちが次々と料理を運び込んできた。

焼きたての獣肉、色とりどりの野草の和え物、湯気を立てるスープ。

見たこともない果実を盛った大皿が机の中央に置かれ、甘露のような甘い香りが広がる。


「魔族の料理は初めてか」と魔王が真に問う。


「はい。前職では、取引先との会食も業務の一環でしたが、こちらはそれとは異なるようですね」


「酒は飲めるか」


「嗜む程度には、ですが今は職務中ですので」


「クライアントとして依頼しよう。飲め!楽しめ!」


「承知致しました。」


魔王が真の杯に酒を注ぐ。

深紅の液体が杯を満たし、芳醇な香りが立ち上る。真は杯を受け取り、一口含んだ。喉を落ちていく熱さを確認し、それから静かに言う。


「悪くありません」


「……お前、結構飲めるな」


「業務に支障のない範囲で」


「ここでは業務を忘れろ、これも依頼だ」


「承知致しました!」


魔王が笑う。その笑い声に釣られて、真の口元もほんの少しだけ緩んだ。


「父上!真の操り方まで分析してる!調べすぎでしょ!」


リーンが真の隣に座り、自分の杯を掲げる。


「真さん、乾杯」


「何に対してですか」


「えっと……婚姻届の仮申請受理記念?」


「それはまだ本提出ではありませんが」


「じゃあ、パーティ結成記念!」


「それはもう受理されています」


「もう!とにかく乾杯!」


リーンは真の杯に自分の杯をコツンと当て、勢いよく酒をあおった。


真はそんな姿を見てふと微笑んだ。


むせて涙目になる彼女を見て、女神がそっと背中をさする。


リーンがむせながら杯を置き、改めて女神に向き直った。


「女神様、さっきの提案、本気なの?」


「本気よ。あなたの母になるっていうのも、政略って言ったけど、それもあるけど——」


女神はリーンの目をまっすぐに見つめて言った。


「あなたの笑顔を、成長を、幸せをこれからも見ていたいから」


リーンは俯き、それからそっと女神の袖を引いた。


「お母様って呼んでいい?」


「ええ、もちろんよ」


リーンはしばらく黙り込み、それから小さな声で言った。


「……お母様」


その声は、広間の喧騒にかき消されそうなほど小さかった。

けれど女神には、はっきりと聞こえた。

女神は何も言わず、そっとリーンの肩を抱き寄せる。

指先が、リーンの髪を優しく梳いた。


魔王はそんな二人を静かに見つめ、それから杯をあおった。その目は、少しだけ潤んでいるように見えた。


「妻が生きていたら、なんと言うか」


「『あなた、いつまでも独りでいるからよ』とか?」とリーンが顔を上げて言う。


「……そうだな。まったく、その通りだ」


魔王は笑い、真に杯を差し出した。

真は無言でそれを受け取り、注がれるままにもう一杯を口にする。

酒の勢いで少しだけ緩んだ空気の中で、魔王がぽつりと呟いた。


「妻が遺した手紙がある。『この子を頼みます』と、それだけだった。私は魔王として立つことに必死で、娘に何をしてやれたか——」


「父上」


「……すまん、柄にもないことを言った」


魔王は杯を置き、窓の外を見た。夜空には、無数の星が瞬いている。その星を見つめながら、彼は静かに言った。


「今日という日が来るとは、思わなかった」


真は杯を置き、魔王の目を見た。


「今日という日は、まだ始まりです」


「……そうか」


「はい。業務はこれからですので」


魔王はしばらく真の顔を見つめ、それから破顔した。


「お前は、本当に変わらんな」


「よく言われます」


宴は夜遅くまで続いた。


女神が杯を重ねるうちに頬を染め、やがて「リーン、こっちにおいで」と両手を広げ、抱きついて離さなくなる。いつもの柑橘の香りに混ざって、酒の甘い匂いがかすかに漂う。


「かわいい、かわいい」


「お母様、酔ってるでしょ」


「酔ってないわ。私は女神よ」


「はいはい」


リーンは苦笑しながらも、女神の腕をそっと支え、その温もりに自分の体を預けた。壊れ物を扱うような優しさで、女神の乱れた髪をそっと耳にかける。

広間の隅では、真が魔王と静かに杯を交わしている。

二人の間には、もはや敵意の欠片もなかった。


「真、一つ聞く」


「はい」


「お前は、なぜそんなに働く」


真は杯を見つめ、それから静かに答えた。


「自分が働けば、誰かが楽になる。前の職場でも、ここでも、それは変わりません」


「それだけか」


「それだけです」


魔王はしばらく黙り込み、それから杯を掲げた。


「ならば、私も少しは働くとするか」


