底辺街道バクシン中
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
A組に編入されてから、ひと月が経過した。
結論から言うと――――何度、心が折れそうになったか分からない。
それくらい、A組の生徒の実力は抜きん出ていた。なにしろ、クラスメイトの大半がアカデミー卒業後は王国軍に入ることを希望しており、将来を見据えた鍛錬を今から始めているのだ。当たり前のことだが、漫然と努力するよりも、目標を定めて努力する方が効率は良い。
正に、A組は少数精鋭という言葉が相応しいエリート集団だった。
そして、ペダルから「やる気と伸びしろに期待」という下駄を履かされて、オマケでA組に編入した俺は、実力で序列を付けるなら正真正銘の最下位。ド底辺だった。
C組からスタートして、B組、A組と、順調にステップアップを積み重ね、自分もなかなかやるじゃないかと驕っていた鼻っ柱を、見事にへし折られてしまったのである。
これは間違いなく、ループの際に記憶がリセットされてしまうことの弊害だろう。苦労したことを忘れて、単なる情報だけで自分が強くなっていると理解してしまうから、こんなことになるのだ。
そんな、ボロボロになった俺の心を支えてくれたのが「ちょうど良い強さのライバル」ことラップだった。
「お前が! A組と! B組の差は、ほんの少しだなんて言うから! 真に受けちまったじゃねーか!」
「知るか!」
「うらぁっ!」
「ぐあっ!」
今日もまた、放課後に模擬戦を申し込んできたラップを返り討ちにすることで、俺の自尊心は癒された。やはり、敗北で打ちのめされた心の傷には、勝利によって得られる自己肯定感が薬になる。
「見たか! これがA組の実力だ!」
「偉そうにするな! 三回のうち一回は俺が勝ってるだろうが!」
ラップは悔しそうに反論するが、勝ち越している以上、俺の方が強いことに変わりはない。
そして、ここから先はボーナスタイムだ。
「さあ、行くぞ! 四本目だ!」
「待て! 連続で四試合はキツイって!」
「問答無用!」
剣の技術ではしのぎを削る俺とラップだが、過去の周回でひたすら走り込んだ成果により、スタミナでは俺が圧倒しているのだ。
ラップがまともに剣を振れるのは、せいぜい三試合目まで。
そのため、後半戦は俺が圧勝するのがいつものパターンだった。
「いつも休憩なしの五本勝負や七本勝負にしやがって! ずるいんだよ!」
「知らんな」
「このスタミナお化けが! ぜぇ……ぜぇ……」
地面に座り込み、滝のように汗を流しているラップをドヤ顔で見下ろしながら、俺は涼しい顔をして汗を軽く拭いた。
実力では底辺街道をバクシン中の俺だが、スタミナだけならA組の中でも上位に食い込む自信がある。選抜試合の内容を模擬戦ではなく、持久走に変えてほしいくらいだ。
「それはそうと。この前、頼んだことは調べてくれたか?」
「はぁ? 人探しの件か? ぜぇ……ぜぇ……」
「そうそう。それそれ」
俺が頷くと、ラップはすぐには答えず、何度か深呼吸をして息を整えた。
「……誰にも言うなよ?」
「言わないって」
「親父の名前を使って、アセビの町にある宿泊施設の宿帳を調べてみたが……レジーナって名前は見つからなかった」
「そっか」
ラップの答えが、予想していたとおりのものだったため、俺は特に驚かなかった。
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