ふわふわのパンケーキ
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
翌日、俺とアミは朝から宿舎を出て、王都でも有名なカフェに向かった。
この日は何も予定が無いため、帰りの馬車が出発するまでに戻ってくれば、夕方までの自由行動が認められているのだ。家族にお土産を買ってもいいし、王都を観光してもいい。
勿論、俺とアミは前日から入念に計画を立てて、完璧なスケジュールを組んでいた。
「ここのカフェ、パンケーキが美味しくて、昼前には行列ができるみたいだな」
「そうなんだ。でも、開店と同時に行けば大丈夫だよね」
出発前、クランから受け取ったお土産リストに目を通しながら、カフェへの道を歩く。
「それにしても、店の特徴や簡単な地図まで書いてあるの、凄いよな」
「クランちゃん、王都に住んでいたことがあるみたいだよ」
「そうなんだ?」
「今までに何度も引っ越ししているみたい。それはそれで大変だよね」
どうやら、アミは俺の知らないところでクランと親交を深めているようだ。もしかしたら、俺の把握していない情報を持っているかもしれない。
「そういうことは、逐一報告してくれないと困るよ」
「なんでよ……。シノブ、たまに怖いこと言うの、やめなよ?」
アミが若干引き気味に俺に説教したところで、目的地のカフェに到着した。
「地図のおかげで迷わなかったから、開店前に着くことができたな」
「だねー。もう、並んでいる人がいるよ」
さすが人気店だね、と。
俺とアミが先頭で開店待ちをしている女性の後ろに並ぶと、その女性が後ろを振り返った。
――――コレットだった。
「お前もカフェで食べるパンケーキのことを考えてるじゃねーか!」
「何ですの!? そんなの私の勝手ですわ!」
呆気に取られているアミの横で、俺とコレットが口論をしていると、開店準備で店頭に出てきた店員から「三名様ですか?」と確認されてしまった。
*
「パンケーキのセット、三つですね」
俺たちを三人席に案内した店員は、注文を取ると笑顔で立ち去った。
なんとなく、その場の流れで知り合いということになってしまったのである。
「なぜ、私が貴方たちと……」
「それは、こっちのセリフなんだよなぁ」
「まあまあ、二人とも」
不満そうな顔をする俺とコレットを、アミが仲裁するという不思議な構図ができあがった。ちなみに、アミとコレットは初対面だ。
しばらく待っていると、ふわふわのスポンジのように膨らんだパンケーキが運ばれてきた。
「美味しそう!」
アミが歓喜の声を上げる。それを見て、コレットは満足そうに頷いた。
「そうでしょうとも。このお店のパンケーキは私も気に入っていますの」
先頭で開店待ちをするくらいには、気に入っているらしい。
実際、パンケーキを切り分けて口に運ぶと、今までに食べたパンケーキの中で一、二を争うほどの美味しさだった。
「これは満足感が高いな。二枚じゃなくて三枚頼めばよかった」
「私もー」
にこにこしながらパンケーキを食べる俺とアミを見ながら、コレットは満足そうに頷く。
「そうでしょうとも」
「どの立場で発言しているんだよ……。同じ客だろ」
「私と貴方とでは、お客としての意識の高さが違いますの」
「ああ……。いるよね。意識の高い客」
関係者でもないのに、この店のことなら何でも聞いてくれと言わんばかりの自称常連客は、有名店になると必ず自然発生する。
「昔は隠れた名店だったのですが、田舎者の観光客が来るようになってからというもの、特に休日は気軽に立ち寄れなくなってしまいましたわ」
「田舎者の観光客で悪かったな」
「まあまあ、二人とも」
美味しいものを食べている時に喧嘩は止めようよ、と。
アミが仲裁してきたが、実際、そのとおりなので、俺たちは口論を止めた。
その後、俺は情報収集を兼ねていろいろな話題を振ってみたが、コレットはすべての質問に答えてくれた。高飛車な傾向はあるものの、真摯な性格ではあるようだ。
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