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思い通りにはならない世界

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

『一年目の一学期。(俺の攻略ノートより)


 遭難事件について。


 山で遭難した人がいるらしい。兄のノートにも同様のことが書いてあったので、多分、同じ人物だと思われる。この人は、世界がループしても、必ず山に行き、遭難してしまうようだ。無事に救助されているのだろうか?(ここまでの内容は射線で削除されている)


 失踪事件について


 人買いグループが、アセビの町の北にある山中に潜伏しているらしい。山に入った町の住民が、既に何人か消息を絶っているとのこと。


 もし、それが人買いグループの仕業であれば、攫われた人は奴隷にされてしまうようだ。


 行方不明になった人の中にクランがいるので、何としても助けたい。


 有志による山狩りに参加するには、もっともっと強くならなければならないようだ。


 世界がループしたら、クランが行方不明にならないように対策を取ること!』


     *


 その後、アカデミーの教官たちを筆頭に、有志による大規模な山狩りが実施された。


 結果として、人買いグループの噂は真実だったようだ。


 山の中腹に、かつて物好きな貴族が別荘として建設した屋敷が建っており、それがまだ人の住める状態で打ち捨てられていたのだという。


 屋敷の中を捜索したところ、明らかに人が生活していた痕跡があり、だが、屋敷はもぬけの殻になっていたそうだ。


 屋敷に潜んでいたのは、はたして人買いグループだったのか。


 そこに行方不明になった町の住人も一緒にいたのか。


 捜索が空振りに終わった今、真実は藪の中だ。


 アセビの町にもたらされたのは、行方不明者は一人も発見できなかったという結果だけ。


 クランがアカデミーに戻ってくることはなく、一学期の終了と同時にアカデミーとの契約が切れたペダルも、アセビの町からいなくなってしまった。


 そして、月日は流れ――――


 俺は積み重ねた努力が報われて、一年目の三学期にB組に昇級することができた。


 だが、浮かれるような気分には、まったくならない。


 俺も、兄貴も、まだ一度も生きて二年目を迎えられていないからだ。


 一年目の三学期に起こる(恐らくは)強制イベントで、毎回、命を落としてしまっている。


 そして、運命のXデーまで残り十日を切っているのに、いったい何が起こるのか、まったく予想が付かなかった。


 相変わらず魔王軍との戦争は続いているようだが、戦線は南の国境付近なので、遠く離れたアセビの町が戦禍に巻き込まれるとは考えにくい。大人たちもわざわざ不安を煽るようなことは言わないし、直接質問をぶつけても「戦線は膠着している」以上の答えは返ってこなかった。


「戦況? 教官が言っていたとおりじゃないの? ここ数年は、国境の近くで一進一退の状況が続いているっていう話しか聞かないけど……。そういうの、王都で暮らしているオジさんとオバさんの方が詳しいんじゃないの?」


 アミに聞いたら、ごもっともな意見が返ってきた。


 勿論、年末年始に家族が帰省してきた時には、父親に同じ質問をしている。


 だが、答えは同じ。戦線は膠着しているというものだった。


(困った時は町長の息子に聞いてみるか)


 俺はアカデミーの売店で総菜パンを買うと、三学期から晴れてB組のクラスメイトになったラップに声を掛けた。

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