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剣なんか握ったことも無いド素人

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「剣でもそうだけど、弱い奴は無駄な動きが多くて、攻撃のタイミングが分かっちまうんだ。腕をぶんぶん振り回してから、殴りかかってくるようなもんだな。強い奴ってのは、いきなり攻撃してくるんだよ」


「はぁ」


 まあ、言わんとしていることは、分からないでもない。その道の上級者になると、あらゆる動きが洗練されて、体勢や、目線の動きや、呼吸のリズムなどから、次の動きを予測できなくなるのだろう。


「ちなみに、俺はどうですか?」


「は?」


「さっき、握手した時に、何か確認していましたよね?」


 俺が尋ねると、ペダルは驚いたように肩をすくめた。


「掌のタコを確認していたんだよ。意外に目ざといんだな」


「ホモかな? ってくらい触られましたからね」


「違うわ!」


 結婚しているって言っただろ、と。


 ペダルは嫌そうに顔をしかめて、剣の試験会場を指さした。


「そろそろ、お前の順番だろ?」


「あ、はい。そうですね」


「せっかくだから、俺が手合わせしてやるよ」


 そう言うと、ペダルは「後をついて来い」と言わんばかりに、俺を先導して歩き始めた。


「俺の見立てでは、剣なんか握ったことも無いド素人……って感じの手だったけどな。もし、そうじゃないのなら、頑張って、俺の予想を覆してみせろ」(ニヤリ)


「……ふっ」(ニヤリ)


 暗に「お前はC組だ」と言われてしまったような気がするが、俺はまったく動揺せず、それどころか不敵に微笑んだ。


「油断して、指一本で相手をするというのなら、後悔することになりますよ」


「そこまで油断して負けたら、それはもうただの馬鹿だろ」


 残念ながら、ペダルは口車には乗らず、さっさと試験会場に移動してしまった。ここで顔を真っ赤にして「上等だ! やってやんよ!」とか言ってくれたら楽だったのだが。さすがに、そんなギャグ路線の攻略ルートは存在しないらしい。


 剣の試験は実戦形式の試合であり、新入生は布をぐるぐると巻きつけた木剣を使って、試験官に剣の腕前をアピールする。格上の試験官が相手なので、勝敗は必ずしも評価に直結しないようだ。


(だとすると、手に砂を握り込んで目つぶしにするのは駄目だな)


 むしろ、そんなことをしたら、評価が下がるまでありそうだ。


 ペダルが予想したとおり、俺は今までの人生で木剣など握ったことはない。中学生時代に、体育の授業で何回か竹刀を握ったことがあるくらいだ。


 だから、実力不足なのは自分でも分かっている。普通に考えれば、A組なんて夢のまた夢。恐らく、C組になってしまうだろう。


 ――――それでも。


 ベストを尽くさない理由は、どこにもない。


(当たって砕けろだ)


 俺は試合開始の合図を待って、片手で木剣を握っているペダルに突進した。

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