少し遅かったようだ
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次回の更新は明後日です。
少しだけ重くなった雰囲気を払拭できないまま、山登りを再開した俺とレジーナは、今では空き家になっている貴族の別荘へと続く分かれ道に辿り着いた。
そこで――――見つけてしまった。
複数の人物が出入りしていると思われる比較的新しい足跡が、脇道に続いていたのだ。
(あいつら、この時点で既に入り込んでいるのかよ……)
だとすると、人買いグループはかなり早い時期から北の山に潜伏していることになる。
はっきり言って、誤算だった。山奥に身を潜めて、いったい何をしているのだろうか?
「シノブ、この道は何だ?」
「ええと……この先には貴族の別荘があるんだ」
俺は逡巡したものの、他に答えようがないので、今は空き家になっているという情報だけを伏せて、本当のことを伝えた。
「ふーん……。怪しいな」
「何が?」
「毎年、遭難者が出ているんだろう? 貴族が暇潰しの道楽で、ろくでもないことをしているのかもしれない」
「うーん、どうかなぁ」
俺は冷や汗をかきながら、どうすればレジーナが深入りせずに、町まで引き返してくれるのかと、思案していた。
だが、何も思いつかない。
俺が逆の立場なら、こんな面白そうな場所を見つけたら絶対に首を突っ込むし、この場所が危険だという確証を得るまでは、引き返したりはしないからだ。
「こっそり調べてみないか?」
「いやいや。そこに足跡があるじゃん。明らかに人が出入りしているよ。見つかるって」
「その時は、迷い込んだふりをすればいい。私は旅行者だから、どうとでも言い訳ができる」
「できないって」
地元民である俺に案内されているのに、旅行者だから何も知りませんでしたという言い訳は、さすがに通用しない。
「それに、万が一、レジーナの言ったことが本当だった場合、旅行者の方が危ないよ」
旅行者というのは、つまるところ余所者だ。余所者が一人いなくなったところで、アセビの町で騒ぎになることはない。行きずりの旅人が、誰にも何も言わずにまた旅に出たと思われるだけだからだ。
そのことを伝えると、レジーナは嬉しそうに目を細めた。
「シノブ、なかなか頭が回るじゃないか」
「呑気なことを言ってないで……」
「――――だが、少し遅かったようだぞ」
そう言ってレジーナが指さした方向には、ナタのような武器を持ってゾロゾロと歩いてくる三人の男の姿があった。
*
「……なあ、シノブ。あれは本当に貴族か?」
ゆっくりと近づいてくる男たちを見ながら、レジーナは悠長にそんなことを呟いた。
「貴族本人じゃなくて、雇われている用心棒とか護衛とか、そういう人たちだと思うよ」
「だとしたら、ろくな貴族じゃないな」
嘲るような失笑。
この期に及んでも、レジーナは余裕綽々のようだ。
(マズいな。武器が……)
前回、ラップやクランと一緒に山に登った時は、弓の訓練をするという建前があったので、それなりに武装していたが、今回は杖の代わりに持参した木剣くらいだ。レジーナに至っては完全なる手ぶら。
なぜ、こんなにも落ち着いていられるのだろうか?
「そこで止まれ」
声が届く距離まで接近したところで、レジーナの方が先に男たちに声を掛けた……というか、命令した。
まるで、そうするのが当然であるかのような、上からの物言い。あまりにも違和感が無く、自然な口ぶりだったので、男たちも面食らって、立ち止まってしまっていた。
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