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やることが山積み

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

『二年目以降の問題。


 獣人国とも交戦状態になるため、二正面作戦に耐えなければならない。正直、これは個人の力でどうにかなる問題ではない。獣人国の政情不安について調べる必要がある。


 家族の問題については、今のところ打つ手無し。干渉するのであれば、王都で一緒に暮らす必要がある。


 クランが二年目の終わりに音信不通になった件については、何が起きたのかも、無事なのかどうかも分からないので、正直、調べようがない。


 エルフの国の滅亡については、何も情報が無い。


 結論としては、もっと情報収集を強化する必要がある。そのためにも、できるだけ早くアカデミーの本校に編入し、活動の拠点を王都に移したい』


     *


 一年目の一学期。


 これで何周目になるのか分からないが、俺はマンネリになることも倦怠感に苛まれることもなく、わりと新鮮な気持ちでアカデミーの分校に通う生活を送っていた。


 ループする際に記憶もまとめてリセットされてしまう仕様は、最初はデメリットしかないと考えていたのだが、実は逆なのかもしれない。


 もし、俺がすべての周回の記憶を忘れずに引き継いでいたら、膨大な時間の経過と、延々と繰り返される同じ出来事に、辟易していたはずだ。特に、俺は過去のすべての周回で「殺されて」いるので、その時のことも覚えていたら、確実にPTSDを発症していただろう。


 だから、感情も含めた広義の記憶は継承せず、ノートに書き残した情報を記憶の代替にするやり方は、精神を正常に保ちながら調査するには、ベストな方法なのだ。


(とはいえ……。一年目の一学期にやることは、だいたい決まっているからな)


 絶対にやらなければいけないのは、人買いグループを生け捕りにすること。これをすることで、翌年に起こる獣人国の奇襲に、軍が対処できるようになる。


 ただ、それも一時的な延命措置に過ぎないので、更に大きなバタフライエフェクトを引き起こす「何か」を探す必要がある。そんな重要な運命の分岐点がアセビの町に存在すれば……の話ではあるのだが。


(今までの周回では、暇さえあれば筋トレと走り込みをしていたから、今回からは情報収集にもっと時間を割いてみるか)


 そのためには、今まではやらなかったことに、手を出してみるのもいいだろう。


 例えば、アルバイトをしてお金を稼ぐとか。


 アカデミーとは関わりの無い人たちとの交友関係を広げるとか。


 町を隅々まで探索してみるとか。


 手当たり次第に首を突っ込んでみれば、何か新しい発見があるかもしれない。


 そんなことを考えながら、その日もアミと一緒に下校していると――――


 早速、今までの周回では起きなかったことが起きた。


 ちなみに、今回の周回でも俺はB組だ。A組への道はまだまだ遠いのである。


     *


「――――あれ? あそこにいるの、シノブのクラスメイトじゃない?」


 露店の立ち並ぶ大通りに入ったところで、アミが声を上げた。


「どこ?」


「ほら、あそこ」


 アミの指さす方を見ると、そこにはラップがいた。


 今日も今日とて、下校中の女子生徒をナンパしているらしい。


(やる気スイッチが入る前のラップは、本当にろくでもないな)


 俺は呆れてため息を吐いた……が。


 よくよく考えれば、交流戦の出場枠(というか補欠枠)を巡って競合しないように、今回もラップのやる気スイッチが入らないように立ち回っている俺にも、責任の一端が無いわけではない。


「仕方ない。止めよう」


「え? 止めるの?」


「あのまま放置していたら、この町の汚点になってしまう」


「……そこまででは、ないんじゃないかな?」


 アミは若干、引き気味だが、俺は謎の正義感に駆られて、横から口を挟むことにした。


「おい、やめろ。相手が嫌がっているのが分からないのか?」


「は?」


「それ以上は犯罪になるぞ」


「なるか! それに、話し掛けられたのは俺の方だ!」


 ラップは激昂して、ナンパしていたと思われる女生徒を指さした。


「あれ?」


 ――――よく見たら、アカデミーの生徒ではなかった。


 フード付きの厚ぼったい服で頭と体を隠し、肩から大きな鞄を掛けているので、行商人や旅行者のような印象を受ける。いずれにしても、アセビの町の住人ではないだろう。

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