はじめてのA組
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
「うーん……。どうすっかなぁ」
例によって、俺をコテンパンに撃退した後、ペダルは悩ましそうに考えはじめた。
(これは……いけるか?)
たしか、前回までは悩むこともなくB組の判定をされていたはずだ。
今更、B組かC組かで迷うはずがない。ペダルは、A組かB組かで迷っているのだ。
「A! A! A!」
「その異常なモチベーションの高さ、気持ち悪いんだよな……」
土下座しながらジリジリと這うように接近する俺を見て、ペダルは恐怖したようだ。
「分かった、分かった。じゃあ、向上心の高さと伸びしろを買ってA組で」
「いよっしゃぁぁぁぁぁ!」
サッカーでゴールを決めたストライカーのように、俺が雄叫びを上げると、周囲からは苦笑交じりの拍手がパラパラと起きた。
「ふふ……。世界から祝福されているのを感じますよ」
「世間から馬鹿にされているだけだぞ」
ペダルは呆れたようにため息を吐いたが、すぐに先程の勝負の寸評をしてくれた。
「体力は申し分なし。剣の腕前についても、一応、基礎的な動きはできている。我流で鍛えたのなら、相当な努力をしたんだろうな。お前みたいにやる気のある奴は嫌いじゃない。A組の訓練は厳しいから、弱音を吐くなよ」
「勿論です。毎日、血反吐を吐くまで剣を振ってやりますよ」
「……やっぱり、お前はそこまで頑張らなくていい」
ほどほどに頑張れ、と。
この時の俺は、アカデミーの教官から「適度に手を抜け」と指導された初の生徒(やる気がありすぎて逆に気持ち悪い生徒)として、教官や生徒たちの間でちょっとした有名人になったらしい。
「シノブ、どうだった?」
「A組だったよ。ふふふ……」
編入手続きの書類を受け取った後、アミが試験結果を尋ねてきたので、俺がドヤ顔を隠そうともせずにA組の身分証を見せると、
「凄い凄い! シノブ、強かったんだね!」
アミは自分のことのように大喜びしてくれた。相変わらず、理想的な幼馴染だ。
「見て見て、私もA組!」
「クラスメイトだな!」
「やったね!」
いぇーい、と。
バカップルのようにハイタッチを交わしながら小躍りする俺とアミを、各々の教室に向かう生徒たちが変人を見るような目で眺めながら通り過ぎていく。
「……むっ!?」
その中にクランの姿を見つけたので、俺は喜びの舞を中断して、すくに声を掛けた。
今回、A組になったことで、B組のクランとは交流する機会が確実に減ってしまうため、早めに知り合っておいた方が良いと判断したのだ。
ループの際に記憶がリセットされているにも関わらず、なぜ、初対面であるはずのクランをひと目で判別できたのか?
答えは簡単だ。
ペダルとクランが親子の関係だからである。
毎回、ペダルは自分が試験管を担当する前に、暇潰しと称して弓矢の試験会場にいるのだが、その真の目的は愛娘であるクランの試験を見届けることだったのだ。よって、クランと話すのは初めてでも、その容姿は事前に確認済みなのである。
「俺、シノブ・テンドー」
「え?」
「俺、シノブ・テンドー。よろしく!」
「あ……はい。クラン・アーベントイヤーです」
いきなり自己紹介されたクランは、驚いてびくっと肩をすくめたものの、すぐに作り笑いを浮かべて、恐る恐る、俺と握手を交わした。
「こら。何、いきなり女の子をナンパしてるの」
駄目でしょ、と。
アミがお姉さん風を吹かせて、後ろから俺の頭をチョップしてくる。
「ごめんね。驚かせちゃって。クラス分け試験でA組になれたから、ちょっと浮かれちゃっているみたいで……」
「え……。A組なんですか? 凄いですね」
同性のアミが会話に入ってきたことで、クランは少しだけ安心したようだ。
その後、アミとクランも自己紹介と握手を済ませて、俺たちは初日のうちに「会えば挨拶するくらいの関係」になることができた。
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