サクラ
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
少女は見た感じ、俺たちと同年代のようだが、少しだけ幼い印象を受ける。手に籠を持っており、普通の服装をしているので、シスター(教会関係者)ではなさそうだ……と思いきや、少女は迷うことなく俺たちに歩み寄り、気さくに話し掛けてきた。
「こんにちは! 教会に何か御用ですか?」
「え? あ、その……。あの鐘を……」
「鐘?」
なぜか、しどろもどろになるラップに笑い掛けながら、少女は不思議そうに首を傾げる。
「あの鐘が気になるって……俺の友達が言うから……」
「別に友達じゃないぞ?」
「うるせー! 今は、いいだろ! そういうやり取りをしなくても!」
ラップが赤面して恥ずかしそうに俺を怒鳴りつけると、少女は楽しそうに笑った。
「とっても仲良しなんですね。待っていてください。今、牧師様を呼んでくるので」
「あ、ちょっと」
踵を返して教会に戻ろうとする少女を、俺は咄嗟に呼び止めた。
「何でしょう?」
「普段、あの鐘を鳴らしているのは、牧師さん?」
「いえ」
少女はまったく考えることなく、ノータイムで首を左右に振った。
「それじゃあ、あの鐘を鳴らすのは……?」
誰なの? と。
俺がプリムラの書き残したメモ書きと同じ言い回しで尋ねると、少女はにやりと悪戯っぽく微笑んだ。
「あの鐘を鳴らすのは――――私です」
「えっ?」
「冗談です!」
そう言って楽しそうに笑うと、少女は小走りで教会に戻っていった。
なんというか、信じられないくらい元気で快活な少女だ。性格が異様に人懐っこい。アミも似たような反応をすることはあるが、それは俺が幼馴染だという大前提があるからこそ見せる人懐っこさであって、初対面の相手に対して同じことをやってしまう少女は、人に対する警戒心のハードルが低すぎると言っても過言ではない。
「……なんか、かわいい子だったな」
「は?」
「あ、いや! 何でもない!」
思わず小声で呟いたラップは、俺に聞き返されて正気に戻ると、自分の頬を両手でばちばちと叩いて誤魔化した。
「勘違いするなよ。あの子、多分、誰に対してもあんな感じだぞ」
「分かってるっつーの!」
意外にも純朴な反応を見せるラップに「お前がモテているわけではないのだから調子に乗るな」と厳しい現実を突き付けたところで、再び教会の扉が開いて、先程の少女と牧師らしき人物が外に出てきた。
「やあ、はじめまして。この教会の牧師を務めております、プレトル・イストワールと申します」
「サクラ・イストワールです」
牧師に続いて、少女も自己紹介をする。少女はサクラという名前らしい。苗字が同じということは、二人は親子なのだろう。
(随分と和風な名前だな……。日本人っぽいというか)
もっとも、それをいうなら幼馴染の「アミ」も日本人っぽい響きの名前なので、この世界では別に珍しくないのかもしれない。
俺とラップも自己紹介をして名乗ったところで、
「それじゃあ、私は行ってきます」
「遅くならないように、気を付けるんだよ」
サクラは牧師と短いやり取りをした後、籠を持ったまま、元気に出掛けて行った。商店街に買い物にでも行くのだろうか?
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