そういうことは先に言え
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
「念のために確認しますけど。兄貴がそうしたみたいに、自分には無理そうだと判断したら、途中でギブアップはできるんですよね?」
「はい。残念ですが、無理強いはできませんので……。その時は責任をもって、シノブさんを元の安アパートに転送します」
「安アパートって言うんじゃねーよ」
この天使なのか神様なのかよく分からない女性、先程からちょいちょい他人を見下すような発言をすることがある。多分、無自覚に他人(人間)を格下扱いしているのだろう。金持ちが貧乏人を、貴族が平民を、ナチュラルに見下すようなものだ。正直、イラっとする。
だが、そんなことにいちいち目くじらを立てても仕方ないので、俺は飲み込むことにした。
「――――まあ、せっかく推薦してくれた兄貴の顔に泥を塗るわけにもいかないので、やれるだけやってみます」
俺がそう自分に言い聞かせて、挑戦する意思を伝えると、プリムラの表情が明るくなった。
「本当ですかぁ!? ありがとうございます」
正に「花が咲くような」笑顔だ。見た目だけなら、本当に絶世の美女である。
「じゃ、じゃあ、早速、行っちゃいます? き、気が変わらないうちに、さっさと現地に送り込みたいんですけど!」
「本音が漏れてますよ」
でもまあ、それでもいいだろう。こっちも、すべての情報をインプットしてから……なんて頭でっかちなことをするつもりはない。そもそも、ループが発生したら、記憶にもリセットが掛かってしまうのだから、その度に一から覚え直すのは非合理的だ。
「送り込むのはいいですけど。眠ったら、ちゃんとこの部屋に呼び出してくださいね」
「はい! 勿論です!」
プリムラが頷くと同時に、体が違和感に包まれた。この感覚は、エレベーターが動き出した時の浮遊感に近い。体が別の場所に転送されようとしているのだろうか?
「最後にアドバイスというか、何か注意点はありますか?」
「注意点ですか?」
そうですねぇ、と。
プリムラは思案したものの、すぐに何かを思い出したようだ。
「あ、向こうの世界では人類と魔王軍が全面戦争していますから、死なないように気をつけてくださいね」
「は!?」
正に青天の霹靂。
この女、ジェットコースターが動きだした直後に、しれっととんでもない爆弾をぶっ込んできやがった。
「ジュンさん、三回とも途中で死んじゃってますから」
「おい!」
お前ふざけんなよ、絶対にわざと黙っていただろ、と。
口汚い言葉で罵倒する前に、俺の視界は暗転した。
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