世界はループしている
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何はともあれ、人買いグループを今回も生け捕りにしたため、ファウル王国は獣人国の政情不安に関する情報を入手することができた。
二学期になってから、西側の国境の防衛が強化された――――が。
今回は、獣人国の奇襲そのものが発生しなかった。
やはり、レジーナが帰国したことで、獣人国の政情不安が解消されたようだ。
二年目以降も、獣人国はファウル王国と共に魔王軍と戦い続けたため、戦局は一進一退の膠着状態が続いた。
――――だが、それも一時的な延命に過ぎなかった。
三年目に、前回と同様、エルフの国が滅亡してしまったため、ファウル王国は東と南の二正面作戦を余儀なくされ、結局、戦線は崩壊してしまったのだ。
アカデミー卒業を間近に控えた三年目の三学期、北上した魔王軍は、遂に王都フリーデンに攻め込んだ。
王都で暮らしていた両親は、母親だけがアセビの町に疎開して帰ってきたが、王宮で働いている父親は、最後まで王都に残る決断をした。
王都陥落の報が届いたのは、魔王軍が王都を包囲してから三日後のことだった。
俺は、いざという時にアセビの町を防衛する予備戦力として、クラスメイトとアカデミーに泊まり込んでいたが、このまま魔王軍と剣を交えることなく、降伏することになりそうだ。
早ければ明日にも、占領軍がアセビの町にやって来るだろう。
俺と、ラップと、アミは、町を抜け出して、北の山の展望台を訪れていた。
もうすぐ、自由に外出はできなくなる。クラスメイトとも、離れ離れになるかもしれない。
できることなら、このまま逃げ出してしまいたいが、家族を見捨てることはできなかった。
せめて、アセビの町に派遣される魔王軍の指揮官が、残忍で酷い性格をしていないことを願うばかりだ。
俺はふとレジーナのことを思い出し、いつだったか、彼女がこの場所で口にしたセリフを思い出した。
戦争で一番やってはいけないことは、負けること。
――――本当に、そのとおりだ。そのとおりになってしまった。
今頃、レジーナは獣人国で、魔王軍との最後の戦いに備えているのだろうか?
頑張れ――――負けるな。
俺は心から彼女の無事を願ったが、恐らく、奇跡の大安売りは起こらないだろう。
「シノブ……。これからどうなっちゃうんだろう……」
涙を堪えきれなくなったアミが、俺に抱き着いて弱音を吐いた。
(大丈夫。……何も心配しなくていい)
俺は、口に出せば空虚になってしまう言葉を、心の中で何度も繰り返した。
今回は駄目だった。
でも、次は――――次回は何とかしてみせる。
次回が駄目なら、その次に何とかしてみせる。
世界はループしている。
だから、まだ、終わりではない。
俺が諦めない限り、この戦争で人類が敗北することは無いのだ。
俺が悔しさに耐えながら、高台から見える景色に目を凝らしていると――――
どこからか、鐘の音が鳴り響いた。
「何だ?」
ラップが驚いたようにきょろきょろと周囲を見回している。
俺だけではなく、二人にも聞こえているようだ。
涼やかで、軽やかな、場違いなくらい清涼な音。
アカデミーの時計塔にある時報を告げる鐘の音と同じものだ。
――――だが、どこから聞こえているのだろう。
アセビの町にある教会の鐘の音が、ここまで響いているのだろうか?
俺たちは狐につままれたように、互いに顔を見合わせた。
そして――――
*
『世界のループについて。
とうとう、三年間、生存することができた。
どうやら、魔王軍との戦争で、人類側が敗北するとループが発生するようだ。
無限ループを解消するためには、魔王軍に勝利しなければいけないのだろうか?
そんなこと、一人でできるはずがない。
でも、やらなければならない。
仲間を集めればよいのだろうか? 何か方法を考えなければ』
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