保護者目線
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次回の更新は明後日です。
ある日の帰り道、たまたま帰る時間が重なったので、俺はアミと下校することになった。
朝は毎日のように一緒に登校している俺とアミだが、所属クラスも得意分野も異なるので、下校は別々になることの方が多い。
「ねえ。あそこにいるの、クランちゃんじゃない?」
露店の立ち並ぶ大通りに入ったところで、アミがクランを見つけた。
クランは往来の多い十字路で立ち止まり、きょろきょろと周囲を見回している。
「道に迷っているのかな?」
「そうかも。おーい、クランちゃーん」
アミが名前を呼びながら駆け寄ると、それまで不安そうにしていたクランの表情が、ぱっと明るくなった。
初対面の時は、握手した手をなかなか離さなかったせいで、クランから警戒されてしまった俺だが、その後は誤解も解けて、今ではクラスメイトとして良好な関係を築けている。アミがいつの間にかクランと仲良くなっていたため、アミと一緒にいることの多い俺の評価も、なし崩し的に「怖い人ではない」と改められたのだ。要するに、すべてアミのおかげである。
「アミちゃん! シノブくんも!」
「ごきげんよう」
「へ?」
俺が上流階級の挨拶を優雅に決めると、クランは面食らったような顔をして、沈黙した。
「シノブくんって、どこかの良家のご子息だっけ?」
「交流戦で活躍すれば、貴族や王族とお近づきになる機会があるかもしれないからね。今から訓練しているんだ」
「そうなんだ。……シノブくんって、結構、変なところあるよね」
初めて会った時のことを思い出しているのか、クランが苦笑いを浮かべてしみじみ呟くと、アミが「そうなんだよね」と同調した。
「アカデミーに入学してから、色々なことに興味を持つようになっちゃって。この前も、私に魔法を教えろとか言い出すし」
「あ。私も弓を教えてほしいって言われたよ」
「弓も? シノブ、あれもこれも手を出したら、全部、中途半端になるよ?」
どれか一つに決めて集中しなさい、と。
俺に説教をするアミを見て、クランはくすくすと笑った。
「アミちゃんって、シノブくんのお姉さんみたいだよね」
「そうかな?」
「うん。なんだか、保護者目線って感じがする」
(そこが問題なんだよな)
保護者目線=家族目線なので、アミにとって俺は恋愛の対象ではなく、いつまで経っても「手のかかる弟のような存在」のままなのだ。現状を打開するには、クラス分け試験でA組になるしかないと思うのだが、A組との差はあまりにも大きい。
二人の会話に聞き耳を立てつつ、自分たちが往来の邪魔になっていないかを確認するため、周囲を見回した俺は、
「おや?」
すぐ近くで同じように立ち止まり、俺たちを眺めているアカデミーの男子生徒がいることに気が付いた。
ラップだ。
(そっか……。そういえば、この頃のこいつは不真面目なナンパ野郎なんだっけ)
近くに立っていることから察するに、もしかしたら、クランに声を掛けようとしたところで、アミと俺に先を越されてしまったのかもしれない。
「誰かと思えば、敗北者じゃないか。どうしたんだ?」
「誰が敗北者だ!」
話し掛けるタイミングを逃してしまい、所在なさそうにしているラップを不憫に思い、俺が声を掛けると、ラップは即座に噛み付いてきた。相変わらず、短気な奴だ。
「交流戦のメンバーを決める選抜試合が近いというのに、ろくに鍛錬もせず、あまつさえ学校帰りにナンパしているような輩が、敗北者でなく何だというのか」
「ぐっ……偉そうに」
俺に正論で殴られたラップは、悔しそうに顔を歪めた。
「女子と下校する暇があったら、剣でも振ったらどうなんだ!」
「そうだとしても、お前だけは言う資格が無いだろ!」
ラップは俺の後ろにいるアミとクランを指さしながら言った。
「ふっ……。俺がモテているのが、悔しくて堪らないようだな?」
「シノブは別にモテているわけじゃないからね?」
私たちを侍らせているみたいに言うのはやめてね、と。
アミが口を挟んでくるが、聞こえていないふりをして話を続ける。
「そんなに悔しければ、選抜試合で雌雄を決するというのはどうだ?」
「なんだと?」
「お前も申し込んでいるんだろう? 交流戦のメンバーを決める選抜試合に」
そこで決着をつけよう、と。
俺が高らかに宣戦布告すると、ラップの顔つきが変わった。
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