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保護者目線

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 ある日の帰り道、たまたま帰る時間が重なったので、俺はアミと下校することになった。


 朝は毎日のように一緒に登校している俺とアミだが、所属クラスも得意分野も異なるので、下校は別々になることの方が多い。


「ねえ。あそこにいるの、クランちゃんじゃない?」


 露店の立ち並ぶ大通りに入ったところで、アミがクランを見つけた。


 クランは往来の多い十字路で立ち止まり、きょろきょろと周囲を見回している。


「道に迷っているのかな?」


「そうかも。おーい、クランちゃーん」


 アミが名前を呼びながら駆け寄ると、それまで不安そうにしていたクランの表情が、ぱっと明るくなった。


 初対面の時は、握手した手をなかなか離さなかったせいで、クランから警戒されてしまった俺だが、その後は誤解も解けて、今ではクラスメイトとして良好な関係を築けている。アミがいつの間にかクランと仲良くなっていたため、アミと一緒にいることの多い俺の評価も、なし崩し的に「怖い人ではない」と改められたのだ。要するに、すべてアミのおかげである。


「アミちゃん! シノブくんも!」


「ごきげんよう」


「へ?」


 俺が上流階級の挨拶を優雅に決めると、クランは面食らったような顔をして、沈黙した。


「シノブくんって、どこかの良家のご子息だっけ?」


「交流戦で活躍すれば、貴族や王族とお近づきになる機会があるかもしれないからね。今から訓練しているんだ」


「そうなんだ。……シノブくんって、結構、変なところあるよね」


 初めて会った時のことを思い出しているのか、クランが苦笑いを浮かべてしみじみ呟くと、アミが「そうなんだよね」と同調した。


「アカデミーに入学してから、色々なことに興味を持つようになっちゃって。この前も、私に魔法を教えろとか言い出すし」


「あ。私も弓を教えてほしいって言われたよ」


「弓も? シノブ、あれもこれも手を出したら、全部、中途半端になるよ?」


 どれか一つに決めて集中しなさい、と。


 俺に説教をするアミを見て、クランはくすくすと笑った。


「アミちゃんって、シノブくんのお姉さんみたいだよね」


「そうかな?」


「うん。なんだか、保護者目線って感じがする」


(そこが問題なんだよな)


 保護者目線=家族目線なので、アミにとって俺は恋愛の対象ではなく、いつまで経っても「手のかかる弟のような存在」のままなのだ。現状を打開するには、クラス分け試験でA組になるしかないと思うのだが、A組との差はあまりにも大きい。


 二人の会話に聞き耳を立てつつ、自分たちが往来の邪魔になっていないかを確認するため、周囲を見回した俺は、


「おや?」


 すぐ近くで同じように立ち止まり、俺たちを眺めているアカデミーの男子生徒がいることに気が付いた。


 ラップだ。


(そっか……。そういえば、この頃のこいつは不真面目なナンパ野郎なんだっけ)


 近くに立っていることから察するに、もしかしたら、クランに声を掛けようとしたところで、アミと俺に先を越されてしまったのかもしれない。


「誰かと思えば、敗北者じゃないか。どうしたんだ?」


「誰が敗北者だ!」


 話し掛けるタイミングを逃してしまい、所在なさそうにしているラップを不憫に思い、俺が声を掛けると、ラップは即座に噛み付いてきた。相変わらず、短気な奴だ。


「交流戦のメンバーを決める選抜試合が近いというのに、ろくに鍛錬もせず、あまつさえ学校帰りにナンパしているような輩が、敗北者でなく何だというのか」


「ぐっ……偉そうに」


 俺に正論で殴られたラップは、悔しそうに顔を歪めた。


「女子と下校する暇があったら、剣でも振ったらどうなんだ!」


「そうだとしても、お前だけは言う資格が無いだろ!」


 ラップは俺の後ろにいるアミとクランを指さしながら言った。


「ふっ……。俺がモテているのが、悔しくて堪らないようだな?」


「シノブは別にモテているわけじゃないからね?」


 私たちを侍らせているみたいに言うのはやめてね、と。


 アミが口を挟んでくるが、聞こえていないふりをして話を続ける。


「そんなに悔しければ、選抜試合で雌雄を決するというのはどうだ?」


「なんだと?」


「お前も申し込んでいるんだろう? 交流戦のメンバーを決める選抜試合に」


 そこで決着をつけよう、と。


 俺が高らかに宣戦布告すると、ラップの顔つきが変わった。

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