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不思議なパワー

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「管理者権限さえ取り戻せば、ループによる影響も受けませんし、なんなら天変地異を起こして世界を滅ぼすこともできるんですけど」


「物騒なんだよ。……まあ、俺の知っている神様も大洪水とか起こしているけど」


 古今東西、人知の及ばない上位存在というのは、そういうものなのかもしれない。


「どうして、こんなことになってしまったのか……。私が管理していた頃の世界は、戦争なんか起きていなかったんですけど……」


「そうなんですか?」


「はい。偉大なる神(私)と天使が、下等な人間を管理して導く、正真正銘、平和なユートピアだったんです」


「……人間目線では、ディストピアのようにも聞こえますけど」


 いずれにしても、プリムラが知っているのは、AIに管理者権限を渡してしまう前の世界についてであり、管理者権限を失ってから、俺や兄貴のような被害者を主人公として世界に送り込むようになるまでの間に起きたこと(魔王が現れて、戦争を起こした経緯など)については何も分からず、しかも、送り込んだ主人公を通じて入手した情報については、ループの影響を受けて記憶が失われてしまうらしい。


「少なくとも、ノートが残っている以上、この部屋は無限ループの影響を受けていないのだから、プリムラも記録を付けたらどうかな」


「私がですか? でも、め……いえ。私が観測できるのはシノブさんが見聞きしたことと同じなので、まったく同じ記録が二つあっても意味ないと思いますけど」


「それなら、俺が指示した時だけ、記録を残すようにしてください」


 そうすれば、最終日(俺や兄貴が死亡してしまう日)の記録をプリムラが残してくれるので、たとえデッドエンドを回避できなかったとしても、最終日に何が起きたのかを知ることができるはずだ。さっき、明らかに「面倒くさい」と言いかけたことについては、武士の情けで見逃してやることにした。


「わっかりましたぁ。これで、原因究明に近づくといいですね」


「そうですね。原因を突き止めるまでに、いったい何年かかるのか分か……ん?」


 そこで、俺は自分の発言の違和感に気が付いた。


 世界が三年の周期で無限ループしているのなら、プリムラは何年、ここで時間を過ごしたのだろうか?

(たしか、俺が百人目とか言っていたよな……)


 だとすると、単純計算で三百年近い年月が、既に経過していることになる。


 そもそも、兄貴だって三回ループしているのだから、累計で十年弱の時間を費やしているはずだ。


 だが、現実世界で兄貴が十年間も行方をくらましたことなど、当然、無い。


 このあたりの時間的な矛盾はどうなるのだろうか?


 そのことを指摘すると、プリムラは困ったように表情を曇らせた。


「話せることと、話せないことがあるんですけど……」


「話せる範囲でいいので」


「そうですか?」


 それじゃあ――――と。


 プリムラが勿体つけて話してくれた内容は、以下の通りだった。


     *


 そこに関しては、気にしなくても大丈夫。


 理由は、この部屋がちょっと特殊だから。


 不思議なパワーで守ってくれますよ。


 私もずっと若くて美しいままなんです!


 この部屋でどれだけ長く過ごしても、元の時間軸に戻れるので安心してください。


     *


「……なるほど。よく分かりました」


 プリムラが、理屈をすっ飛ばして、結果だけを「そういうもの」と受け入れることのできる性格だということが、よく分かった。


「つまり、俺が何回もループして、仮に百年後にギブアップしても、ちゃんと百年前の状態で地球に戻れるということですね?」


「そうです。元のオンボロのアパートに戻れます」


「ボロくはねーよ」


 家賃は安くても、不動産屋を何軒もハシゴした結果、やっと見つけた築浅の掘り出し物なのだ。他人からボロいと言われる筋合いはない。

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