そういうのでいいんだよ
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
(これは……見つけたかもしれない)
未来を変える可能性のある、運命の転換点。
レジーナが獣人国のお姫様であることが大前提ではあるが、説得するなり何なりして祖国にお帰りいただくことができれば、年明けに獣人国が奇襲を仕掛けてこなくなるかもしれない。
問題は、どうやってレジーナを帰国させるかだが……。
(目的を達成すれば、満足して帰ってくれるか……?)
つまり、山のように大きな怪力の男や、百年以上生きている魔法使いを探して、レジーナの目の前に連れてくればよいということだ。
(……いや。無理だろ)
もし、そんな連中が実在するのであれば、とっくの昔に町で噂になっており、わざわざ探すまでもないはずだ。というか、そいつらを説得して、獣人国の奇襲を防いでもらったり、魔王軍を撃退してもらったりする方が早いまである。
「レジーナが探している変なことって、この町限定なの? 王都とか、隣の獣人国とかじゃなくて」
「そうだ。アセビの町で起こる事件や、不審人物を探している」
軽くカマを掛けるつもりで獣人国という言葉を使ってみたが、レジーナは特に目立つ反応を見せなかった。先程、お嬢様という言葉を使った時に見せた露骨な反応と比べると、明らかに自然体であり、平然としている。
「ちなみに、変なものを探している理由は?」
「前にも言っただろう? 単純な好奇心だ」
これも即答。
だが、これに関しては、嘘だろうなと思っている。
いくら経済的に裕福でも、単純な好奇心から、一つの町に長期滞在してまで「変なもの」を探すというのは、動機として弱すぎる。
それに、百歩譲って単純な好奇心だけが動機だとしても、それならそれで、場所をアセビの町に限定する理由は無いはずだ。
(何か、あるんだろうな。アセビの町にこだわる理由が……)
俺はしばらく考えたものの、何も思いつかなかったので、切り口を変えることにした。
アセビの町で本当に起こる「変な事件」を教えてしまうことにしたのだ。
「そういえば、この町の北に山菜とか薬草が採れる山があるんだけど」
「うん。今はそういう時期だな」
「雪も残っていない安全な山なのに、毎年、どういうわけか遭難者が出るんだよね。なんで、こんな山で遭難するの? って、毎年、思うんだけど。それが変というか……って!?」
最後まで言い終わらないうちに、レジーナからガシッと肩を掴まれた。
「なぜ、それをもっと早く教えてくれないんだ!?」
そういうのでいいんだよ、そういうので、と。
レジーナは、ようやく念願の探し物を見つけたとでも言わんばかりに、目をキラキラさせて俺に笑いかけた。
「今から調査に行こう! すぐに行こう!」
「今から!?」
さすがに、それは性急すぎる。アセビの町で失踪事件が起こるのは、まだ先の話だ。
「近い山ではあるけど、今から行ったら明るいうちに帰ってこられないよ」
「じゃあ、明日にしよう!」
「平日はアカデミーがあるし」
「ならば、次の休みだな!」
――――駄目だ。完全に火がついてしまった。
これから失踪事件が起こると言うと「なぜ、知っているんだ」という話になってしまうため、話を盛って「毎年、遭難事件が起こる」ということにしたのだが、裏目に出てしまった。
「ら、来週、交流戦のメンバーを決める選抜試合があるから……。交流戦に出ることを目標にしてきたので、今はそれに集中したいというか……」
しどろもどろになりながら、俺がかなり苦しい言い訳で断ろうとすると、
「そうか……。では、選抜試合が終わってからにしよう」
レジーナは、あっさりと引き下がった。
「いいの?」
「目標にしている試合が近いのだろう? ならば、それに専念するといい。よかったら、私も練習に付き合ってやるぞ?」
「いや、そこまでは」
適当にはぐらかすつもりが、物凄く誠意ある対応をされてしまったので、逆に申し訳ない気持ちになってしまった。
「それじゃあ、またな。選抜試合、朗報を待っているぞ」
「うん……。頑張りマス……」
選抜試合明けに会う約束をした後、俺は罪悪感に苛まれながら、レジーナと別れた。
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