エンディング ニ
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次回の更新は明後日です。
「ふふふ……。君にだけは、私の正体を明かそうと思ってね」
そう告げると、校長は両耳あたりに手を添えて、剥き出しの頭皮をパカッと上に持ち上げた。
「え? その頭、ヅラなの?」
しかも、驚くべきことに、ハゲヅラの下から現れたのは、キラキラと光り輝く金髪。
腰まで届くのではないかと思われるロングヘアーだった。
どう考えても、あの毛量をハゲヅラの内側に収納することは不可能だが、今はそんな小さな矛盾はどうでもいい。
俺はまじまじと、校長の顔と金髪を見比べた。
「きもっ! 顔と髪がアンバランスすぎる!」
「ふふ……。驚かせてしまったようだね」
「こんなん、誰だって驚くわ!」
思わず、この学校の最高権力者に対して暴言を吐いてしまったが、本日、無事に卒業したということで、ここは無礼講にしてほしい。
校長は更に、下顎のあたりに指を引っかけると、顔面の皮膚をベリッと引き剥がした。
「特殊メイク!? あんた、学校で何やってんだ! だいたい――――
驚きと怒りが限界突破した俺は、思いつく限りの罵詈雑言を浴びせてやろうとしたが、
「――――は?」
特殊メイクの下から現れた校長の素顔を見て、頭の中が真っ白になってしまった。
わざわざ毛根の死滅したカツラを頭にかぶり、初老のおっさんの特殊メイクを顔面に施した変態……もとい校長の正体は――――
何も予定の無い休日に外出すると、現地でばったり遭遇することのある、謎めいた雰囲気のお姉さんだった。
「あ! 貴方は!」
たしか名前は……胡蝶蘭さんだったはずだ。
――――ん? 胡蝶?
胡蝶、こちょう、こうちょう、校長……そういうことか!
「そんな伏線、誰が気づくんだよ!」
俺は卒業証書の入った筒を、床に叩き付けた。
「ふふ。混乱させてしまったみたいだね」
「そりゃ、混乱しますよ」
というか、この状況で混乱しない奴がいるのだろうか?
いるとしたら、人生を何周もしている奴だろう。
「せめて、校長先生が女子トイレの近くでウロウロしていたとか、おねぇ言葉で喋ったとか、そういう正体を匂わせるエピソードがないと!」
「ふふ。すまなかったね。なにしろ、私はマスターアップの直前に「実は校長」の設定を付け足された隠しヒロインだからね。雑なのはご愛敬さ」
「メタい!」
好意的に解釈すれば隠し要素であり、やり込み要素でもあるのだろうが、一歩間違えれば、世界観そのものをぶち壊す爆弾と化していた可能性もある。
というか、この人、一周目からガンガン登場していたような気がするのだが……。
「もし、最初に胡蝶さんを攻略した人がいたらどうするんですか?」
「それは大丈夫さ。私はヒロインを半分以上攻略しないとフラグが立たないようになっているからね」
「さいですか」
安心安全の隠しヒロインということらしい。
「それにしても、よくもまあ、このルートに辿り着いたものだね。全ヒロインを登場させつつ、私以外の誰のクリア条件も満たさずに卒業式を迎えることが条件だったはずだけど、大変じゃなかったかい?」
「大変でしたよ」
特に幼馴染のヒロインが、チョロインすぎて大変だった。ゲーム開始直後に強制イベントで登場するくせに、エンカウントする度に好感度が上がるという鬼仕様だったせいで、序盤から幼馴染を避けて行動する必要があった。
登下校の時間をずらすために、運動部よりも早く登校して、放課後はさっさと帰宅。
他のヒロインを攻略するわけにもいかないので、三年間、ひたすら暇潰しの肉体改造に明け暮れた結果、今では身長2メートル、体重120キロという、無敵のフィジカルを手に入れることに成功してしまったのだ。こんな化け物みたいな高校生がいてたまるか。
ちなみに、三年間、本当に肉体改造しかしなかったので、卒業後の進路は未定。無職だ。
「大変だったね。だけど、その苦労も報われたよ!」
そう言うと、胡蝶さんは両腕を大きく広げた。
「天堂シノブ君、好きだ! 結婚してくれ!」
「告白まで雑!」
俺は悪態をつきながらも、校長……もとい胡蝶さんの胸に飛び込んだ。巨乳だった。
『――――こうして、俺の三年間の高校生活は幕を閉じた』
ナレーションが始まったので、もう俺にできることは何も無い。
俺たちは伝説の校長室で抱き合いながら、永遠の愛を誓うのだった。
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