過酷さを増す現実
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次回の更新は明後日です。
一学期が終わり、王都に引っ越すクランとペダルを見送った後、長いようで短い夏季休暇を経て、俺はアセビの町で二学期を迎えた。
二学期は、王都では収穫祭という国を挙げての大きな祭りがあるようだが、アセビの町では特に大きなイベントや事件はなく、平和な日々が繰り返されていく。
だが、前回までの周回とは、明らかに異なる変化があった。
それまでは、門番や衛兵など、町の治安を維持するために最低限必要な人数しかいなかった軍所属の兵士が、二学期になってから増員されたのだ。
まるで、年明けに起こる獣人国の襲撃事件を、軍が予見しているかのようだった。
いったい、何があったのか?
前回までの周回と何が違うのか?
思い当たることは、一つだけだ。
前回はタッチの差で取り逃がした人買いグループを、今回は逮捕しているのである。
もし、人買いグループが西にある獣人国からやって来たのだとすれば――――一応、辻褄の合う説明をすることは可能だ。
多分、軍は人買いグループを取り調べる過程で、獣人国の政情不安に関する情報を入手したのだろう。
その結果、最悪の場合に備えて、西側の守りを強化するために、アセビの町に駐屯する兵士を増やしたのだ。
この仮説の裏を取るために、俺はラップにそれとなく探りを入れることにした。
「人買いの連中が獣人国からやって来たのは間違いない。連中が置き去りにした「商品」の多くが獣人だったらしいからな。獣人の奴隷は、こっちじゃ高く売れるとか、そういう理由だと思う」
いつものように「誰にも言うなよ」と前置きした後、ラップは町長である父親から仕入れた機密をペラペラと喋ってくれた。町長も、まさか自分の息子が情報漏洩の震源地になっているとは夢にも思うまい。
とにかく、人買いグループから聞き出した情報に基づき、獣人国の政情不安が最悪の方向に転んだ場合の保険として、軍が西側の防衛力を強化したことは間違いなさそうだ。
その結果――――
年明けの三学期、予定通りに起きた獣人国の襲撃を、人類国家「ファウル王国」は国境線で食い止めることができた。
(人買いグループを生け捕りにすることで、獣人国の襲撃にも対処できるようになるのか)
風が吹けば桶屋が儲かるとは、よく言ったものだと思う。
正直なところ、獣人国の奇襲に関しては、何をどうすれば有効な対策になるのか、まったく思い付いていなかったので、俺としては一石二鳥の気分だった。
唯一、人買いグループを生け捕りにすることが必要――――手っ取り早く、北の山から追い払って(逃がして)問題解決を図れなくなってしまったことが面倒だが、それでも、獣人国の奇襲に対応するため、軍を動員することに比べたら、難易度が天と地だ。
何はともあれ。
これで、今回の周回で目標に掲げていた二つの問題を、どちらも解決することができた。
このまま二年目、そして三年目を無事に迎えることができれば、今回は無限ループしている世界の「ループする瞬間」に立ち会えるかもしれない。
この時、俺はそんなことを考えていたのだが――――そんなに甘くはなかった。
二年目以降、世界は過酷さを増した。
まず、獣人国が裏切ったことで、ファウル王国は、南の魔王軍と、西の獣人国の二正面作戦を強いられる形になり、あっという間に戦況が劣勢に傾いた。
二年目には、アカデミーの生徒からも志願者を募る任意の学徒出陣が認められ、その結果、A組の生徒の数名が戦死した。
家族については、口に出したくもないほど悲しい出来事が起きた。
クランとはたまに手紙のやり取りをしていたのだが、二年目の三学期を最後に、音信不通になってしまった。
王都から「王家が勇者を召喚した」などという眉唾ものの噂が広まり、一時的に世論が湧き立つこともあったが、その後、勇者が活躍したというに続報を耳にすることは無かった。
そして、三年目に入るころ、決定的な出来事が起こる。
ファウル王国の東に位置するエルフの国が、魔王軍の攻撃に耐え切れずに滅亡したのだ。
これにより、ファウル王国は東と南と西の三方向から、魔王軍に攻められる形になった。
さすがに、これは打つ手無し。万事休すだ。
西の国境が突破されて、アセビの町は王都を防衛するための最終防衛ラインになった。
アカデミーの生徒も否応なく戦場に立たされることになり――――
その日が、俺の最後の記憶になった。
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