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親子

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 当日、俺とラップが待ち合わせ場所であるアカデミーの正門前で待っていると、少し遅れてクランと――――なぜか、ペダルが一緒にやって来た。


「おはようございます!」


 俺とラップが体育会系のノリで挨拶すると、ペダルは片手を上げてそれに応じた。


「おう。おはよう。お前ら、すまないな。今日は、こいつのことをよろしく頼む」


 そう言って、ペダルはクランの頭をぽんぽんと撫でる。


「もう、やめてよ、お父さん」


「……は?」


 恥ずかしそうにペダルの手を押しのけるクランの発言に、俺は目が点になった。


「え? 二人は親子なの?」


「お? なんだ? 知らなかったのか?」


 そうだぞ、と。


 ペダルは隠す様子もなく、あっさりと頷く。一方、クランの方は少しだけ気まずそうに、苦笑いを浮かべていた。


 どうやら、クランの方が意図的に親子関係を隠していたようだ。


「黙っていて、ごめんね? 自分の親がアカデミーの教官だと、いろいろエコひいきをされているんじゃないかとか、そういうふうに思われるのが嫌だったから……」


 そういえば、クランは母親の方も、アカデミーで魔法部門の教官をしていたはずだ。


「なるほど」


 たしかに、両親がアカデミーの教官をしていると聞くと、成績に下駄を履かせてもらったのではないかとか、何かにつけて邪推されそうではある。


「気にするな。俺も似たようなものだから」


 町長の息子であるラップも、共感する部分があったのか、理解者のような顔をして頷いた。


 一方、ペダルは呆れた様子で、クランの言い分を鼻で笑い飛ばした。


「馬鹿馬鹿しい。俺がエコひいきなんか、するわけないだろ」


 A組でもないくせに、と。


 さながら、好きな女子に意地悪する思春期の男子のように、ペダルがクランを揶揄すると、クランはムッとした様子で頬を膨らませた。


 だが、ペダルはそれに気づいていないようだ。


「あ。もしかして、お前が弓矢を選んだ理由って、剣や魔法を選んだら俺たちからエコひいきされると思ったからか? 馬鹿だなあ。ははははは!」


「違うよ! 私が弓を選んだのは、ちゃんと目標にしている人がいるからなの!」


 クラスメイトの前でからかわれたクランは、顔を真っ赤にしてペダルを怒鳴りつけた。


「どうして、そういうこと言うの!? もう、お父さんなんか嫌い!」


「な!?」


 温厚な性格のクランから、かなり強い口調で「嫌い」と言われてしまい、ペダルは雷に撃たれたように固まった。


「あ、おい。ちょっと……」


「話し掛けないで!」


 慌てて呼び止めるペダルを一蹴して、クランはさっさとその場から立ち去ってしまう。


「失礼しまーす」


「ご愁傷様でーす」


 俺とラップは「元気出せよ」と言わんばかりにペダルの背中をぽんぽんと叩いて励ますと、クランの後を追いかけて町の入口に向かった。


「教官って、ああいうところがあるよな」


「ああ。良い人なんだけどな」


 俺の呟きに、ラップが呆れ半分、同情半分で頷く。


 ペダルの長所は、気さくな性格で先程のような学生のノリが通用するところだ。そのせいで教官の中では断トツで話し掛けやすく、特に男子生徒にはウケが良い。


 反面、女子生徒の目にはそれが子供っぽく、不真面目に映ることがあるようだ。相談相手にペダルを選ぶ女子生徒は、殆どいない。


 総合的には、アカデミーでも指折りの人気教官ではあるのだが。


(でも、これではっきりしたな)


 クランの失踪がトリガーとなって、アカデミーの教官が山狩りをすることになる理由。


 それは、クランとペダルが親子だからだ。複雑な事情など何も無かった。


 そりゃ、自分の娘が山で行方不明になったら、ペダルの性格なら単独でも捜索するだろう。そうなったら、懇意にしている同僚の教官の中からも、協力を申し出る者が出てくるはずだ。


 そして、アカデミーの教官たちが動くとなれば、行方不明者が他にもいる以上、町の運営者であるラップの父親も、それに便乗して動かざるを得なくなる。こうして、芋づる式に捜索の輪が広がって大規模な山狩りになるというわけだ。


(まあ、今回は失踪しない……というか、させないけど)


 失踪の原因が何であれ、三人一組で行動していれば、滅多なことは起こらないはずだ。誰かが予期せぬ事故に巻き込まれても、残り二人のうちの一人が現場に留まり、もう一人が町に助けを呼びに行くことができる。人買いグループだって、クラン一人ならともかく、弓矢の訓練で武器を所持しているアカデミーの生徒三人を、軽々に拉致しようとは思わないだろう。


 結果論になってしまうが、ラップが同行することになったのは、安全面だけに着目すれば、良かったのかもしれない。デートイベントとして考えると、論外ではあるのだが。


 ひとまず、俺はクランの安全を確保できたことに胸を撫で下ろして、アセビの町の北にある山に向かった。

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