活路
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次回の更新は明後日です。
「は?」
男は何が起きたのか、まったく理解できていない様子だ。
だが、自分の二の腕から生えている矢を見て、ようやく「射られた」ことに気が付いたらしい。
「いでででで!」
射られた男は、腕を押さえてその場に蹲った。他の男たちも身を屈めて、矢の飛んできた方向に目を凝らす。
だが、誰もいなかった。
男たちが振り返るまでの間に、素早く木陰に身を隠したからだ。
斜面の下から見上げていた俺だけが、射手の姿を捉えることができた。
――――クランだ。
俺を助けるために、途中で山道を引き返してきたらしい。
クランの弓矢の腕前は、初心者の俺とは比べ物にならない。狙いを定めるまでに時間を掛けすぎるきらいはあるが、その代わり、命中率はB組でも断トツだ。斜面で転ばないようにバランスを取りながら移動している男たちなど、格好の標的に違いない。
(助かった……!)
助けるつもりが逆に助けられてしまうとは、なんともしまらない話だが、結果オーライだ。
俺は安堵すると同時に、斜面から転がり落ちても手放さなかった弓を構えて、慎重に矢を番えた。
それを見て、男の一人が忌々しそうに顔を歪める。
これで、攻守が交代した。
二人が同時に弓を構えることで、片方が矢を射ても、もう片方が敵の動きを封じることができるようになった。
つまり、次の矢をセットしている間に、敵から攻撃される心配がなくなるのだ。
男たちは完全に身動きを封じられたと言ってもいいだろう。
少しでも動けば、容赦なく矢が飛んでくる。
だからといって、動かなくても、それはそれで格好の的でしかない。
数的有利を活かして、三人のうちの二人が犠牲になる覚悟を決めれば、この劣勢を引っくり返すこともできるのだが、男たちには命を懸ける覚悟も、そこまでする理由も無いだろう。
つまり、八方塞になっている今ならば、男たちとも交渉可能。
こちらにとって都合の良い要求でも、身の安全と引き換えならば、簡単に通るはずだ。
「怪我人を連れて、俺たちから離れろ! 攫った町の人たちを解放して、アセビの町から姿を消せ!」
俺が弓で狙いを定めながら要求を突きつけると、男たちは鬼の形相で睨み返してきた。
いくらアカデミーに通っているとはいえ、まだ学生でしかない若造の俺から、こんなことを言われるのはさぞ屈辱だろう。
だが、こちらにも犯罪者の面子に配慮するだけの余裕は無い。ナタのような武器でえぐられたふくらはぎが、痛みを思い出したかのように、ずきずきと自己主張をはじめたのだ。はっきり言って、全身から脂汗が滲み出てきている。
「このクソガキが……」
「やめろ。山を下りたガキが、そろそろ麓に着く頃だ。時間が無い」
さっさとズラかるぞ、と。
男たちはプライドと命を天秤に掛けて、予想どおり保身を選択した。
腕に矢の突き刺さった仲間に肩を貸して、ゆっくりと斜面を登っていく男たちの背中が見えなくなるまで、俺は弓を構え続けていた。
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