あの鐘を鳴らすのは貴方
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
「これ、何なんですか?」
プリムラが書き残してくれた最終日の記録に目を通して、俺は首を傾げた。
メモ用紙には「あの鐘を鳴らすのは貴方?」と書かれている。
「ふざけてんのか、てめぇ」
「口が悪いです! やめてください!」
プリムラは半泣きで抗議したが、どう考えてもふざけているようにしか見えない。
「……あの鐘って、何のことですか? それを、俺が鳴らせばいいんですか?」
「さあ……どうなんでしょう?」
「――――殺すぞ」
「やめてください!」
仕方ないじゃないですか、私の記憶もリセットされているんですから、と。
プリムラは被害者ヅラをかましてきたが、それならそれで、記憶がリセットされても真意を推察できるように、何らかの工夫をすべきだと思う。
それができないから、プリムラはポンコツなのだ。
(こんな歌のタイトルみたいなポエムを書かれて、どうしろと……?)
兄貴も何回か周回を重ねる中で、プリムラが相棒ポジションにいる限り、無限ループの謎を解き明かすことは不可能だと判断したのではないだろうか?
「でも! でもでも! 今回は最後まで生き延びることができたじゃないですか!」
「最後まで生き延びたことにより、戦争に負けることが無限ループ発動のトリガーになっているらしいことが判明したので、事態はより深刻になりましたけどね」
「それでも進歩は進歩ですよ! 一歩ずつ前進していきましょう!」
(必死だな)
どうせ、次の挑戦者を探すのが面倒くさいとか、そんな理由なのだろうが――――
でもまあ、その考え方は嫌いじゃない。
ギャルゲーだって、ヒロインの好感度を少しずつ上げて、反応が徐々に変化していく過程を眺めるのが楽しいのだ。噂されると恥ずかしいと言っていたヒロインが、頬を赤らめて一緒に帰ろうと誘ってくる瞬間、カタルシスが解放されるのである。
……まあ、その後は、他のヒロインの好感度に悪影響を与えるデメリットを避けるために、今度はこっちが一緒に帰るのを断ってやるのだが。
「――――仮に、魔王軍との戦争に勝つことが無限ループを止める方法なのだとしたら、次はエルフの国の滅亡を阻止しないとマズいですね」
魔王軍とは、獣人の国、人間の国、エルフの国の三国が共闘することで、やっと膠着状態に持ち込んでいる状況なので、どこか一つでも欠けてしまうと、二正面作戦を余儀なくされる国が発生して、そこから一気に戦線が崩れてしまうのだ。
二年目に起こる獣人国の裏切りについては、前の周回で阻止することができたが、次は三年目に起きるエルフの国の滅亡を阻止しなければならない。
「やりましょう!」
「でも、どうやって?」
現状、東にあるエルフの国との接点は一つもない。
「何とかなります! やってやれないことはないはずです!」
「……その、根性論ですらない丸投げの他力本願はやめてほしいんですけど」
結局、今の俺にできることは、地道な情報収集以外にないらしい。
俺はため息を吐いて、気持ちを切り替えた。
「そういえば、そろそろいけるかもしれませんね」
「何がですか?」
俺の発言にピンときていない様子のプリムラは、きょとんとした顔で首を傾げた。悔しいがとても可愛い。
「分かりませんか? ほら。AとかBとかCとか、あったじゃないですか」
「……エッチな話ですか?」
「違うわ!」
というか、ABCから真っ先にエロを連想するのは、さすがに発想が古すぎる。
いったいプリムラは何歳なのか……と思ったが、藪蛇になりそうな匂いがプンプンするので、俺は何も聞かないことにした。
「そうじゃなくて、初日にあるクラス分けの試験ですよ」
チート能力である「強くてニューゲーム」の恩恵を受けている俺は、前回と前々回だけでも通算五年分くらいの鍛錬を上積みしているはずだ。これはもはや、子供の体力テストに大人が恥ずかしげもなく出張ってくるようなものである。
さすがに、そろそろA組に手が届いてもよいのではないかと思うのだが。
「……そうですねぇ。誰にでも才能の限界というものはありますから」
「それ、落ちた時に言うセリフだろ!」
しかも、励ますでも、慰めるでもなく、諦めさせる時に言うセリフである。
ふざけんな、お前だけは俺を応援しなきゃ駄目だろ、と。
俺はプリムラを罵りながら、次のループに突入した。
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