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昔、ギャルゲーありけり 一

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「――――これで完全クリアだな」


 俺は画面を流れるエンドロールを眺めながら、コントローラーから手を放した。


 エンディングの後半から、シナリオがメタ発言のオンパレードになっていたが、クリア後のお楽しみ的な隠しルートだと思えば、それもまたアリなのだろう。


 なにしろ、これで十周目だ。ヒロイン役の声優が歌っているエンディングソングも、何度も聞いたせいで歌詞まで覚えてしまっている。


「やっぱり、ヒロインが多いと全クリは大変だな」


 本音を言ってしまえば、攻略に時間が掛かりすぎる。


 長く遊べるという意味ではコストパフォーマンスが良いとも言えるのだが、周回プレイでは序盤がどうしても同じ作業になってしまうので、面倒くさいのだ。


「まあ、とにかく、終わったわけだ」


 俺はゲーム機本体に手を伸ばすと、エンドの文字が消えて画面が暗転したところで、すぐに電源を切った。放っておくと、この後、何事も無かったかのようにオープニングがはじまってしまうので、ゲームクリアの余韻がぶち壊しになってしまう。


 昨日の深夜から遊びはじめて、気が付けばもう翌日の午前十一時。ゲームを完全クリアして集中が途切れたせいか、一気に睡魔が襲い掛かってきた。


 昼夜逆転の生活が良くないことは分かっているし、今日は月曜なので大学の講義もあるのだけれど……。


「――――駄目だ。寝よ」


 眠いのを我慢して何か別のことをしようしても、絶対にろくなことにはならない。


 これは、俺が二十年にも満たない人生の中で辿り着いた、数少ない真理の一つだ。


 俺はアクビを噛み殺しつつ、ゲーム機本体からソフトを取り出して、部屋の隅にある二つのゲームソフトの山――――クリア済みゲームの山の方に積み上げた。


 もう一つの山は、これからプレイするゲームの山だ。在庫がもう残り少なくなっている。


(また、中古ショップに行って仕入れてくるか……)


 俺はそんなことを考えながら、寝床を作る作業に取り掛かった。


     *


 かつて、家庭用据え置きゲーム機が隆盛を極めた黄金期に、時を同じくして恋愛要素を前面に押し出したノベル形式のアドベンチャーゲームやシミュレーションゲーム――――いわゆるギャルゲーと呼ばれるジャンルのゲームが一時代を築いたことがあった。もうニ十年以上前のことだ。


 ブームの火付け役となった一本のソフトの爆発的なヒットを皮切りに、二匹目のドジョウを狙った類似ソフトが市場に溢れ返ったのである。


 だから、当時はとにかく恋愛要素をシステムに盛り込んだゲームが多かった。


 例えば、それまでは一本道のシナリオが当たり前だったRPGでさえ、当然のように複数のヒロイン候補が登場して、ゲームの進め方しだいで主人公と結ばれるヒロインが変わるマルチエンディングシステムを採用していたほどだ。


 勿論、それが悪いというわけではない。恋愛要素は上質なフレーバーになり得る。


 俺のようなやり込み派は当然のようにすべてのヒロインを攻略するし、そうではないライトなプレイヤーはお気に入りのヒロインだけを攻略すればいい。一本のゲームをどのように楽しむかは、プレイヤーの完全な自由。なんなら、面倒くさいとか、飽きたという理由で、最後までプレイせずに投げ出してしまったとしても、それを咎められる筋合いはないのだ。


 だが、遊び手はそれでよくても、作り手はそうはいかない。


 商品として売り出す以上、最後まで完成させる必要がある。


 そして、ヒロインの数だけシナリオが分岐するゲームでは、当然のことではあるが作り手の負担は倍増するのだ。


 まして、当時はヒロインの人数の多さもソフトの「売り」になる風潮があったため、先程、俺がクリアしたゲームのように、攻略可能ヒロインが十人以上のゲームも珍しくなかった。


 その結果、何が起きたのかと言うと――――


 ヒロインによるシナリオの当たりハズレ。


 露骨な手抜きや、整合性の欠如。


 低品質なゲームが氾濫したことで、ブームは徐々に下火になっていった。


 これらはすべて、俺がまだ小学生だった頃に兄貴から聞いた話だ。

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