CはCでも、Bに近いC
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
「C組で」
「あざました!」
ペダルに返り討ちにされた俺は、地面に両手両膝をつき、肩で息をしながら、土下座をするように頭を下げた。
「妙に自信満々だったから、何かあるのかと思ったが……。何も無かったな」
「そりゃもう、ド素人ですから」
「そのわりには、本気で勝とうとしていたじゃないか」
「本気でやらないと、今の自分の実力がどれくらいなのか、分かりませんから」
ペダルに勝てないことは、手合わせをする前から百も承知だった。
ただ、どれくらいの実力差があるかを正確に測るためには、勝ち目のまったく無い相手にも全力でぶつかる必要があっただけだ。
結果的に、今の俺とペダルの間には「天と地」ほどの実力差があることを、否応なく実感させられてしまったわけだが。
「ま、その根性は買うけどな。お前なら、比較的すぐにB組に昇級できると思うぞ」
「本当ですか!?」
「ああ。そもそもC組になるのは、最初からアカデミー卒業後に文官や学者として働くことを志望していて、軍に入るつもりのない奴らが殆どだからな」
お前のように向上心と実力がつり合っていない奴は珍しい、やる気だけは凄い、と。
ペダルから、褒められたのか、馬鹿にされたのか、判断の難しい評価をされてしまったが、B組昇級がさほど遠くなさそうだと知れただけでも、大収穫だと言えるだろう。
「卒業後、軍に入ろうが入るまいが、ここは士官学校なんだ。戦闘訓練の講義はあるし、強くなるための環境は整っている。だからまあ、あれだ。――――頑張れよ」
「あざます!」
最後は照れ臭そうに激励してくれたペダルに頭を下げて、俺は試験会場を後にした。
「シノブ、どうだった?」
俺のことを見つけたアミが、小走りに近づいてくる。書類を落とさないように胸に抱えているので、試験後の編入手続きをしていたのだろう。
「C組だったよ」(決め顔)
「……なんで、得意げなの?」
「CはCでも、Bに近いCだからね。なんなら、もうB組への編入手続きをしてもいいんじゃないかと思ってる」
「駄目だよ」
アミは、堂々と不正入学しようとする俺の頭を「ていっ」と軽く小突いた。
「そんなことをして、もし、バレたらどうするの? 怒られるだけじゃなくて、アカデミーを放逐されちゃうかもしれないよ」
「結構、厳しいんだな」
「いや、普通のことでしょ。そんなズルをしなくても、シノブなら実力でB組に昇級できるから大丈夫。――――ね? 頑張ろ?」
そう言って、アミは上目遣いに俺の顔を覗き込むようにしてくる。はっきり言って、とても可愛い。リアルの人生でも、こんな幼馴染が欲しかった。
「勿論。今日から体を鍛えて、一日も早くB組に昇級してやるよ」
「……シノブって、意外に前向きな性格だったんだね。でも、その意気だよ」
俺とアミはバカップルのごとく、その場で「えい、えい、おー」と気勢を上げたため、周囲から生ぬるい視線を浴びてしまった。
だが、これで明日からの方針が決まった。
(アカデミーで体を鍛えて、B組への昇級を目指そう)
そして、それと並行して、この世界に関する情報を、何でもいいから集めたいところだ。
集めた情報はプリムラの仕事部屋でノートにまとめておけば、二周目以降の助けになる。なんなら、一周目は捨て周回にして、情報の収集に専念してもいい。
そして、兄貴の残してくれた攻略ノートにも目を通して、無限ループの原因を突き止めなければならない。兄貴は三周とも途中で死んでしまったらしいので、何はなくとも生き残ることが大事だ。デッドエンドの運命を回避するだけでも、無限ループの謎に迫れるかもしれない。
――――よし。やってやるか。
受付でC組の編入手続きの書類を受け取りながら、俺は密かに気合を入れた。
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