はじめての王都訪問
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次回の更新は明後日です。
「はいはい、そこまでにしておけ。ラップ、お前にも才能はあるんだ。先を越されて悔しいと思うなら、もう少し真剣になって訓練を受けろ」
「……分かってますよ!」
ラップは仏頂面で言い返すと、懐から取り出した数枚の銀貨を、俺に手渡してきた。
「これ。B組の皆から」
「え? 貰っちゃっていいのか?」
「ああ。その金で、お土産を買ってこい」
「お土産代かよ!」
てっきり、交流戦での活躍を祈願して、餞別的なものをくれたのかと思ったのに、感動して損をしてしまった。
「シノブくん、これ」
今度はクランが、俺にそっと手紙のようなものを差し出してくる。
文面を見ると、店名と商品名がびっしり記載されていた。
「お菓子なら、そこに書いてあるお店がお勧めだよ」
「お土産リストじゃん!」
てっきり、寄せ書きか、まさかのラブレター的なものかと思っていたのに、またもや期待を裏切られてしまった。
「だって、せっかく王都に行くんだし……。シノブくん、こっちでも買えそうな物をお土産に買ってきそうなんだもん」
「どうせ、補欠じゃ戦勝報告を土産にすることはできないんだから、土産くらいちゃんとした物を買ってこい」
「くそ……。言いたい放題、言いやがって……」
覚えてろよ、と。
まるで悪びれた様子のない二人に、俺は悪態をついたものの、お土産リストに「このお店のパンケーキは絶品。行列のできるお店」と書かれているのを見て、王都に滞在中、必ず立ち寄ろうと心に決めた。
「さ。話はそこまでだ。交流戦に出る生徒は、馬車に乗り込め。ここ数年、分校は本校に負け越しが続いているからな。全勝するくらいの気持ちで頑張ってこいよ」
「あれ……。教官は一緒に行かないんですか?」
俺が意外に思って尋ねると、ペダルはあっさりと頷いた。
「引率は他の教官にお願いした。俺は所用で、この町から動くことができないんだ」
「そうなんですか」
「こう見えて、王都には詳しいからな。同行できたなら、色々と案内してやれたんだが……。まあ、さっき受け取ったメモに書いてある店はどれも人気店だから、時間があったら滞在中に行ってみろ」
「はい。そうします」
俺は頷いて、B組のクラスメイトに手を振りながら、馬車に乗り込んだ。
どうやら、俺が最後だったらしく、客車となっている幌付きの荷台の中には、A組の生徒が勢ぞろいしていた。
(う……。そういえば、B組の生徒って俺だけじゃないか)
品定めするような視線が、俺に突き刺さる。
交流戦のメンバーなんて、エリート揃いのA組の中でも特に上澄みのはずだ。狼の群れの中に、羊が紛れ込んでしまったような場違い感がある。
俺が漂うアウェー感に尻込みしていると、横から聞き覚えのある声に呼び止められた。
「シノブ、こっち。私の隣の席が空いてるよ」
アミだった。
「――――は?」
そういえば、先程、見送りに来てくれた顔ぶれの中に、アミの姿は無かった。幼馴染という俺とアミの関係を考えれば、薄情だと思わなくもなかったが……。
どこにいるのかと思いきや、先に馬車に乗っていたらしい――――ではなく。
「アミ? なんで、馬車に乗っているんだ?」
真っ先に口から出てきたのは、この質問だった。
それもそのはず。戦闘が嫌いなアミは、今回も選抜試合に出場していないのだ。
一勝もできなかった俺が言えた義理ではないが、そもそも選抜試合に出てすらいないアミが馬車に乗り込んでいるのは、さすがにおかしい。
「私もシノブと同じ補欠なんだ。びっくりさせようと思って、内緒にしてたの」
アミ曰く、本当は断るつもりだったのだが、エスタから、俺を補欠に推薦するつもりだから同行してあげたらどうかと説得されて、心変わりしたのだという。
「アミってそんなレベルなの?」
選抜試合に出ていなくても、本人が希望した時点で参加が内定してしまうとか、形だけとはいえ、一応、選抜試合には出場していたエスタ以上の特別待遇だ。
「魔法部門で参加する人は少ないらしくて、補欠でいいから……とは、かなり前から言われていたんだよね」
「そうなんだ」
俺は納得して頷いたが、それとは別に、心の中で引っ掛かるものを感じた。
(……もしかして、俺、アミを参加させるためのダシに使われたのでは?)
ここ数年、本校に負け越している分校側の参加者(ほぼ全員A組)としては、今年こそ本校に勝ちたい、せめて一矢報いたいという思いが強いはずだ。
それなのに、剣のエースであるエスタが欠場することになってしまったものだから、その穴埋めとして、魔法のエースであるアミに参加してもらおうと、アミを一本釣りするための効果的な餌として、俺が補欠枠に推薦されたのではないだろうか?
悔しいことに、そのように考えると、辻褄が合ってしまう。
(……まあ、それでもいいさ)
どの道、今回と同じやり方で交流戦のメンバーに選ばれるのは、再現性が低い。エスタが足首を捻るという偶発的なアクシデントを狙って引き起こすには、試合中、今回とまったく同じタイミングで、同じ動きをしなければならないからだ。それは不可能だ。
そもそも、対戦の組み合わせをペダルが抽選などのランダムな方法で決めているのであれば、俺とエスタがマッチングしない可能性すらある。
あくまでも、今回、交流戦のメンバーに選ばれたのは、一回限りの幸運なランダムイベントが発生したからだと考えるべきだろう。
(ゲーム的にいうなら、今回はお試しの体験版ってことか。次回以降は実力で王都に行けってことだな)
いずれにせよ、俺にとっては、過去の周回も含めて初の王都訪問だ。
アセビの町にいたら絶対に知ることのできない情報や出会うことのない人たちと、遭遇する可能性は極めて高い。
俺は交流戦そっちのけで、王都での過ごし方について思案を巡らせていた。
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