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固定イベント

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 俺は気を取り直すと、途中で死んでしまったらしい兄貴の最後の書き込みを読もうとして、


(……は?)


 ――――思わず、絶句した。


 兄貴が残してくれた三周分の情報が書き留められた攻略ノートには、明らかに四周目の書き込みが追加されていたからだ。


 そして、新たに追加された文字列に、俺は見覚えがあった。


 兄貴の文字以上に、見間違えるはずの無い文字。――――これは俺の字だ。


「ちょっと待って。俺、もしかして、もう二周目なの?」


「はあ……。どうなんでしょうか?」


「なんで、あんたが知らないんだよ……」


 俺はプリムラのポンコツぶりに呆れながらも、慌ててノートをめくって、兄貴の一周目、二周目、三周目の最後の書き込みを見た。


「……駄目だ。分からない」


 最後の書き込みには、普通の日記のごとく、日常生活の取り留めのないことが記載されているだけだ。三周目のところには、さすがに「身の回りに気を付ける」と書かれているが、結果は変わらなかったらしい。


 続いて、過去の俺が書いたと思われる最終日の書き込みに目を通したが、同様だった。


(あれ? ちょっと待てよ……? これ、兄貴の分も、俺の分も、同じくらいの時期に周回が終わってないか?)


 この事実が意味するところは、たった一つ。


 俺と兄貴は、同じ時期に発生した固定イベントに巻き込まれて、死亡したということだ。


 しかも――――


「さっき、三年くらいの周期でループを繰り返しているって言いましたよね?」


「はい」


 だとすると、俺も、兄貴も、三年という期間の半分も生きられなかったことになる。春にアカデミーに編入して、夏、秋、冬を経て、新年を迎えた後くらいのタイミングで、何が起きたのかも分からずに死亡している。無限ループの原因を突き止めるどころか、ループが発生する瞬間にすら辿り着けていないのだ。


「なんで、死んだんだ……?」


 突発的なイベントで死亡したのなら、何らかの事故に巻き込まれたのだろうか?


 例えば、押し入り強盗に殺されたなどのイベントで死亡したのなら、その日、自宅を留守にしておけば、デッドエンドは回避できるが……。


(――――そうか。これ、厳密には「最終日の前日ないし数日前」の書き込みなんだ)


 兄貴は、ループにより記憶がリセットされてしまっても、メモや日記を残しておくことで、記憶(というか記録)の引き継ぎができると書いていたが、どうやら、その方法には致命的な欠点があるようだ。


 メモや日記を書き残しておく方法では「死亡した日に何が起きたのか」を記録に残すことができないのである。一日の終わりに記録を残すという方法の、構造上の欠陥と言えるだろう。


「プリムラも、何も覚えてない? 俺や兄貴が死亡した日に、何が起きたのか」


「覚えていないです。私もループの影響を受けてしまうので」


「……普通、神様はそういう影響を受けないものじゃないんですか?」


「そんなことを言われましても……。私、この世界の管理者権限の大半を失っている状態なので……」


 殆ど権限の無いプリムラには、俺を通じて世界を観測することしかできないらしく、でも、俺を通じて世界を観測してしまうと、プリムラもループの影響を受けて、記憶がリセットされてしまうのだそうだ。


 そもそも、プリムラが無限ループに気づいたのも、AIに委譲した管理者権限をどうにかして取り戻せないかと悪戦苦闘していた時に、何度も巻き戻っている異常なタイムログ(ここでは歴史年表的なもの)を発見したからなのだという。

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