「それがよろしいかと、ただ無理はしないでください。」


「お前にだけは言われたくない!」


二人の杯が、静かに触れ合った。松明の灯りが、その姿を壁に映し出す。


宴が終わりに近づく頃、魔王が立ち上がった。


「今日はこの辺でお開きとしよう。三人には、客室を用意してある」


「ありがとうございます、父上」


リーンは女神の肩を支えながら立ち上がった。女神はまだ「かわいい」と繰り返している。魔王はそんな女神を一瞥し、小さく笑った。


「大黒」


「はい」


「娘のことを、頼む」


真は魔王の目をまっすぐに見つめ、それから静かに言った。


「承知しました。手続きを進めます」


「……そういう意味で言ってるんじゃないんだがな」


魔王は笑い、それから真の肩を軽く叩いた。


魔王はそれを見つめ、小さく呟く。


「妻よ。あの子は、いい男を選んだようだ」


松明の灯りが揺れ、その炎が彼の横顔を優しく照らしていた。


「女神よ…お互いの世界をより良くするために手を取り合える事を誇りに思う」


魔王は片膝をつけて女神に手を差し出した。


「レナスよ」


この日、真とリーンも初めて女神の名を知ることになる。


「女神様にも名前があったのですね。」


「真さん、手帳!書き留めて!」


「承知!」


女神と魔王は二人の呼吸の良さを目の当たりにして笑った。


「お前たち…その呼吸は熟年夫婦に負けぬぞ!」


「…父上ったら!」


リーンは真剣な表情で真を見つめた


「リーンさん?」


礼服が、松明の灯りに照らされて濃紺に光っている。


リーンはその背中を見ながら、今回のことを思い返している。


真が礼服を着てきたこと。


パーティ証明書を持ち出していたこと。


婚姻届の仮申請の話を、父に当然のように報告したこと。


そして——「順番を経て、正式な婚姻へと進むべき」と言ったこと。


女神が「どうしたの?」と尋ねるより先に、リーンは口を開いていた。


「真さん…」  


「はい」


「……ギルドで感じた違和感…気合いの入った礼服を丁寧に着てたよね」


「ええ、重要案件でしたので」


「わざわざパーティ登録の証明書を持ち出したのも見てた。用意周到の真さんだから、その理由は気にも留めなかったけど…」 


「よく見てますね」



「その理由って……話の目的は平和調停みたいなものだと思ってたんだけど…」


「お父様に結婚の承諾を頂かないと、婚姻の本提出が出来ませんので」


リーンは言葉を失う。


真はいつもの静かな目でリーンを見つめている。

冗談や無頓着とは違う。

真剣な目だった。


「……いつから」


「いつから、とは?」



「その……結婚しようと思ってたの」


「パーティ登録を受理した時点で、次のステップとして当然——」


「そういうことじゃなくて!」


リーンの声が廊下に響く。

真はきょとんとしている。


「私がパーティをお願いしたのは…確かに少しでも多く真さんと一緒にいたかったから…依頼を受けたかったから。」


「光栄です」


「パーティ登録を二つ返事で返してくれた事は本当に嬉しかった——」


「光栄です」


リーンは俯く。

拳をぎゅっと握りしめて、それから顔を上げる。

その目は潤んでいるのに、口元は震えながら笑っていた。


「真さんが今日してくれたの……それって、プロポーズって事でいいんだよね…」


(真さんの答えは分かりきってる…でも、ちゃんと聞かないと不安…この瞬間がとても怖い…)  


真は少しだけ考えてから、手帳を取り出した。


「プロポーズ…」


ページをめくり、何かを確認する。それから顔を上げて、静かに言う。


「プロポーズと受け取って頂いて間違いありませんが…クーリングオフは既に日数も経過してるのでお受け致しかねます。」


「クーリングオフ!?何?それ?」


リーンは声を上げて笑った。笑いながら、涙がこぼれた。


「もう!言ってることが全部おかしい!」


「そうでしょうか」


「そうだよ!でも——」


リーンは真の胸に飛び込む。

真は少しだけ驚いた顔をして、それからゆっくりと、彼女の背中に手を回した。


「……ありがとう」


「どういたしまして」


魔王と女神は数歩離れた場所で立ち止まり、その光景を静かに見つめている。


「女神よ…娘、可愛いだろ」


「本当、あなたに似なくて良かったわ」

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