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イケメンヒロイン

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 そして、つつがなく選抜試合が終わり、レジーナと約束した日がやってきた。


 北の山で最初の失踪事件が起きるのは、交流戦が終わった後のタイミングなので、選抜試合直後の今ならば、まだ人買いグループは北の山にいない可能性が高い。


 レジーナには申し訳ないが、今日は北の山で山菜や薬草を摘んで、帰ることになるだろう。


「シノブ、久しぶりだな。選抜試合はどうだった?」


「負けました」


 今回も対戦相手はA組の剣のエースであるエスタだったのだが、前回とは異なり、エスタは足を負傷しなかったため、交流戦を辞退することもなく、補欠枠も空席にならなかったので、俺は普通に予選敗退となった。


(狙って怪我をさせるなんて、無理な話だよな)


 理屈の上では、前回とまったく同じ試合運びをすれば、エスタは今回も怪我をした可能性が高いのだが――――それは机上の空論だ。


 踏み込む足の角度や、体重の乗せ方や、剣を振るタイミングまで、何から何まで前回と同じように戦うことは、不可能に等しい。似たような試合運びと、まったく同じ試合運びは、天と地ほども違うのだ。


「なんというか、実力差をこれでもかと思い知らされた感じかなあ。越えなくちゃいけない壁の高さを、改めて実感したよね」


「実力差を知れたのなら、それは、いつかの勝利への第一歩だ。諦めずに頑張れ」


 よく頑張ったな、偉いぞ、と。


 レジーナは俺の頭を撫でてくれた。


「お姉ちゃん!」


「お姉ちゃんではない」


 調子に乗って抱きつこうとする俺の額をぴしゃりと叩き、レジーナは回れ右をした。


「さあ、北の山に行くぞ! こっちは今日という日を、待ちわびていたのだからな。おかげで下調べはばっちりだ」


「それなら、一人で行こうとは思わなかったの?」


「無粋なことを言うな。私はシノブと一緒に行くのを、楽しみにしていたんだ」


「やだ……イケメン……」


 トゥンク……と。


 乙女心を刺激されてときめく俺を、レジーナはジト目で睨み付けた。


「気持ち悪いからやめろ」


「はい」


「――――さあ、今度こそ出発だ!」


 そして、俺たちは意気揚々と北の山に向かった。


     *


 春の山は、野草の宝庫だ。


 俺とレジーナはピクニックを楽しむかのように、山道を登りながら花や山菜を摘み、野鳥を観察し、開けた場所で弁当を食べた。


「美味いな。これはシノブが作ったのか?」


「いや。近所の幼馴染が作ってくれたんだ。初めて会った時、俺の隣にいたんだけど」


「ああ、アミか」


 意外なことに、レジーナはアミのことを覚えていた。


「あれから、町で見かける機会があったので、その時に話したことがある」


「そうなんだ。だから、アミも弁当を作ってくれたのかな」


 これがギャルゲーなら、俺はヒロインとのデートで食べる弁当を、他のヒロインに作らせるクズ主人公になってしまうのだが、今回に関して言えば、俺は何も頼んでいないのに、なぜかレジーナと出かけることを知っていたアミが、自発的に弁当を作ってくれたのだ。


 どうやら、レジーナ本人の口から、俺と一緒に出かけるという情報を入手したらしい。


 それにしても、少しも嫉妬することなく弁当を作ってくれるあたり、まだアミは俺のことを手間のかかる弟くらいにしか思っていないのかもしれない。なかなか攻略の難しそうな幼馴染だ。

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