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決断

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。主人公は良い奴ですよ。

 アミにはすぐに追いついた。オジさんとオバさん――――アミの両親も一緒だ。


 だが、何か様子がおかしい。


 オジさんがオバさんを庇うようにして、地面に伏せている。


 そして、アミ、オジさん、オバさんの他に、その場にはもう一人の人影があった。


 皮の鎧を身につけて、剣を構えている兵士だ。尻からは尻尾が生え、頭髪からは猫のように尖った獣の耳が飛び出ている。


 獣人だ。――――敵だ。


「アミ!」


 俺が叫ぶと同時に、前に突き出したアミの掌から炎の塊が発生して、次の瞬間には、獣人の兵士は火だるまになっていた。


 ――――一撃。とんでもない威力だ。


(嘘だろ? A組の実力って、こんな凄いのか?)


 それとも、アミの実力がA組の中でも突出しているのだろうか?


 こんなの、正規の軍隊でも即戦力レベルだ。獣人国の兵士を、圧倒している。


 アミは俺を見て、一瞬だけ安堵するような表情を浮かべたが、すぐに険しい顔つきに戻って、地面に倒れている両親に駆け寄った。


「お父さん! お母さん!」


 悲痛な叫び声が木霊する。見れば、倒れている二人を中心に、水溜まりのように血が広がっている。


 オジさんとオバさんは、もう助からないと――――直観的に理解した。


(……落ち着け。冷静になれ)


 動揺する自分に、悲しんでいる暇は無いと、必死に言い聞かせる。


 生き残るためには、どうするべきか?


 この場に留まるのは、間違いなく悪手だ。


 最善手は、助かる見込みの無い二人を置き去りにして、アミと一緒にアカデミーに避難すること。途中で敵に見つかっても、アミの魔法があれば、何とかなる可能性が高い。


 ――――だが、そんな薄情こと、言えるはずがない。


 オジさんとオバさんは、家族と離れて暮らす俺にも、良くしてくれたのだ。


 思い出が、走馬灯のように蘇る。


 辛くて、胸が苦しくなった。


 だが、状況は目まぐるしく変化しており、その場で立ち尽くす俺たちに容赦なく牙を剥いてくる。


 血で服が汚れることも厭わずに、泣きながら両親に呼び掛けているアミの背後に、いつの間にか獣人の兵士が忍び寄っていたのだ。足音がまったく聞こえず、気づいた時には振り上げた剣で、アミの背中を串刺しにできる距離まで接近していた。


 ――――これは、間に合わない。


 瞬間的に、最悪の結末を予感した。


 今からアミの名を叫んでも、きっと、状況を把握する前に背中を刺されてしまう。


 それに、アミはもう心が折れかけている。元々、アミは戦闘など好きではないのだ。そんなアミに、何回も敵を殺すことなどできるはずがない。


 それならば――――どうする?


 次善の策は?


 自分が生き残るためには、何をすればいい?


 必至に考えを巡らせた俺の脳裏に、最悪の選択肢が浮かんだ。


 今、獣人の兵士は、明らかに俺ではなく、アミを標的にしている。


 それならば、獣人の兵士がアミを攻撃している間に逃げることが可能なのではないか?


 アミを見捨てることになってしまうが、ループが発生すれば、また最初からやり直せる。


 アミも死ななかったことになる。


 今の俺にとって重要なことは、今日を生き延びて、明日以降の情報を集めることだ。


(生き延びるべきなんだ)


 ――――たとえ、何が起きようとも。


 俺は震える手をぎゅっと握り締めて、がむしゃらに走り出した。

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