↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/91

遭遇

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 人が通らなくなって久しいため、水捌けの悪い窪みが放置されていたのだろう。ぬかるんだ地面には、空き家であるはずの別荘に人が出入りしている痕跡が、はっきりと残っている。


「町に戻ろうぜ」


 最初から人買いグループのことを知っている俺は、さっさと引き返すことを提案した。


 これ以上は危険だ。猛獣の巣穴の前に立っていたら、さすがに襲われても文句を言えない。


「まだ、町の人たちの足跡である可能性も……」


「無いって。貴族の別荘だぞ」


 一般的な平民の感覚を持っていたら、たとえ今は使われていないと分かっていても、貴族の別荘に無断で入り込んだりはしない。まして、地面に残っている足跡は、子供ではなく大人のものだ。なおのこと、あり得ない。


「早く戻ろう。最終的な判断は大人に任せればいいだろ」


「……そうだな。そうしよう」


 ようやっと、ラップは納得した様子で頷いたが――――結論付けるまでに時間を掛け過ぎてしまったようだ。


 道の奥、別荘のある方向から、複数人の男たちがぞろぞろと姿を現した。


(マズい。見つかった……)


 あるいは、もっと早い段階で見つけられていて、既に俺たちをどうするのか「決定済み」である可能性もある。だとしたら、一刻の猶予も無い。


 人数は三人。多くないが、これで全員だという保証は無い。手には――――三人ともナタのような武器を持っている。


「逃げろ! あいつら、俺たちを殺す気だ!」


 俺はとっさの判断で、大声で叫んだ。驚くラップとクランを急かして、いいから走れと背中を押す。


 殺すという強い言葉を使ったのは、二人を軽いパニックに陥らせるためだ。この状況なら、冷静になって考えるよりも、無我夢中になって走る方が良い。


「町に戻って、このことを大人たちに伝えろ!」


 そこまで指示を出したところで、前方にいる人買いグループの男たちが、俺たちを捕まえるために、慌てて走り出した。それを見て、ラップとクランも血相を変えて走りはじめる。


 気安い口調で話し掛けて、俺たちが油断したところを、武器で脅して生け捕りにするつもりだったのだろうか?


(そうはいくかよっ)


 俺は――――二人の後を追うことなく、その場で弓に矢を番えた。クランの訓練に付き合うため、アカデミーから借りてきた弓矢だ。


 人買いグループの男たちは、矢を向けられて、反射的にたたらを踏む。


 構わずに矢を射る。ろくに狙っていないし、弓の腕前もまだまだ未熟。


 矢は明後日の方向に飛んでいったが、それで構わない。


 矢を射たことが重要なのだ。ほんの数パーセントでも、まかり間違ったら死んでいたと意識させるだけで、相手は警戒し、慎重になる。


「ばーか! ろくでなしで、ごろつきの犯罪者! 親の顔が見てみたいぜ! 本当に人間から生まれてきたのか!? ゴミの山から湧いて出てきたんじゃないのか!?」


「なんだと、このクソガキ!」


 初対面であるはずの俺から、いきなり問答無用で殺されかけた挙げ句、更に思い付く限りの罵声を浴びせられて、男たちは憤慨した。


「頭が真っ白になった直後に、顔を真っ赤にして怒ってんじゃねーよ! ばーか!」


「ぶっ殺してやる!」


 完全に激昂した様子で、男たちが向かってきたところで、俺も背中を向けて走り出した。


 男たちが弓矢を持っていないことは、目視で確認済みだ。飛び道具が無ければ、後は捕まらずに逃げおおせるだけでいい。


 俺は坂を下ってメインの山道に戻ると、男たちとの距離を調整してから――――次は山頂に向かって坂道を登りはじめた。


 もう少しで俺を捕まえられそうな距離まで迫っていた男たちは、迷う様子もなく、反射的に俺を追いかけてくる。


(よし……!)


 狙い通りの展開になった。


 これで、山道を下ったラップとクランに、男たちが追い付くことはない。二人は町に戻って、衛兵かアカデミーの教官に助けを求めてくれるはずだ。


 町長の息子であるラップの言葉なら、衛兵は真剣に話を聞いてくれるはずだし、実の娘であるクランの言葉なら、ペダルは無条件で信じてくれるだろう。


 町の人を説得するのは、俺ではなく、ラップとクランの方が適任なのだ。


 あとは、囮になった俺が逃げて、逃げて、逃げまくって、時間を稼ぐだけ。一時間もすれば救援が駆け付けてくれるはずだ。

評価、ブックマーク、いいね、感想などをもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。