プロローグから本編へ
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
「逃した魚は大きかったんじゃないですか?」
「別にいいんですよ。今回の展開は狙ったものではなかったですし。……それに、別の方法でフラグを立てることもできますから」
「そんなことを言っても、毎回、彼女は一学期で転校しちゃうんですよ?」
「それは、別に珍しいケースでもないので」
ギャルゲーにも、クランのように交流可能な期間が限られているヒロインは存在する。
具体的に言えば、プレイ期間の途中でヒロインが(転校などの理由で)いなくなってしまうクランと同じパターンや、最初から特定の日にしか会うことのできない特殊な制限(シナリオ上の設定)が存在するパターンだ。
前者は遠距離恋愛のシナリオで採用される典型的なもので、多くの場合、ヒロインが転校する前にフラグを立てておかなければ、攻略不可能になってしまう。
後者は、特定の時期にしか会うことのできない制限が、そのまま隠しヒロインを「隠す」ためのギミックや理由付けになっているパターンだ。祭りの日にしか会うことのできない謎の美少女が、実は神社に祀られている神様の化身だった……というようなケースである。
俺がプリムラに呼び出される直前にプレイしていたゲームの隠しヒロイン(胡蝶蘭)も、休日に無意味な外出をした場合のみ低確率でエンカウントできるという点で、このパターンに分類される。
このような期間限定ヒロインを攻略するカギは、ずばり機を逃さないことだ。他のヒロインとは異なり交流できる期間が短いため、機を逃さずにフラグを立てていかないと、攻略が間に合わなくなるのである。
つまり、今回の俺のように、怪我をしているから、額に脂汗が浮いているからという(至極真っ当な)理由であっても、告白に二の足を踏んで保留を選択すると、たちまち攻略不可能になってしまうのである。
もっとも、クランの場合は、少しだけ事情が異なる。
引っ越し先が王都だからだ。
「王都なら、もう二度と会えなくなるわけではないので。そんなに焦る必要は無いかなと」
今回は無理だが、もっと周回を繰り返して鍛錬を積み、十分な実力を身に付ければ、クラス分けでA組になることも、交流戦の正規メンバーになることもできるだろう。
そして、交流戦で好成績を収めれば、アミがそうだったように、アカデミー本校への編入を打診されるはずだ。その話を受ければ、俺は二学期から本校に編入するため、王都に引っ越すことになる。
つまり、クランと再会することができるのだ。
――――それだけではない。
王都には俺の家族が暮らしているから、本校に編入すれば自動的に家族と一緒に暮らすことができる。
更に、今回は編入の話を断ったアミも、俺が引っ越すなら話は別ということで、編入の話を受け入れて、一緒に王都にやって来る可能性もある。
まるでパズルのピースが次から次へとハマっていくように、俺にとって非常に都合の良い環境が整っていくのだ。
断言できる。
これがゲームなら、一年目の一学期はただのプロローグ。無限ループする世界の謎を解き明かすための本格的な攻略は、俺が活動拠点を王都に移した時から始まるのだ。
「……念のために聞きますけど、この世界ってゲームじゃないですよね?」
「勿論、リアルな世界ですよ。もっとも、私のような高位の存在にとっては、下界は観賞用のアクアリウムみたいなものだと言っても過言ではありませんけど」
「何なんですか? その、たまに見せる上から目線」
ちょいちょい顔を出してくるので、はっきり言って、非常に感じが悪い。
「アクアリウム一つ、まともに管理できないポンコツのくせによぉ」
「シノブさんこそ、口が悪いんですよ! 言葉で刺してくるの、やめてください!」
繊細なんですから! と。
プリムラは涙目で抗議してきたが、絶対に嘘だ。
「繊細でも図太くてもいいから、ちゃんと自分の仕事をしてくださいよ。サボらずに」
「サボってなんかいません!」
「じゃあ、俺が人買いグループに追い詰められた時、何をしていたんですか?」
「休憩中に何をしていたっていいじゃないですか!」
「……」
サボってはいないが、休憩はしていたらしい。
そういうところだぞ、と。
俺は口にする代わりにため息を吐いて、現実の世界に戻った。
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