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小さなことからコツコツと

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「うーん……C組で」


「あざした!」


 ペダルに返り討ちにされた俺は、地面に両手両膝をつき、肩で軽く息をしながら、土下座をするように頭を下げた。


「やる気だけなら、B組でも構わないんだけどな。でもまあ、C組からが妥当だろう。剣術の基礎を身につけて、自力で昇級しろ」


「うっす!」


「なんで、そこまでやる気があるのに、剣はド素人なんだよ……」


 変な奴だな、と。


 ペダルは怪訝そうに俺を見ていたが、俺は心の中ではほくそ笑んでいた。


 傍目には素人が剣を振り回しているようにしか見えなかったとしても、俺個人の体感としては、一周目の努力の痕跡を感じ取ることができたからだ。


 自分で思っていた以上に、長時間、体を動かせるのだ。記憶の中の「いつもの自分」より、明らかに体力がついており、バテにくい体になっている。


(前の周回では、アホみたいに走り込みをしていたみたいだからな)


 たとえ、一年に満たない期間だったとしても、毎日のようにマラソンをしたという実績を、そのまま引き継いでいるのだ。このまま努力を続ければ、次の周回や、更に次の周回には、プロの長距離ランナーも顔負けのスタミナを手に入れているかもしれない。


(いや。その前に、今回の目標はなるべく早めのB級昇級だな)


 アカデミーの恒例行事の一つに本校との交流戦があり、そのメンバーに選ばれると、本校のある王都に行くことができるのだ。無限ループの謎を解き明かすため、手当たり次第に情報を集めている立場としては、王都で調べ物ができるというのは、非常に魅力的な話である。


 とはいえ、交流戦のメンバーを決める分校の選抜試合に参加できるのはA組とB組の生徒だけであるため、俺としては、それまでにB組に昇級したいところだ。


 ――――よし。やってやるか。


 受付でC組の編入手続きの書類を受け取りながら、俺は密かに気合を入れた。


     *


一年目の一学期(兄貴のノートより)


 分かったこと。


 この世界には、大きく分けて四つの国がある。


 人間の国、獣人の国、エルフの国、魔族の国。


 人間の国の名前は、ファウル王国。


 王都の名前は、フリーデン。この世界で最大規模の都市らしい。


 主人公の故郷の町の名前は、アセビ。大きな町ではないが、田舎でもない。西にある獣人の国から近く、交易の要衝なので、それなりに栄えている。


 とはいえ、情報収集をするのなら、王都がよいだろう。


 王都と故郷の町は、馬車を乗り継いで二日ほどかかる距離なので、単純に交通費のことを考えても、気軽に足を運ぶことはできない。


 正攻法で王都に向かうには、アカデミーの本校との交流戦で、分校側の選抜メンバーになることだろうか? あるいは、夏休みに帰省してくる家族に寂しいと泣きついて、二学期から王都に引っ越すのもありだろうか?


     *


 B組昇級を当座の目標に定めてからは、毎日がとても充実していた。


 とにかく、序盤はやることがたくさんあるので、飽きることがない。


 体を鍛え、知識を蓄え、交友関係を広げる。


 ペダルの言っていたとおり、C組の級友はアカデミーを卒業しても王国軍には入らず、家業を継ぐ者や、王都に引っ越して、そっちで就職するという者が多かった。このへんは、日本人の「とりあえず高校くらいは卒業しておこう」という感覚に近いのだと思う。


 そんなわけで、C組の級友は変にギラギラしていないため、わりとすぐに打ち解けることができたのだが、裏を返せば向上心も無いため、一緒に切磋琢磨する仲間としては、物足りないと思うこともあった。

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