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はじめての選抜試合

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

『一年目の一学期。(兄貴のノートより)


 アカデミーはいわゆる士官学校なので、アカデミー卒業後に軍隊に入ると、ほんの少しだけ優遇されるらしい。


 それ故に、アカデミーでは戦闘訓練の他に、戦術、歴史、算術、一般教養としての礼儀作法や芸術なども幅広く学ぶことになる。もっとも、大学のように必須科目と選択科目に分かれているので、興味の無いものまですべて学ぶ必要は無い。


 簡単に単位を取りたいなら、算術がお勧め。中学卒業レベルで学年トップになれる。


 この世界について詳しく知りたいなら、歴史や一般教養を選択すべきだろう。


 魔法を覚えたければ魔法学だが、これは注意が必要。神代文字という失われた言語の勉強が必須になるからだ。はっきりいって、古文書を解読するようなものだ。弟なら発狂しているに違いない。


 父親が、王都でこの神代文字を研究しているらしいのだが。』


     *


 一応、ここは教育機関でもありますよと言わんばかりに実施された中間考査の後、とうとう交流戦のメンバーを決める選抜試合の日がやって来た。


 当日、俺は布を巻きつけてモコモコになった訓練用の木剣を握りしめて、威風堂々と決戦のバトルフィールドに立っていた。


 本来、C組の生徒に出場資格は無いはずだが、奇跡が起きたのである。


 一学期のみの臨時教官であるペダルが、教官の推薦という特例措置を使って、俺が選抜試合に参加できるように取り計らってくれたのだ。


 そして、運命とは因果なもので、俺と向かい合っている対戦相手は、あの時、クランをナンパしていた二人組の男子生徒の片方だった。名をラップというらしい。


「教官! なぜ、こいつが参加しているんですか!? こいつはC組のはずです!」


 ラップは当然のごとく、審判役であるペダルに苦情を入れる。俺に恐れをなして、不戦勝を狙っているのだろうか? どこまでも姑息な奴だ。


「C組に参加資格が無いのは、今まで、出場を希望するC組の生徒がいなかったからだ。だから、こいつくらいやる気があるのなら、出場の機会を与えても問題無いんだ」


「時間の無駄です。こいつは弱いからC組なんですよ」


「しかしなぁ。もし、A組の生徒が同じことを言ったら、どうするんだ? B組の生徒は選抜試合で結果を残していると言えるのか?」


「それは……」


 ペダルに反論されて、ラップは言葉に詰まった。


(そういえば、クランがそんなことを言っていたな)


 たしか、交流戦のメンバーに選ばれるのはA組の生徒ばかりだと。


 実力差を考えれば、当然の結果なのだろう。A組は、B組よりも強いからA組なのだ。


「それに、クラス分け試験から結構な期間が経っているからな。同じ時間を訓練に費やしたのであれば、経験者よりもド素人の方が伸びシロはあるぞ。なにしろ、基礎を覚えるだけで上達するんだからな。……お前は、こいつと同じくらい、訓練に真剣に取り組んでいたと言えるか?」


「ぐっ……」


 更に痛いところを指摘されて、ラップは悔しそうに歯をかんだ。


 これも、クランが言っていたことだ。訓練をあまり真面目に受けていないと。


「……ふっ。哀れだな」


「なんだと!?」


 思わず呟いた憐憫の言葉に、ラップは即座に噛み付いてきた。


 俺は木剣の切っ先をゆっくりとラップに向け、一喝する。


「向上心の無い奴に、交流戦に出る資格など無い!」


「うるさい! お前こそ向上心だけのくせに!」


「放課後に女子をナンパする暇があるなら、少しは強くなる努力をしろ!」


「こいつ……! ムカつく……!」


 口喧嘩を始める俺とラップを見て、ペダルは呆れたようにため息を吐いた。


「どうでもいいが、あまり挑発するなよ? こいつ、町長の息子だぞ」


「なんだって!?」


 ペダルの言葉に、俺は驚いてラップをガン見した。


「お前、お貴族様だったのか!?」


「違う。俺も親父もただの平民だ」


「嘘つけ! 小規模な集落を除けば、町は貴族が治めているって勉強したぞ!」


「アセビの町にはアカデミーがあるから例外なんだ!」


 ラップ曰く、分校の学長がそれなりに身分の高い貴族であるため、町の統治者に別の貴族を就任させるのは具合が悪い(軋轢が生じる恐れがある)ということで、アセビの町はそれなりに規模の大きな町だが、平民が町長を務めているらしい。


「それが、お前の父親ってことか」


「そうだよ。肩書だけの町長だけどな」


「ということは、町長の息子であることを笠に着て、女子をナンパしていたのか! なおさら許せん!」


「なんなんだよ、お前!」


 人の話を聞けよ! と。


 ラップは辟易した様子で、木剣を構えた。


「もう、いつでも始めていいぞー」


 やる気の無い声で、ペダルが試合開始の合図を送る。


「行くぞ! 正義は勝つ!」


「返り討ちにしてやる!」


 気合一閃、俺は木剣を振りかぶって、ラップに突進した。

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